社会保障短信(7月25日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…電子カルテ情報標準化の工程案を提示
◆ひとこと…非稼働病床について
◆今週の数字…61.8%
トピックス:電子カルテ情報標準化の工程案を提示
▼電子カルテ情報標準化の進捗報告
7月12日の「社会保障審議会医療部会」では、「医療DXの更なる推進について」が議題に上がり、進捗状況などが報告された。
「医療DXの推進に関する工程表」では、
▽マイナンバーカードの健康保険証の一体化の加速等
▽全国医療情報プラットフォームの構築
▽電子カルテ情報の標準化等
▽診療報酬改定DX
――などを推進することが謳われている。
電子カルテ情報の標準化では、「遅くとも2030年には、おおむね全ての医療機関において、必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」ことも掲げられている。
この日は特に、「電子カルテ情報共有サービス」「電子カルテ情報の標準化等」「医療等情報の二次活用」「医療DXの実施主体」「PMH(Public Medical Hub)」の取り組み状況が取り上げられた。
▼デジタル庁にプロダクトチーム設置
このうち「電子カルテ情報の標準化等」では、標準型電子カルテをクラウド上に配置し、医療DX(全国医療情報プラットフォーム)のシステム群や、民間事業者が提供するシステム群(オプション機能)とのAPI連携機能(編集部注:異なるソフトウェアやアプリケーション、プログラムを連携させる機能)を実装すべく、検討を進めていることが紹介された。
事業者が提供するシステム群は数多く存在することから、API連携機能の実装では対象範囲や実装方法なども検討しているという。
開発では、デジタル庁をプロダクトオーナーとするプロダクトチームを編成している。
設計・開発支援にはマッキンゼー社があたり、プロダクトワーキンググループには「将来的に標準型電子カルテへの参入も含め、意欲的な複数の電子カルテベンダー(ベンチャー含む)をメンバー」とすること、開発されるシステム・モジュールが各ベンダーが利用していけるものにしていくことなどをポイントとしている。
電子カルテの設計・開発はFIXER社が担う。
7月よりα版モデル事業施設への導入支援調査・計画が検討されており、2025年3月よりα版モデル事業を開始し、同年8月までを目途としている。
▼更改のタイミングで標準規格対応
病院・診療所の電子カルテ情報野標準化スケジュールも示されている。
2024年度中に、ベンダーへの技術解説書や医療機関への医療情報化支援基金(150億円)の申し込みに関する情報を発信することを予定している。
導入済みの病院におけるシステム更改については、更改が5~7年周期で、1、5月の大型連休に集中するケースが多いことを踏まえ、これらのタイミングで標準規格化の対応を促す。具体的には2025年1月と5月、2026年1月と5月が示されており、2030年度までの継続も視野に入れている。
2025年1月頃の電子カルテ情報共有サービスのモデル事業に向けた対応を皮切りに、対応医療機関の増加を目指すことにしている。
中小病院に見られる未導入の病院については、2026年度以降の標準型電子カルテ本格版の導入を検討するよう促していく。
病院の情報システム運営における大きな課題の一つに「費用負担」がある。これについてのベンダーとの折り合いも推進のカギを握りそうだ。
ひとこと:非稼働病床について
「実際に私も地域医療構想調整会議に出ておりますけれども、非稼働病床に関してはほとんど触れないのです。お互いに病院同士でそこをどうするのだとも言えないので、これは人口減でこれからさらに増えていくのではないかと思うのです。いつまでも増えていくような状況で、返すという選択肢は病院としては踏ん切れないところもあると思うのですけれども、でも、実際問題としてこれだけ人口減も出てきておりますので、今後活用されるのは難しいのではないかと思うのです」
望月泉
全国自治体病院協議会会長
~第15回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ 2024年7月10日
今週の数字:61.8%
2024年3月31日時点での、医療法人における「持ち分あり法人」の割合。2014年時点では83.1%。「社会医療法人」「認定医療法人」など、持ち分放棄を後押しする政策が打ち出されていることなどが背景として考えられる。(出典:厚生労働省「種類別医療法人数の年次推移」2024年3月31日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)