モバイルデバイス管理 MDMサービスが担う攻めと守り
第4回
最先端を行く、日本最古参の挑戦
病院のデジタル改革をつき進む

地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館(450床、佐藤清治館長)は、佐賀藩主鍋島直正により1834(天保 5)年に創設された。国内最古参の病院として知られる一方で実はDX(デジタル改革)の最先端を走っている。歴 史的であり先進的である背景には、幕末の頃から海外の学びを積極的に取り入れるなど、常に「時代の最先端」を 追求してきた文化があった。その姿勢は今なお脈々と受け継がれており、患者・家族に寄り添いながら最良を模索 し続けるなかで、デジタル化は必然であったようだ。病院のDXはどうあるべきか、そのキーファクターに迫る。

ITは病院の要
システムを大々的に刷新

佐賀県医療センター好生館のIT運営を司る医療情報部は消化器外科の医師が部長を務め、事務スタッフ2人、外部委託業者の常駐スタッフ6人という陣容だが、その守備範囲は広い。現場のニーズに応じたシステムの整備、運用支援を担うだけでなく、経営部門の企画経営課が経営戦略を立案するうえで必要なデータを随時提供する役目も負う。
同部の長友篤志課長補佐は「地域連携や手術実績、加算算定状況など、企画経営課からのリクエストにはほぼ応じられていると思います」と強調する。佐藤清治副理事長・館長も「今や病院では何をするにもITの力が不可欠です。最も重要な部門の一つです」と、全幅の信頼を寄せる。

同館では2020年7月、佐藤館長が委員長を務め、各診療科、各部門の代表者が参加した情報管理委員会での議論を経て、ITシステムを大々的に刷新。モバイル端末も一新された。

佐藤清治副理事長・館長

佐藤清治副理事長・館長

さらなる効率化とサービス向上
PDAから「iPod touch」へ

同館のモバイル端末活用の歴史は長く、07年に電子カルテを含む病院情報システムを導入、それに合わせてPDA端末の活用を開始し、病棟業務の効率化に努めてきた。システム刷新にあたって、その後継機として、スマートフォンと見た目はほぼ同じのモバイル端末「iPod touch」を導入した。病棟における日勤帯の看護師の人数分を目安に配置している。
「三点認証」などPDAの機能を踏襲することはもちろん、患者の異変などに気づけば、患部を撮影して記録と合わせて送信し、電子カルテに反映させることもできる。更に、市販のiOSアプリを取り込めば機能拡張は無限に可能だ。実際に様々なシーンでサービスの向上に寄与している。

例えば、外国籍の方とのコミュニケーションには翻訳アプリを活用。コロナ禍によって難しくなった面会にはオンライン面会アプリを導入した。状況に合わせた対応が患者サービスの向上や満足度を高める。操作性面では職員にとってなじみ深い「iPhone」と変わらないため、操作説明の院内研修もほとんど不要だったほど。

通話端末は、これまで使用していたPHSをそのまま使い続けることにした。通話はPHS、患者情報の参照や実施情報・記録の入力などは「iPod touch」と使い分けている。長友課長補佐は「これまでもPHSとPDAの『2台持ち』でしたから、現場からも違和感は聞かれませんでした。むしろモバイル端末の操作性が向上しましたから、好評だと認識しています」と語る。

長友篤志課長補佐

長友篤志医療情報部課長補佐

費用面でも「iPod touch」は通話機能が付いた「iPhone」よりも「かなり割安」(長友課長補佐)。現場にも、経営にも優しいIT体制を敷いたわけだ。

さらに今回、新たに「iPad」も用意した。病棟業務の効率化を念頭に薬剤師や管理栄養士が使えるよう80台を院内用としたほか、医療者の負担軽減も見据えてリモートアクセス用に50台を準備した。
時間外に専門医の所見を仰ぎたい場合、自宅等からiPadで電子カルテの画像情報などを見てもらい、助言をもらうといったこともでき、「コロナ患者の診療でも役に立ちました」(佐藤館長)。
電子カルテはVDIで実装されており、アクセスには二要素認証が求められる。さらにネットワークにはSSL-VPNを採用しているため、万が一、紛失してもデータが盗み取られる心配はない。

端末管理は「CLOMO」で効率的にDXを推進

それでも安全管理に向けて更に万全を期す。一元管理という面からもMDM サービスを取り入れた。選んだサービスはアイキューブドシステムズの「CLOMO MDM」。費用と操作性、サポート力が決め手となった。
実際、300台近くのモバイル端末を管理することは容易ではない。デバイス状態の把握、アップデートの管理、現場のニーズに合わせたアプリの配信などが求められるが、その際に操作性が低いとコマンド1つを探し出すだけでも業務効率の低下を招くことになる。

「他のMDMサービスとの比較もしましたが、やはり『CLOMO MDM』が最も使い勝手が良かったです。レスポンスの速いサポート力にも安心できました」(長友課長補佐)

現場負担が軽減すれば、貴重なITスタッフのリソースをより重要なDX課題に充てることができる。「常に最先端」を目指す同館の戦いはつづく。全国の病院にとって示唆するものは多そうだ。
(『最新医療経営PHASE3』2021年5月号)

※MDMサービスとは、スマホ・タブレット・PCを遠隔で一元管理することができ、盗難紛失対策として端末のロック・データ消去、業務効率化としてアプリの配布・管理、機能制限などを簡単に行うことができるサービスのこと。

地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館院

地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館

1834(天保5)年、第10代佐賀藩主の鍋島直正が創設した「佐賀藩医学館・医学寮」が前身。地域医療支援病院、救命救急センター、地域がん診療連携拠点病院(高度型)、基幹災害拠点病院、第一種感染症指定医療機関、原子力災害拠点病院、臨床研修指定病院などの顔を持つ地域の中核病院として機能している。
所在地:佐賀県佐賀市嘉瀬町大字中原400番地
電話:0952-24-2171
病床数:450床(一般病床442床、感染症病床8床)
職員数:1208人(医師187人、看護師575人)

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