モバイルデバイス管理 MDMサービスが担う攻めと守り
第5回
コロナ禍で安全確保のためタブレット端末を緊急導入
「安全性」念頭に用途拡大を図る

学校法人聖路加国際大学聖路加国際病院(520床、石松伸一院長)は新型コロナウイルス感染症患者の治療のなかで、感染拡大防止の観点からiPad 40台を緊急導入した。すると、その使い勝手の良さから用途は拡大。結果的にモバイル端末の導入に拍車がかかっているが、一方で「セキュリティ」対策の強化も進めている。

コロナ患者対応でiPadを緊急導入

聖路加国際病院が新型コロナウイルス感染症患者受け入れ医療機関として役割を果たす際に課題となったのが、医療従事者の患者との接触時間だった。
原則的に1人の患者あたりの診察時間は15分以内。それ以上は感染リスクが高くなるとの理由からだ。患者から話を聞くだけでよい場合はベッドサイドに行かなくても会話ができる方法はないかという声があった。

そこでiPad40台を緊急導入。用途はビデオ通話アプリ「FaceTime(フェイスタイム)」のみとし、医師、看護師と患者のコミュニケーションに限定して利用を開始した。すると、その使い勝手が現場の好評を得て、用途が広がっていった。
なかには、患者を直接見舞うことのできない家族が画面を通じて様子を見たり、感染した母親が出産したわが子との対面が難しかったため、NICUにiPadを持ち込んで「親子対面」を果たしたりといったこともあった。

看護部では病棟や各部署に1台ずつ計47台のモバイル端末を導入することが決まった。主に患者に対する検査や手術の説明に用いる予定である。
2022年度はスマートフォンの導入も予定しており、今後モバイル端末のさらなる用途拡大が見込まれている。

「紛失リスク」と情報漏洩にも配慮

課題もある。1つは多様な機能を導入しても看護師が「十分に使いこなせるか」だ。
包國幸代副看護部長は次のように指摘する。

「現場ニーズは挙げたらきりがありません。心電図データをはじめ患者さんの状態を示すデータが看護師の手元のスマートフォンやタブレットで確認できれば、もちろん便利です。しかし現場の看護師はケアも並行して行っています。情報を端末に集約させたとしても、それに気づけるか。モニターを確認するゆとりがどこまであるのか。拙速に導入してもかえって現場が混乱する可能性があります」


包國幸代副看護部長

もう1つの課題が「紛失リスク」だ。
同院の病棟ではノートパソコンを使用しており、ベッドサイドにもナースカートに乗せて持ち運んでいるが、そうした便利さから、しばしば端末が「あるべきところにない」という状況が起きることがあった。新たに導入するiPadは原則各部署の鍵付き保管庫に収納することになっている。

それでも包國副部長は「実際に運用し始めたら、いろいろ想定外の事態が起きると考えるべきです」と注意を怠らない。

ここまで紛失リスクに注意を向けるのは、それが患者情報の漏洩につながりかねないからだ。スタッフの入れ替わりがあり、若い年代の看護師も多いだけに、こうした点へ配慮するよう、研修機会も設けている。
同院では個人情報保護対策委員会を設け、情報漏洩の危険性や防止策について、毎年Eラーニングで院内の全スタッフが受講することを義務づけている。
また新たなデバイスを導入した際には、使用にあたってのルールを設け、個人情報保護対策委員会やシステム管理委員会の確認を経てから実用化している。

端末の安全管理のため「CLOMO MDM」を導入

これらの課題を受け、同院では安全管理に向けてさらに万全を期すために、端末の一元管理が可能であるMDMサービスを取り入れた。選んだサービスはアイキューブドシステムズの「CLOMO MDM」である。

「使い勝手に加えて、システムセンタースタッフに対する研修実施など、アイキューブドシステムズさんのフォローが導入の決め手となりました」。
そう語るのは、病院だけでなく大学・大学院を含めた法人全体のITシステム全般の運営・管理を担う、情報システムセンターシステム課の平川淳一氏だ。


情報システムセンターシステム課 平川淳一氏

さらに「システム上の課題」も大きい。平川氏は、「タブレット端末はパソコン以上に管理が難しいと思っています」と語る。
法人内のパソコンは基本ソフトがWindowsのものを用いているため、これをもとに管理システムを構築してきた。訪問看護ステーションで使用するノートパソコンについても遠隔管理が可能な「CLOMO MDM」を導入した。

今後、基本ソフトがiOSであるiPadやiPhoneの導入が進むようであれば、新たに管理体制を構築する必要が生じる。コロナ禍でのiPad緊急導入では「CLOMO MDM」を取り入れたが、既存システムとの併用は簡単ではないという。

「今後はセキュリティ面からもさらに効果的な体制をつくる必要があります。リモートでの管理・運用の必要性は無論です」と語る平川氏。現場・システム担当の両輪で安全性を高めていく方針だ。
(『最新医療経営PHASE3』2022年1月号)

※MDMサービスとは、スマホ・タブレット・PCを遠隔で一元管理することができ、盗難紛失対策として端末のロック・データ消去、業務効率化としてアプリの配布・管理、機能制限などを簡単に行うことができるサービスのこと。

学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院

学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院

1901年、宣教医師ルドルフ・B・トイスラーによって設立される。現在、聖路加国際大学の附属施設として運営され、三次救命救急センターで年間救急車受入台数は1万台超、特定機能病院、災害拠点病院、地域がん診療拠点病院等の機能も有する。Newsweekの世界病院ランキング2020では国内第1位(世界第16位)にランクされている。

所在地:東京都中央区明石町9-1
病床数:520床(急性期一般入院料算定病床520床)

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