社会保障短信(8月13日号)

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トピックス…福祉医療機構の調査で「赤字病院」の割合が急増
ひとこと…医療DXのコストについて
今週の数字…42.8%

トピックス:福祉医療機構の調査で「赤字病院」の割合が急増

▼赤字病院割合が39.8%
福祉医療機構は7月9日、「病院経営動向調査の概要」を公表している。同機構に登録しているモニターの医療法人150法人が回答している。一般病院における経営状況の悪化が目立っており、今後、話題になりそうだ。

調査によると、2023年度の一般病院の経営状況は医業利益率が前年比1.2ポイント減のマイナス2.0%、経常利益率は4.2ポイント減のマイナス0.1%で、赤字病院の割合は15.3ポイント増の39.8%となっていた。

病床規模別に見ると、200床未満は医業利益率が1.6ポイント減のマイナス0.8%、経常利益率が2.8ポイント減のマイナス0.7%で、赤字病院の割合は8.5ポイント増の41.5%となっている。

200床以上は医業利益率が1.0ポイント減のマイナス2.8%、経常利益率が5.0ポイント減の0.3%で、赤字病院の割合は30.6ポイント増の30.6%だった。

4割近くの一般病院が赤字で、1年でその割合が急増している。かつ、200床以上の病院で悪化の速度がましている点も注視する必要がありそうだ。

▼コロナ補助金停止の影響、色濃く
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金をはじめ、国や自治体が支給した補助金(コロナ補助金)に関連した数値もまとめている。それによると、一般病院全体では1床当たりの補助金収益は前年比116万円減の48万円。補助金収益率はマイナス4.3ポイントの1.9%。補助金を除外した経常利益率は0.3ポイント増のマイナス2%、補助金収益を除外した赤字病院の割合は前年と変わらず54.2%となっている。

200床未満は1床当たりの補助金収益は前年比81万円減の36万円。補助金収益率はマイナス3.5ポイントの1.6%。補助金を除外した経常利益率は0.9ポイント増のマイナス2.3%、補助金収益を除外した赤字病院の割合は2.4ポイント減の53.7%だった。

200床以上では1床当たりの補助金収益は前年比144万円減の58万円。補助金収益率はマイナス4.9ポイントの2.1%。補助金を除外した経常利益率0.1ポイント減のマイナス1.8%、補助金収益を除外した赤字病院の割合は5.6ポイント増の55.6%だった。

赤字病院の割合はコロナ補助金込みで39.8%であるのに対し、除外すると55.6%に跳ね上がる。コロナ補助金は2023年10月から本格的に打ち切りが始まっており、その影響は今後、さらに大きく出ていることが予想される。福祉医療機構をはじめとする緊急融資の返済も2025年度以降は本格化することから、収支の悪化が加速することも懸念される。

▼人件費等の支出増が課題に
経営上の課題についても聞いており、2024年6月の調査では人件費の増加との回答が最も多く61.9%、人件費以外の増加(55.2%)、職員確保難(53.7%)が続いている。

患者単価の低下は20.9%。前年同月比で6.9ポイント増であることを踏まえると、経営課題としては支出増ほどではないものの、単価下落が深刻化している様子がうかがえる。コロナ感染症が一段落したことはもちろん、受療行動の変容も指摘されており、このあたりの影響もありそうだ。

ひとこと:医療DXのコストについて

「6年前と比べて今、電子カルテの値段は実は最低でも倍で、1ベッド当たりあの当時は100万くらいでしたが、今は200万が最低ラインで、高いところでいくとトップメーカーなどにお願いしますと300万、400万という金額です。それで、当時1ベッド100万円のときでさえ、我々の総収入の3%くらいを電子カルテのイニシャル費、ランニングコスト費等で取られております」
加納繁照
日本医療法人協会会長
~第109回社会保障審議会医療部会 2024年7月12日

今週の数字:42.8%

2022年度の訪問介護における赤字事業者の割合。2020年度は39.8%、2021年度は40.1%と、増加傾向にある。2024年度介護報酬改定では訪問介護は基本報酬が引き下げられており、さらなる悪化が懸念されている。(出典:福祉医療機構「2022年度 訪問介護の経営状況について」2024年8月9日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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