モバイルデバイス管理 MDMサービスが担う攻めと守り
第2回
訪問看護でスマホ活用を開始
安全対策も万全を期す

医療法人社団東山会調布東山病院(83床、小川聡子理事長)は内科系急性期病院として救急搬送患者を受け入れ、地域における高齢者医療の砦として存在感を放つ。一方で在宅療養患者の支援にも力を入れており、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーションなどを展開している。訪問看護は30年以上の歴史を有するが、2019年、スマートフォン(スマホ)を導入して新たな医療・介護連携に踏み出した。同時にMDMサービス※も取り入れ、安全管理に万全を期している。

PHSからiPhoneへ 現場の迅速な情報共有に寄与

調布東山病院の訪問看護は30年以上にわたって展開する「老舗」だ。年々高まる在宅医療ニーズを背景に、2016年には訪問看護ステーションとして組織を強化、さらに情報共有にも力を入れ、PHSやパソコンなどのほか、多職種連携用ソフト「メディカルケアステーション」等も積極的に活用してきた。

そうしたなかで19 年、PHSが21年1月で基地局が廃止されることを受けて、看護師と事務12人分をすべてスマートフォンに切り替えた。事業支援部情報システム課の安倍慎輔課長はこう語る。

「スマホの導入でスタッフ同士はもちろん、ご利用者様、他の介護事業者、医療機関との連携を強化する狙いがありました。電話だけでは伝わらないことは写真を活用することで効率も上がり、現場の負担も減らせるとのではないかと考えました」

スマホの機種はiPhoneを採用した。セキュリティ面を重視しての判断だ。
費用面については「病院全体にiPhoneを導入するならかなり慎重になりますが、訪問看護ステーションに限定しての導入でしたので、ある程度は理解を得られました」(安倍課長)。


事業支援部情報システム課の安倍慎輔課長(左)と安藤茉梨絵さん


スマホの活用で遠隔地でもデータの共有が容易に

情報漏洩リスクにMDMで向き合う

セキュリティ対策も課題として浮上したが、安倍課長がとりわけ重視したのが患者の個人情報漏洩だった。
「ハッキングももちろん懸念材料ですが、それ以上に看護師が持ち歩く以上、どこかでなくしてしまう事態が考えられ、そちらの不安のほうが大きかったです」と安倍課長。

導入当初から患者の状態を共有するためiPhoneに搭載されたカメラで撮影、ネットワーク上にアップロード等し、医療者間の迅速な情報共有に活用していた。
ネットワークはパスワードがなければ入れないため部外者に見られる心配はなかったが、スマホに残した写真データは覗かれる可能性があった。

「何か起きてからでは遅すぎる」。

MDMサービスの導入は、必然的な結論だった。万一紛失や盗難が発生しても、遠隔でデバイスをロックすることができ、情報流出を未然に防げる。

それ以外にも、病院側のデバイス管理が必要な場面は想定された。
たとえば電話帳。それぞれのスマホには利用者宅の連絡先を登録する必要があるし、利用が終われば消去しなければならないが、現場の看護師に逐一この作業を求めては煩雑になり、入力間違いも起きかねない。
そうかといって情報システム室がいちいち回収して入力するのも現実的ではない。MDMを用いて一元管理するのが最も効率的なわけだ。

スマホに業務以外の用途のアプリケーションを導入させないよう、設定する必要もあった。「実際には多忙でゲームで遊ぶゆとりはないようですが、ある程度、制限をかける機能は必要だろうという判断でした」(安倍課長)。

「CLOMO MDM」操作性と安心のサポートが決め手

当初は電話会社のMDMサービスを検討したが、万全を期して専門業者のサービスを導入することにした。そこで採用したのが、アイキューブドシステムズのCLOMO MDMだった。

まず惹かれたのが、「操作性」だった。もともと「CLOMO MDM」は教育機関など、「ITに馴染みがなくても使いこなせる」を念頭に開発したことから、操作性の高い管理画面を実現しており、容易にたいていの操作を済ませることができる仕組みになっている。
情報システム課の安藤茉梨絵さんは「1画面で完結できるので、とにかく簡単。他社にはない特徴でした」と語る。

サポート体制も大きなポイントだった。
20年は新型コロナウイルス感染症の蔓延でWeb面談が定着したが、その前から、アイキューブドシステムズの担当者と頻繁にWebでのコミュニケーションをっていた。「マニュアルもありましたが、担当者から教えてもらうほうが多く、丁寧にサポートいただいているので安心です」(安倍課長)

今回のスマホ導入を担当したのは安倍課長と安藤さんの2人だが、「この事業規模だからこそ、MDMが必要です」と安藤さんは強調する。
2人がいつも病院にいるとは限らない。システムをうまく活用してセキュリティ対策に万全を期す。今後、地域への関わりが期待される中小病院。そのITの安全管理を考えるうえで、示唆に富むモデルケースと言えそうだ。
(『最新医療経営PHASE3』2021年2月号)

※MDMサービスとは、スマホ・タブレット・PCを遠隔で一元管理することができ、盗難紛失対策として端末のロック・データ消去、業務効率化としてアプリの配布・管理、機能制限などを簡単に行うことができるサービスのこと。

医療法人社団東山会
調布東山病院

調布東山病院

1982年に開設。人工透析専門クリニック2施設のほか、人間ドック・健診センターも有する。治療に加え退院後の生活支援にも力を入れており、東山訪問看護ステーション、とうざん居宅介護支援事業所も運営している。
所在地:東京都調布市小島町2-32-17
病床数:一般83床(急性期一般入院料1)、透析66床
職員数:334人(常勤医25人、常勤看護師129人)

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