社会保障短信(5月9日号)

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トピックス…医師の偏在対策で地域枠と中堅以降の医師テーマに議論
ひとこと…訪問介護の基本報酬引下げについて
今週の数字…5.47%

トピックス:医師の偏在対策で地域枠と中堅以降の医師テーマに議論

▼若手だけでなく中堅以降の医師も対策
「医師養成課程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」は4月26日、第4回の会合を開いた。厚生労働省は「これまでの偏在対策を踏まえてなお残る課題への、更なる具体的対策についてどう考えるか」という観点から、「地域枠」「中堅以降の医師」のテーマについての議論を求めた。

▼地域枠医学生対象に「魅力」伝える
地域枠では、

▽恒久定員内地域枠の設置の更なる促進と、設置が促進される要因
▽診療科選定地域枠の設置の促進、また地域枠医師の3年目以降に一定機関、各地域で必要とされる幅広い診療に従事することについて

――が検討課題として掲げられた。

恒久的地域枠については、第8次医療計画の見直しにおいて「安定した医師確保を行うため、都道府県は、積極的に恒久定員内への地域枠や地元出身者枠の設置について大学と調整を行う」ことを求めている。

また地域枠の一部は、専門とする診療科を特定した要件が設定されており、各都道府県で必要と考える診療科の医師養成を進めている。26都道府県で、特定の診療科への従事を要件とする臨時定員地域枠を設置しているという。

大分大学医学部の取り組み例も紹介された。同大医学部附属地域医療額センターを中心に、3年次生を対象とした診療所実習、5年次生を対象とした滞在型地域医療実習を導入している。それに加えて地域枠で入学した医学生のうち、希望者に対して、「総合診療インテンシブ教育コース」に招き入れ、在学中に総合診療の魅力を伝え続けている。さらに、卒後3年目医師の総合診療研修を義務化し、地域病院で総合的な診療を行うようにしている。

これらの取り組みの結果、勤務開始時より実際に勤務を進めた後のほうが医師の満足度が上がっているという結果が出ているという。

▼中堅以降対策では開業への要件付与も
中堅以降の医師における地域偏在について厚労省の資料は、これまで「対策は限られていた」と述べている。
実際、研修の機会を通じた偏在是正に寄与する施策が乏しいという。また2014年前後で比べると、医師少数県での若手医師数は多数県に比べ伸びてきているものの、中堅以降の医師を含めると、少数県における伸びは小さくなることを指摘している。

一方でこの年代の医師については地方勤務への潜在的な意欲も見られるという。更に幅広い疾患について総合的に診療を行う医師へのニーズが見られ、中堅以降の医師にはこうした領域での活躍も期待されると指摘している。

厚労省が示した中堅以降の医師を対象とした偏在対策の例としては、

▽専門医更新時の地域従事の要件など、専門医制度への対応
▽地域従事の要件、地域での勤務の支援などの診療所開設への対応
▽学会を通じた取り組み
▽中堅以降に限らず、必要な診療科の医師に対する処遇の向上

――などを挙げている。

医師の偏在是正は財政制度等審議会でも話題になっており、診療報酬の地域別単価の設定や開業規制にまで踏み込んでいる。こうした動きも踏まえつつ、議論は進みそうだ。

ひとこと:訪問介護の基本報酬引下げについて

「訪問介護は、介護を必要とする人や介護する家族にとってとても大切なサービスです。基本報酬の引下げの提案では、事業所の経営が黒字だったからと説明され、本当に大丈夫なのだろうか、大変経営が苦しいという事業所の方々の声をそれまでにも聞いておりましたので不安を抱いていましたが、4割近い事業所が赤字の中で基本報酬の引下げが告示されてしまったことに無念の思いがいたします」
鎌田松代
公益社団法人認知症の人と家族の会代表理事
~2024年3月18日 第240回社会保障審議会介護給付費分科会

今週の数字:5.47%

2024年3月のオンライン資格確認の利用件数における、マイナ保険証の利用率。前者の件数は1億8485万4489件だった。
施設の内訳を見ると、病院12.59%、歯科診療所10.27%、医科診療所5.22%、薬局4.17%となっている。(出典:第177回社会保障審議会医療保険部会資料「マイナ保険証の利用促進等について」2024年年4月10日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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