社会保障短信(6月24日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…病院3団体が地域包括医療病棟への移行調査を実施
◆ひとこと…在宅医療の見直しについて
◆今週の数字…45.8%
トピックス:病院3団体が地域包括医療病棟への移行調査を実施
▼移行へのハードルを把握
日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体は6月10日、「地域包括医療病棟入院料への移行調査《集計速報値》報告書」を公表した。
2024年度診療報酬改定で「地域包括医療病棟入院料」が新設され、高齢者急性期医療を担う中心的な病棟として注目されている。急性期一般入院料や地域包括ケア病棟入院料などからの移行が想定されるが、「施設基準が厳しすぎて簡単には移行できない」といった見方もある。
この調査の目的として、3団体は「地域包括医療病棟への移行に関するハードル等を把握し、必要に応じて、厚生労働省に提言する際のデータとする」と説明している。
調査期間は5月15日から29日で、1002病院が回答した。
▼転換予定・検討中は17.9%
地域包括医療病棟入院料を届け出る予定についての質問について、転換予定は39病院(3.9%)、検討中が141病院(14.0%)、転換しないが822病院(82.0%)だった。
予定・検討中の病棟は「急性期病棟の一部」が91病院、「急性期病棟すべて」が57病院、「地域包括ケア病棟」が14病院。
病床規模では以下の通り。
▽「99床以下」病院:転換予定5病院、検討中20病院、転換しない194病院
▽「100~199床」病院:転換予定14病院、検討中66病院、転換しない281病院
▽「200~299床」病院:転換予定11病院、検討中35病院、転換しない114病院
▽「300~399床」病院:転換予定6病院、検討中15病院、転換しない99病院
▽「400~499床」病院:転換予定3病院、検討中3病院、転換しない57病院
▽「500床以上」病院:転換予定0病院、検討中2病院、転換しない77病院
病床規模としては100~199床の中小病院クラスが最も多く、急性期病棟を全て転換するという回答が多かった。「高齢者急性期を主に担うのは中小規模の急性期病院」という病院像を描けそうだ。
▼理由は「急性期1を維持できない」
転換を予定・検討している理由としては、「急性期一般入院料1を維持できない」が53病院、「同2を維持できない」が6病院、「増収・入院患者の確保が見込める」が27病院、「地域や患者のニーズに合わせる」が21病院、「DPCを維持できない」が9病院。
転換しない理由としては「現在の病棟機能を維持できる」が442病院、「示された施設基準を満たせない」が324病院などとなっている。
▼必要度「満たせない」が最多
地域包括医療病棟入院料のうち、「満たせない施設基準」として主に挙がった項目は
▽一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の該当割合がⅠで16%以上、Ⅱで15%以上、入院初日でB3点以上が50%以上:174病院
▽入院患者のうち救急搬送された患者、救急患者連携搬送料を算定した他院から搬送された患者の割合が15%以上:173病院
▽同病棟の入院患者の平均在院日数が21日以内:132病院
▽退院患者のうち在宅等への退院割合が8割以上:119病院
▽退院・転棟患者のうち、入院時と比較してADLが低下した患者の割合が5%未満:110病院
――などとなっている。
重症度、医療・看護必要度がⅠで15%以上という条件は急性期一般入院料4と同じ水準だが、それを「満たせない」となると、同入院料5以下の入院料を算定している病院と考えられる。2024年度改定以降、こうした病院の転換を促す見直しがあるかどうかは、注目すべきだろう。
ひとこと:在宅医療の見直しについて
「どうしても臨床実習の臓器別の研修というものに目が行きがちになるというのがまだまだ実態だと思っています。そういった中で、今日の御発表の皆さんに共通していたように、高齢者救急であったり、臓器別の専門家のみの医師というよりは、地域では、幅広く総合的に患者さんを診られる、あるいは介護とも連携しながら、そして、在宅医療の見直しが要るというのは、これは明白でございます」
江澤和彦
公益社団法人日本医師会常任理事
~第2回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年4月17日
今週の数字:45.8%
日本在宅療養支援病院連絡協議会が調査した、「地域包括医療病棟に関する会員向け緊急アンケート調査」において、地域包括医療病棟への移行予定についての質問に対し、「移行する」「検討中」と回答した病院の割合。「移行する」は4%だった。(出典:日本在宅療養支援病院連絡協議会「地域包括医療病棟に関する会員向け緊急アンケート調査」2024年3月15日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)