PwC財団がインパクトレポートを発刊、春期の助成事業も発表
2024/03/14更新
テクノロジーで未来を創るPwC財団
テクノロジーで社会課題の解決を目指す団体・企業を対象とした助成事業などを行っている公益財団法人PwC財団(東京都千代田区)は、これまでの活動内容や実績、インパクト創出への想いなどをまとめたインパクトレポートを発刊しました。
PwC財団として初の発刊で、全ページ(14ページ)をPwC財団ホームページに掲載しています。
https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/pwc-foundation/impact-report.html
PwC財団が14日に都内で開催した「インパクトレポート -PwC財団の目指す世界-」発表会の説明によりますと、PwC財団では「全ての人が活躍できる社会を目指し、テクノロジーで未来を創る専門財団として社会課題に取り組み」というミッションを掲げ、「人間拡張」「地方医療」「地球環境」「食料システム」の領域においてインパクトの創出をめざす団体などに対し助成を行っています。
ベンチャーキャピタルがカバーしきれていない早いフェーズの団体・企業にも助成するほか、1案件につき最大1,000万円を(補助金のように事業終了後ではなく)助成決定後の早い段階で助成します。
また、プロフェッショナルであるプログラムオフィサーが伴走支援を一貫して行ない、テクノロジーによる社会課題の解決の実現を目指しているとのことです。
これまでに16団体に助成してきたといいます。
https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/pwc-foundation/grant.html
こうした中、インパクトレポートは、2020 年の財団設立から現在までの約 3 年半の活動や実績を振り返りながら、PwC財団の目指す世界やその実現までの道筋を可視化することで、より多くの人に PwC財団が目指すインパクト創出について理解してもらい伝えていきたい、と発刊しました。
主な掲載コンテンツは、PwC 財団が目指す世界とその達成までの道程を描いた「Theory of Change(ToC):変化の理論)」のほか、PwC財団の特長、関係者の想い(座談会)などとなっています。
「助成事業に伴走するプログラムオフィサーや事務局が持つノウハウ、PwC財団が培ってきたスキームを導入して社会課題に取り組む団体や、課題テーマの原石の提供者を増やしていきたい」と説明会の中で担当者は語っていました。
この目的どおりに同じ志を持つ団体が増えていけば、PwC財団と助成先だけで社会の課題解決に取り組んでいくよりも、より大きなインパクトを社会にもたらす取り組みになっていくといえそうです。
2024年度春期の助成事業も発表
14日の説明会では、「助成事業2024年度春期公募テーマ」についての発表もありました。
3テーマあります。11日に公募開始となっていて、4月30日まで公募を受け付け、6月下旬には採択先を発表する予定です。
ウェルビーイング(孤独・孤立の予知・予防)
データ収集・モニタリング・解析などの技術を活用して、喫緊の社会課題である「孤独・孤立」の予知・予防を通じて、過疎地、都市圏など生きる場所を問わず、安心とともに生活できる社会の実現を目指す団体を募集します。
(目的)
増え続ける単身世帯、育児・介護のダブルケアを担う就労世代など、孤独・孤立に伴う心身の健康リスク潜在層に対して、データモニタリング、データ解析などのテクノロジーを通じて働きかけ、不安や不調の予知・予防と適時の共助、公的サービス介入の支援を実現して安心して生活できる社会を実現すること。
(活動対象)
先進的ウェアラブルデバイスなどを用いたデータ収集・モニタリング技術、AIによるデータ解析技術などを活用することで、「孤独・孤立」状態と相関性の高い予兆を把握し、 「医療・福祉サービス」や「社会的処方※」につなげる活動。そしてその活動の結果、問題が顕在化、または重篤化する前に当事者や家族が安心して暮らし、地域社会のソーシャルキャ
ピタルをより豊かにすることを目指す。想定している技術や取り組みは以下のとおり。なお技術は実証済みである必要がある。
※社会的処方:薬の処方など医師の医学的処方に加えて、患者等の健康やウェルビーイングの向上などを目的に、地域の活動やサービス等につなげること。
1. 医療にアクセス困難な高齢者を対象とした取り組み:医療空白地域における高齢者のバイタルデータをモニタリングすることで、孤独・孤立と相関性の高い健康リスクを予兆段階で把握し、適切な働きかけに備える取り組み
2. 都市圏に暮らす就労世代を対象とした取り組み:育児・介護が重なるダブルケアワーカーやビジネスケアラーの疲労、単身者の将来への不安など、バイタルデータとして当事者が掌握し、当事者や家族を地域もしくはコミュニティとつなげる取り組み
