社会保障短信(8月22日号)

医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。

トピックス…病院建築費、10年で1.5倍に
ひとこと…平時からの備えと資金について
今週の数字…257病院

トピックス:病院建築費、10年で1.5倍に

▼22年度以降は上昇幅が小ぶりに
病院の建築費がこの10年で1.5倍になっている傾向が明らかになった。福祉医療機構が6月28日に発表した「2023年度福祉・医療施設の建築費について」によると、病院の建築費は2023年度で平米単価41.1万円となっていた。2014年は23.9万円で、この10年で1.49倍、上昇したことになる。

ただ、上昇幅は小ぶりになってきている。2015年で30.1万円だったのに対して2016年は34.6万円、2018年で36.5万円だったのに対して2019年は39.2万円と、1年で2万円前後、跳ね上がることがあったのに対し、2021年42.3万円、2022年は40.9万円、2023年は41.1万円と、ほぼ横ばいで推移している。

▼「実態として上昇基調」く
同調査では建設工事費デフレーター(物価変動分の影響を除いて実質値の動きをみるために用いられる指標)の推移を示している。それによると、2012年度以降、年々上昇し、コロナ禍にあった2020年度から2022年度にかけて急激に上昇しているが、2022年度以降の上昇幅は大きくない。ただし、高止まりしている状況ではある。

平米単価で見ると、2023年度におけるサンプルの中央値は40.8万円と前年度から2.9万円上昇、また最小値は33.1万円と前年度から5.5万円、上昇しており、「実態として上昇基調にあると言えるだろう」との見方を示している。

病院の1人あたり建築費についても報告している。2023年度は2387.2万円と前年度から141.1万円上昇している。1人あたり面積は2023年度で58.1平米と前年度日0.5平米増となっているが、「一定の範囲内で推移している」と述べている。

▼2023年度サンプルは回復期が多め
2021年度の同調査では、一般病院、療養型病院、精神科病院という機能別の平米単価も示しており、それによると中央値は一般病院が最も高く、また最高値と最低値の間隔も最も広いという。背景として、一般病院のサンプルには小規模病院から大規模病院まで規模のばらつきがあるほか、高度急性期から回復期まで多機能の病院が含まれていることを挙げる。

一般病院の最大値から第3四分位の間に属する病院はほとんどが急性期病院で、ICUやHCUなどの高度急性期機能を有する病院もあるという。こうした病院は集中治療室大型検査機器を配置する検査室などを備えていることもあり、高くなる傾向があると分析する。

一方、第1四分位から最小値の病院は回復期リハビリテーション病棟中心の病院が多く、療養型とほぼ同じ状況だったと報告している。

2023年度のサンプルについては、「回復期機能を中心とする病院の割合が比較的高いことから、平米単価および1人あたり建築費の上昇が実態よりも抑えられたデータとなっている可能性も考えられる」と付け加えている。

1985年の第一次医療法改正時、いわゆる「駆け込み増床」が見られ、今日、建て替え需要が顕在化している。一方で、建築資材や人件費の高騰、さらに関西地区では「万博特需」などもあって「計画はあっても着工できない」事例も少なくない。病院経営者からは「どうしようもない」という声も出ている。

ひとこと:平時からの備えと資金について

「能登半島地震を経験して災害に関しても平時からいかに準備しておくかというのがその後の対応につながっていったのかなと思います。ただ、そのためにはやはりそれなりのサージキャパシティーを充実するための補助金ないしは資金というものが必要になります。同時に、新型インフルエンザの場合は災害と違って1地域だけではなくて、来るとしたら全国にきてしまうわけですけれども、そういった意味ではこのサージキャパシティー、いろいろな準備をするための補助金ないしは資金といったものの手当をぜひ御考慮いただきたいと思います」
神野正博
全日本病院協会副会長
~第109回社会保障審議会医療部会 2024年7月12日

今週の数字:257病院

電子カルテを導入している400床以上の病院(668施設)のうち、2028年から2030年の間に電子カルテシステムのリプレースを行うタイミングを迎える病院数。一般的なリプレースのタイミングとして7年を想定している。(出典:社会保障審議会医療部会資料「医療DXの更なる推進について」2024年7月12日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

TAGS

検索上位タグ

RANKING

人気記事ランキング