社会保障短信(6月4日号)

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トピックス…「新たな地域医療構想」検討会で「民と公」の議論
ひとこと…2060年の医療・介護資源について
今週の数字…50.5%

トピックス:「新たな地域医療構想」検討会で「民と公」の議論

▼5月31日までに23人からヒアリング
3月末から始まった「新たな地域医療構想に関する検討会」が、月2回のペースで開催されている。5月31日までに5回の会合を重ねてきた。この間は関係者に対するヒアリングを実施しているが、その件数は23に及ぶ。

医師会、病院団体、医療専門職の職能団体に加え、今回の地域医療構想が在宅医療や高齢者施設などでの医療提供や医療と介護の複合ニーズへの対応なども視野に入れていることもあり、介護職、高齢者住宅、自治体、有床診療所、地方自治体などからも意見を聞いているのだ。

▼医法協が「検討すべき事項」列挙
5月22日の検討会では、構成員でもある伊藤伸一・日本医療法人協会会長代行が同協会の大半を占める中小民間病院の地域医療構想に関する見解を代弁するかたちで意見を述べた。

伊藤会長代行は「検討すべき事項」として次の 点を挙げる。

▽民間病院と公立・公的病院の特徴を有効活用して地域医療構想を推進する
▽都市部と過疎地域の地域医療構想に関する受け止めの温度差
▽地域医療構想を推進する目的で実施した対策の実効性の検証と公表
▽人材不足にかかる解決策として医療DXの活用

▼巨大公的病院統合の経過報告を求める
特に公立・公的病院に関する議論については時間を割いて言及し、「一部の公立・公的医療機関等が、地域のその他の医療機関との連携のあり方を考慮することなく医療機関同士を統合することにより、その他の医療機関の提供のあり方に不適切な影響を与えることがないよう、将来の医療提供体制について、関係者を含めた十分な協議を行うことが重要」などと述べている。

さらに、「対策の実効性の検証と公表」については、「再編実行後波動鳴ったのか、当初目指した良質で効率的な体制が継続的に維持できているかどうかを確認することが更に重要。
この検証の仕組みを活用して巨大公的病院統合などの不適切な事例の経過報告を行い、再編統合の再考を求めることを可能にしなければならない」と語った。

▼運営補助のあり方再考に言及
こうした「巨大統合」の背景として、自治体の首長の意向が地域医療構想や調整会議の議論とは別に働くことがあるという。2019年1月の「第18回地域医療構想に関するワーキンググループ」での、次の議論を紹介した。
「ダウンサイジングに消極的であることや、以前、拡大路線と言うことは、交付金や補助金がある限りは続くのだろうと思う。そういう意味では、そこら辺は調整会議でも把握する必要があると思う。地域で公的病院しか担えない機能については集中的に交付金を出してもいいと思うが、根本的に見直さないと、結果的にいくらでも赤字がかわせるのであれば、改善されないのではないか」

伊藤会長代行は1971~1974年生まれのいわゆる「団塊ジュニア世代」が90歳前後となる2060年に向けた地域医療提供体制整備を提言しつつ、「地域医療の効率性と持続性を考えると、運営補助のあり方も含めて民と公の特徴を活かした再構築がポイント」と強調している。

ひとこと:2060年の医療・介護資源について

「地域医療構想を考える上では、こういったことを前提に、それぞれの地域ごとに2040年、ここでは2040年ですが、私は2060年まで考えないといけないのではないかと思っていますが、そこのまず絵姿を描いて、その時点でその地域がどうなっているか。そこからバックキャストで考えて、どれくらいの医療・介護資源がその時点で確保できていて、それで、どうやってニーズをカバーするか。要するに、切れ目のない医療を提供するかという視点で考えることが必要だと思います」
香取照幸
一般社団法人未来研究所臥龍代表理事

今週の数字:50.5%

群市区医師会(184医師会)に所属する医療機関における訪問診療・往診の取組状況に関する調査で、「会員の2割以下(が取り組んでいる)」と答えた医師会の割合。(出典:第5回新たな地域医療構想等に関する検討会「新田國夫・日本在宅ケアアライアンス理事長提供資料」5月31日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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