3. 被災者もしくは被災地域を対象とした取り組み:地震や洪水などの自然災害による避難生活により、コミュニティから離れざるを得なかった被災者や、人間関係が希薄化した被災地域の住民に対して、バイタルデータの取得・モニタリング
人間拡張(介護支援)
BMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)を活用し、 介護が必要な方や身体に障がいのある方の活動範囲を拡張し、介護が必要な方・身体障がいのある方が引き続き活躍できる社会の実現を目指す団体への助成を募集します。
(目的)
日本の人口減少、少子高齢化に伴う労働力人口の減少は喫緊の社会課題であり、この課題の解決策の1つとして、介護が必要な方や身体に障がいのある方に対して、BMIを活用した身体機能の拡張やリハビリを行ない、これらの方の社会での活躍を支援すること、また、これにより介護支援者の負担軽減を図ること。
(活動対象)
BMIの活用により、リハビリによる身体機能の回復や身体障がいや高齢者など身体機能が制限された方の身体機能の拡張、および介護者負担の軽減を実現することを目指す活動。想定している技術や取り組みは以下のとおり。
1. 身体機能回復※1:介護が必要な方や身体障がいのある方に対してリハビリを実施し、どれだけ機能回復が図れるかを実証する取り組み
2. 身体機能拡張※2:身体機能が制限された方に対して、身体機能拡張デバイスなどを装着することで、できることがどれだけ増えているかを実証する取り組み
3. 介護者の負担を軽減させる取り組み
※1身体機能回復:BMIを活用してリハビリを実践するもの
※2身体機能拡張:リハビリでは回復できない病気の方がどれだけ機能を拡張できるかを実践するもの
地方医療(がん発生予測モデル構築)
予防医学が発展しがん患者のQOLが向上する社会の実現を目指し、テクノロジーを活用した遺伝性腫瘍患者のデータ解析とそれに基づくがん発生予測モデルの構築を目指す団体への助成を募集します。
(目的)
遺伝性腫瘍に関連するビッグデータ(遺伝学的検査結果や血液検査結果など)を解析し、遺伝子変異の種類によるがんの発生予測モデルを構築することで、がんの早期診断・早期治療の実現を目指すこと。
(活動対象)
遺伝性腫瘍症候群の患者とその家系の遺伝学的検査や血液検査の結果などのビッグデータを解析し、がん発生の予測モデルを構築することで、がんの早期診断および早期治療の実現を目指す活動。想定している技術や取り組みは以下のとおり。少なくとも1つのテクノロジーは実証済みである必要がある(一部、今後実証を目指すものも含めることができる)。
1. データ解析:遺伝性腫瘍症候群患者の遺伝学的検査などのデータをAIや量子コンピューティングなどを用いて解析する活動
2. 予測モデル構築:1の解析結果に基づいて、がん抑制遺伝子の変異の種類によるがんの発生予測モデルを構築する活動
※助成事業2024年度秋期については、8月中に公募テーマを発表し、11月初旬に採択先を発表する予定です。
2022年助成事業と現在進行中の助成事業テーマ
2022年度の助成事業については、以下の通り、PwC財団ホームページにて最終報告動画を配信する予定です。配信期間は1年間。
人間拡張(就業環境整備):3月13日に公開開始
人間拡張(農福連携):4月上旬
地方医療(がん検出支援):4月上旬
地方医療(手術設計支援):4月上旬
一方、PwC 財団が現在取り組んでいる助成事業のテーマは以下の通りです。
【地球環境①】センシングや AI 技術などを活用し、地域特有の災害発生モデルの構築により災害発生時の人的被害を軽減することで、より安全に安心して暮らせる社会※を目指すこと
※個人の命や財産が守られる、環境(水域・森林・衛生環境等)が守られる社会
【地球環境②】Climate Tech※の活用により、大気汚染や海洋汚染による生物多様性の損失を食い止め、地球環境や社会を健全化、持続化して未来の世代へ手渡すことを目指すこと
※Climate Tech:気候変動対策に焦点を当てた技術全般(例:CO2 排出量の削減、地球温暖化がもたらす影響への対応)
【食料システム①】AI、バイオテクノロジーを活用し、生産工程で消費、または利用されずに廃棄される農林水産資源の削減や、アップサイクルによる有効利用によって持続可能な“食料システム”の実現を目指すこと
【食料システム②】バイオテクノロジー等を活用し、地球環境・生態系に配慮した効率的かつ効果的なタンパク質源を供給することで、持続可能な“食料システム”の実現を目指すこと
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)