モバイルデバイス管理 MDMサービスが担う攻めと守り
第3回
医療機関専用スマホ第1号病院で
注目される「セキュリティ」機能

医療法人弘仁会板倉病院(91床、梶原崇弘理事長)が国内で初めて導入した医療機関向け専用スマートフォン 「日病モバイル」は、現場の業務支援から勤怠管理まで多様な機能を備えるが、「銀行並み」のセキュリティ機能も 特徴の一つだ。MDMサービス※は国内屈指の専門事業者を採用するなどその徹底ぶりが注目されている。

PHSの代替として「日病モバイル」を導入

板倉病院は2020年6月、医療機関向け専用スマートフォン「日病モバイル」を、国内で初めて導入した。
21年1月のPHS公衆網停波を受けて、一般社団法人日本病院会、株式会社日本病院共済会、株式会社フロンティア・フィールドが協働で開発したもので、PHSの代替として携帯電話回線を活用した通話機能のほか、ログイン管理、チャット、ナースコール連携、エマージェンシーコール、MDM機能などを標準搭載している。

導入のいきさつについて、同院の梶原崇弘理事長はPHSの代替機器を必要としていたことに加え、「病院の姿勢を院内外に示すねらいもありました」と説明する。
その効果は「人材の定着」で目立って表れるという。

「当院はスマートフォン導入だけでなく院内で子ども食堂を運営するなどさまざまな取り組みを進めていますが、こうした姿勢は地域の看護師さんのあいだで口コミで広がるのです。『板倉病院は看護師にスマートフォンを支給して現場の業務効率化や負担軽減に努めているらしい』――。このアナウンス効果は見逃せません」

梶原崇弘理事長
梶原崇弘理事長

翻訳や緊急時対応などで現場の業務をサポート

「日病モバイル」は院内外の通話機能から勤怠管理システムまで多彩な機能を持つが、梶原理事長は「業務支援」「病棟看護師のエマージェンシーコール」の2つの機能をとりわけ重視した。勤怠管理システムのように既に稼働している機能は無理に移行せず、新たに加わる機能に用途を絞ったのだ。

新たな機能の一例として「翻訳アプリケーション」が挙げられる。総務省のもとで開発されたもので、20カ国以上の言葉に変換が可能だ。
同院の所在する千葉県船橋市は中国、韓国以外にもベトナムやネパールからの在留者が多く、英語が通じないことも多く、翻訳アプリが役立つのだという。同院で受診する外国人患者の大抵の言語には対応できるので、コミュニケーションの際のストレスは大幅に軽減され、かつ患者に安心感をもってもらえる。

エマージェンシーコールは、病室で患者が暴れたりした際に、応援を求める機能だ。
「人手が必要と判断した際にはタッチひとつで応援を求めることができます」と梶原理事長。実際にこの機能を活用したケースは今のところないが、現場の看護師からは「安心できる」と好評だという。

三重のセキュリティで患者データを守る

梶原理事長が機能と同様に重視したのが「セキュリティ機能」だ。
日病モバイルでのデータのやりとりは、電話会社の交換機から直接、病院に備え付けたVPN専用線へつなげるため、インターネットは介さない。銀行などでは一般的に用いられているが、医療現場で導入されるのは日病モバイルが初めてだ。
データが第三者に盗み見される可能性を大きく軽減するために、運用基盤となるシステム自体で安全性を確保したわけだ。端末も比較的安価なAndroid端末を採用できた。
そのうえ、MDM機能も、国内最大手のアイキューブドシステムズが提供する「CLOMO MDM」を標準装備している。

日病モバイルの開発を手掛けた、フロンティア・フィールドの佐藤康行代表取締役社長は
「MDMの実績は国内随一、ノウハウも豊富なアイキューブドシステムズ様と連携するほうが、独自開発するより安価で、かつ質の高いMDM機能をご提供できます」
と語る。

スマートフォンをスタッフに支給する際にはどうしても「紛失」というリスクが発生してしまうが、「CLOMO MDM」では遠隔操作が可能なので、紛失がわかった時点ですぐに端末を初期化し、データの流出を防ぐ。
さらに、端末自体も24時間ログイン状態が続くと自動的に初期化されるようになっており、システム、MDM、端末と、三重のセキュリティ機能が施されていることになるわけだ。

こうした万全の安全対策をもとに、梶原理事長は「地域連携の充実」に目を向ける。「当院は強化型在宅支援病院として訪問診療に力を入れており、今後、さらに拡充する予定ですが、その際、連携する診療所の先生方に端末をお配りすれば、訪問先で患者さんの様子を撮影し、端末で確認、相談に乗っていただくこともできます」

三重のセキュリティシステムを背景に安心・安全、かつ質の高い「地域医療連携」がもうすぐ実現しそうだ。
(『最新医療経営PHASE3』2021年3月号)

※MDMサービスとは、スマホ・タブレット・PCを遠隔で一元管理することができ、盗難紛失対策として端末のロック・データ消去、業務効率化としてアプリの配布・管理、機能制限などを簡単に行うことができるサービスのこと。

医療法人弘仁会 板倉病院

医療法人弘仁会板倉病院

1940(昭和15)年8月、船橋外科病院として開設。「地域のセーフティーネットを作る」を目標に、病院、診療所、訪問診療、訪問看護、老健施設、居宅支援事業所、保育園などを展開してきた。2019年4月からは塚田地域包括支援センターを受託するなど、自法人だけにとどまらず開かれたネットワークの創造をめざしている。
所在地:千葉県船橋市本町2-10-1
病床数:一般 91床(急性期一般入院料1)
職員数:219人(常勤医18人、常勤看護師79人)

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