社会保障短信(1月27日号)

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トピックス…電子カルテ浸透策を提示
ひとこと…医師偏在対策について
今週の数字…172件

トピックス:電子カルテ浸透策を提示

▼費用負担軽減と医療の質向上を目指す議
1月22日、「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームの第6回会合が開かれ、「病院の情報システムの刷新に係る方向性」が示された。

目指す姿として大きく、
▽情報セキュリティ対策を向上させながら、病院の情報システム費用の低減・上昇抑制を図り、経営資源を医療提供に振り向けられる体制を整備する
▽情報通信技術の進歩を踏まえ、将来的に、各病院が生成AI等の最新技術やサービスを活用しやすくすることで、医療従事者の負担を軽減しながら、より安全で質の高い医療を実現できるようにする
の2つを挙げている。

▼クラウド型への移行を推進
情報システムの刷新に関する方針も示した。

まず、「現在のオンプレ型のシステムを刷新し、電子カルテ/レセコン/部門システムを一体的に、モダン技術を活用したクラウド型システムに移行する」を掲げ、時期についても「2030年までのできる限り早い時期に、希望する病院が導入できる環境を整備する」としている。

具体的には、複数病院で共同利用する方式や、クラウドのメリットを活かすためのマネージドサービスの活用を図るという。また医療従事者の負担軽減や、より安全で質の高い医療につなげるべく、最新技術やサービスを活用しやすくするためのAPIの組み込みなども行うことも記載した。

院内のみの閉域網から、他院との情報交換を前提としたクラウド型の活用を重視した内容となっている。

▼国の示す標準仕様に合わせ企業が開発
さらに「国がシステムの標準仕様を示し、その標準仕様に準拠した情報システムを民間事業者が開発し、小規模病院やグループ病院などから段階的な普及を図る。この標準仕様は2025年度を目途に作成する。さらに現在、小規模医療機関を中心に、共同利用型のクラウド型電子カルテが普及し始めているため、こうした製品の活用も図るという。

また「標準仕様に準拠した病院の情報システムは、インフラからアプリケーションまでを共同利用することとし、医療機関毎に生じていた個別のカスタマイズを極力抑制する」ことも目指す。これにより、病院情報システム費用の低減・上昇抑制や、病院ごとに生じていたシステム対応負担の軽減を図る。

あわせて複数病院で共同利用する際はサイバー攻撃やシステム障害などによる全面障害も想定し、システムの標準仕様を検討するという。

▼標準コード・マスタの浸透を徹底
こうした体制を整備しつつ、「標準仕様に準拠したシステムへの円滑な移行のため、データ引き継ぎの互換性の確保などを図る。また、医療DXサービス(電子カルテ情報共有サービス等)とのクラウド間連携を進める」「医薬品・検査等の標準コード・マスタ、並びにこれらの維持管理体制の整備を進めるとともに、現場における標準コード・マスタの利用の徹底を図る」など、異なる医療機関の間でのデータの共同利用の促進に向けた取り組みも示した。

▼クラウド型中心に小規模病院も導入進む
電子カルテシステムの普及状況は、2023年時点で、400床以上の病院で93.7%、200~399床で79.2%、200床未満で59.0%、一般診療所で55.0%となっている。

近年は中小規模病院や診療所を中心にクラウド型の利用が広まりつつあり、200床未満では2017年で37.0%だったものが20ポイント以上増えたことになる。

その背景にクラウドの導入費用が安価である点が挙げられる。またセキュリティ対策を進める上も、オンプレ型が必ずしも安全性が高いとは言えなくなっており、クラウド型を中心とした電子カルテシステムの浸透は加速しそうだ。

ひとこと:医師偏在対策について

「管理者要件とか、医師多数区域での開業の抑制のような形、特に管理者要件に関しましては、ほとんど効果が出てくると思われるのが20~30年先の話です。経済的インセンティブが一番即効性というか、効果が早めに出てくる可能性があると思います」
望月泉
全国自治体病院協議会会長
~第15回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年12月10日

今週の数字:172件

東京商工リサーチ調査による、2024年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数。過去最多で、前年比40.9%だった。訪問介護が過去最多の81件、デイサービスは過去2番目の56件、有料老人ホームが過去最多の18件。(出典:東京商工リサーチ「2024年の「老人福祉・介護事業」倒産状況 2024年1月9日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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