社会保障短信(11月8日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…新たな地域医療構想、外来医療の検討項目案を提示
◆ひとこと…介護情報基盤整備の目的について
◆今週の数字…65.9%
トピックス:新たな地域医療構想、外来医療の検討項目案を提示
▼医師の不足や偏在も含めて協議
10月17日に開催した「新たな地域医療構想等に関する検討会」の第10回会合では、外来医療についての検討項目案が示されている。
「地域ごとに現状や将来の医療需要推計、提供体制の将来見込み等を踏まえ、将来の医療提供体制のあるべき姿を議論することが重要」と指摘し
▽地域の外来医療の協議の場等で協議を進め、外来機能の明確化・連携や外来医療提供体制の確保等を進める
▽限られた医療資源を有効に活用する観点から、地域における外来医療機能の偏在・不足等への対応を行う
▽内科やその他の診療科について、遠隔医療の活用、医師派遣、巡回診療等を推進することや、診療所と中小病院等の連携、外科医療の医科・歯科連携、薬局・薬剤師、看護師等の役割、介護や福祉サービス等との連携を検討する
――などの論点を示した。
▼診療所医師の高齢化に着目
この日示された資料によると、外来需要は多くの二次医療圏ですでに減少している一方、都市部では増加、人口が少ない地域では減少の傾向が見られる。外来受診の多い疾患は高血圧などの内科疾患で、一般診療所ではない科を標榜する診療所が最も多く、ほぼすべての二次医療圏で半数以上の診療所が内科を標榜している状況も報告された。
また診療所医師の年齢についても触れており、過半数が60代以上で、人口20万人未満の二次医療圏では60代以上の医師が60%以上を占めていることも紹介された。
こうしたこともあり、診療所医師が80歳で引退し、承継がなく、当該市区町村に新規開業がないと仮定した場合、2040年においては診療所のない市区町村数は2022年の77カ所から170程度増加するとの見込みも示した。
▼救急や紹介受診重点医療機関との連携も視野
協議の場等での協議では、医師数や診療所医師の高齢化、標ぼう診療科の医療アクセスに関する情報なども踏まえることを求めている。
さらに医師のかかりつけ医機能報告や外来機能報告などのデータに基づいて、夜間・休日等の初期救急医療、在宅医療、公衆衛生に係る医療などの不足する地域医療や、かかりつけ医機能を担う医療機関と紹介患者への外来を基本とする医療機関(紹介受診重点医療機関)の連携も考慮することになりそうだ。
自由開業制をめぐる議論の一方で、医師の年齢にまで踏み込んだ医師数の議論も求めるあたりは、単なる数合わせでなく「地域医療の担い手」としてカウントできる医師の確保が念頭にあると考えるべきで、その意味でも「新たな地域医療構想」の実効性を注視する必要がありそうだ。
ひとこと:介護情報基盤整備の目的について
「1つ目には業務の効率化(職員の負担軽減、情報共有の迅速化)を実現と書いてありますけれども、現場職員の中には、IT化によって業務負担が増えると思っている、感じている職員もたくさんいらっしゃいます。本当に業務の効率化につながるのかどうか、しっかりと具体的なイメージで、業務の効率化が図れるのであれば示していく必要がありますし、それが介護サービスの質の向上にもどのようにつながっていくのか、具体的なイメージで示していく必要があるかと思います」
江澤和彦
日本医師会常任理事
~第114回 社会保障審議会介護保険部会 2024年⁹月19日
今週の数字:65.9%
2022年における死亡場所のうち、病院・診療所の割合。2005年の82.4%をピークに減少し、自宅や介護施設等の割合が増加している。介護施設での死亡の割合は2005年の2.8%から2022年には14.9%となっている。(出典:第9回新たな地域医療構想等に関する検討会資料2「新たな地域医療構想について(入院医療、在宅医療、構想区域等)」2024年9月30日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)