社会保障短信(10月11日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…開業規制の議論を開始
◆ひとこと…新たな地域医療構想について
◆今週の数字…23.2%
トピックス:開業規制の議論を開始
▼医師偏在対策の論点を提示
9月30日の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で、医師偏在対策の議論が始まった。
この検討会は検討事項として、
①新たな地域医療構想の策定および施策の実施に必要な事項
②医師偏在対策に関する事項(医師養成過程を通じた対策を除く)
③その他本検討会が必要と認めた事項
――の3つがある。議論では「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案」で示された論点に基づいて取り組みの方向性案などが示された。
▼診療報酬での対応も視野
まず、「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」が示された。
へき地では既にへき地保健医療対策の取り組みが始まっているが、それ以外にも人口規模、地理的条件、今後の人口動態などから、医療機関の維持が困難な地域もあるとして、優先的かつ重点的に対策を進める区域を設定するというもの。対象医療機関、必要医師数を具体的に示すという。また区域は国で選定する。
経済的インセンティブにも触れており、地域間・診療科間の医師偏在是正の観点から「診療報酬において、どのような対応が考えられるか」が論点として提示された。
▼管理者要件の拡大に言及
開業に関する規制的手法についても方向性が示された。
医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の拡大が案として示された。現在は地域医療支援病院のみを対象としているが、対象医療機関をさらに拡大するという。
また認定医師に求める医師少数区域等での勤務経験を、現行の6カ月以上から延長し、1年以上とする案を出している。
▼開業許可制案を提示
さらに、外来医師多数区域では都道府県知事の権限強化、保険医制度における取扱いについても踏み込んでいる。
具体的には、外来医師多数区域の新規開業希望者に対して、事前に診療所で提供する内容の医療機能を記載した届出を求め、都道府県でその届出内容を踏まえて不足している医療機能の提供を要請できるようにするという。
また、「正当な理由」なく要請した医療機能を提供しない場合は都道府県で報告・公表する。また資料では「併せて、実効性を確保するため、保険医療機関制度における取扱いについて、どのように考えるか」とし、認可取り消しをうかがわせる内容も盛り込んでいる。
また開業を許可制とし、開業の上限を定めることも論点として提示した。
開業規制は、医療費の効率的な運用をめざす財務省と自由開業制を守りたい日本医師会が双方、譲りそうにないテーマであるだけに、この検討会はもちろん、財務省が開催する議論の場での議論にも留意する必要がありそうだ。
ひとこと:新たな地域医療構想について
「土俵を広げすぎていて、医療提供体制にまつわるいろいろな問題を全て地域医療構想にぶちまけてしまっている感がありますが、果たして本当に現場で対応できるのか。そもそも、率直に申し上げれば、地域医療構想調整会議にしても必ずしも十分機能していない実態がある中で、土俵を広げてしまって大丈夫なのかという印象を持ちます」
島崎謙治
国際医療福祉大学大学院教授
~第110回社会保障審議会医療部会
2024年9月5日
今週の数字:23.2%
2024年度上半期(2024年4月~9月)の医業収益見込みで、前年度同期よりも「増加する」と答えた病院数。「減少する」は18.3%、「横ばい」は58.5%だった。(出典:福祉医療機構「病院経営動向調査(2024年9月調査)」2024年10月4日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)