社会保障短信(4月23日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…「新たな地域医療構想」検討会でヒアリング開始
◆ひとこと…地域医療構想について
◆今週の数字…58.3%
トピックス:「新たな地域医療構想」検討会でヒアリング開始
▼日医や病院団体からヒアリング
4月17日の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で、第1回関係団体・有識者ヒアリングが実施された。
この日説明したのは香取照幸・未来研究所臥龍代表理事(元厚生労働省年金局長)、江澤和彦・日本医師会常務理事、相澤孝夫・日本病院会会長、猪口雄二・全日本病院協会会長、松田晋哉・産業医科大学教授。
ヒアリング項目は
▽2040年頃を見据えた医療提供体制のイメージ
▽現行の地域医療構想移管する評価と課題
▽新たな地域医療構想に期待すること
今後、6月までに10数人から話を聞く予定。
いずれの説明でも、医療計画をはじめとする他の医療政策や介護政策との整合性をとることや、人材確保を視野に入れた論議を求める声などが挙がった。
▼日病の相澤会長、「生活圏支える病院」定義
日病の相澤会長は、圏域や病院機能を新たに設定すべきと語り、私案を示した。
前提として、「安心して暮らし続けることのできる日常生活圏をつくるために施設や医療機関の偏在対策が必要」と指摘しつつ、「日常生活圏には必要とされる施設や医療機関が必ず存在する訳ではないため、必要な医療を確保するには隣接する日常生活圏との連携協働が必要になる」と述べている。
具体的な病院機能としては、「複合的医療ニーズを有する軽症~中等症の急性期患者に対して、入院時から介護の重度か予防や廃用症候群への進展防止のためのリハビリ、退院後の生活・療養支援の調整を行うなどの新たな急性期機能に加え回復期機能も有する病院が身近な地域にあることが必要」と説明し、隣接する日常生活圏で構成する地域医療圏ごとに設置すべきと訴えた。
▼新たな圏域設定も主張
新しい圏域の設定を訴え、具体的には、
▽広域医療圏=車での移動時間が60分程度を基本とし、10程度の地域医療圏で構成
▽地域医療圏=車での移動時間が30分程度で、1~10程度の日常生活圏で構成
▽日常生活圏=医療提供体制を構築するための基礎圏域で、市町村の介護保険事業計画で地理的条件、人口、交通事情などを勘案して定めている。国ではおおむね30分以内に必要なサービスが提供される区域としている
――の3段階を提唱した。
そのうえで、病院が存在する場所を変えることは難しいため、病院の地域ごとのバラつきの補正が必要とも指摘した。
ただし、そうしたバラツキの補正は新たに病院を建設したり統廃合を進めて行うのではなく、病院ごとの役割を明確にしたうえで、現在の病院を活かし、圏域の範囲を調整することを方針とすべきとも付け加えた。
▼新たな病院機能の私案も
こうした枠組みに基づいた病院の機能分化の必要性も訴えた。具体的には次の3つ。
▽広域型病院=かかりつけ医機能は有さず、外来は紹介受診に重点を置き、在宅医療には関与せず、入院機能は高度急性期中心。病床規模は400床以上
▽地域連携型病院=かかりつけ医機能は必要に応じて有し、在宅医療には一部、在宅療養支援病院として関与せず、入院機能は急性期、地域包括ケア病棟が中心
▽地域密着型病院=かかりつけ医機能を有し、在宅医療も積極的に担う。在宅療養支援病院となる病院もある。入院機能は地域包括ケア病棟が中心で、必要に応じて急性期、回復期リハビリテーション、療養機能も有する。病床規模は200床未満
これらを人口ごとに割り振っていくと、全国の必要病床数は約86万床となり、現在の約150万床から大幅に減ることになる。病院類型も変更するため忠実に実行するには医療法の改正も必要で、全てが相澤私案の通りになる可能性は低いが、病院機能の整理に関する方向性を示すものとして注目されることは確かだろう。
ひとこと:地域医療構想について
「大阪府では当初より民間病院、公的病院、全ての病院で地域医療構想の議論を進めてまいりました。こんな大阪でも最終的に大阪府医療審議会等で反対していたにもかかわらず、勝手に病床の機能を変更して、新設だと知事の勧告ができないということで、適用される医療法の抜け道を使って堂々と新病院を建ててしまったという事例もございました。このようなことが起こると、せっかくの地域医療構想の議論が無意味になりますので、次期地域医療構想ではぜひともこのような事例が起こらないような対応をお願いしたいと思います」
加納繁照
日本医療法人協会会長
~3月21日 第107回社会保障審議会医療部会
今週の数字:58.3%
LIFE関連加算の算定にあたって求められている LIFEへのデータ登録について、算定事業所・施設に聞いている。
複数の加算があることによる不便な点として、「複数の加算において同様の項目を入力することが手間である」を挙げた事業所・施設の割合。「加算ごとに提出頻度が異なる点が手間である」との回答は51.7%だった。(出典:第240回社会保障審議会介護給付費分科会資料「LIFEの活用状況の把握およびADL維持等加算の拡充の影響に関する調査研究事業(結果概要)(案)」2024年3月18日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)