社会保障短信(4月18日号)

医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。

トピックス…2035~2060年の「負担と給付」像を示す
ひとこと…2病棟の違いについて
今週の数字…1786病院

トピックス:2035~2060年の「負担と給付」像を示す

▼医療費の伸びはさらに加速するとの見方
内閣府は4月2日の経済財政諮問会議で、2034年から2060年度までのマクロの経済・財政・社会保障像に関する試算を示している。それによると、医療・介護費の伸びは自然体では経済の伸びを上回る見込みだという。

医療費は、高齢化や人口要因による伸びは今後、縮小傾向となる一方、医療の高度化等、その他の要因による伸びは、現状では年率1%程度だが、高額医療へのシフト等により更に高まる可能性があるとの見方を示している。介護については高齢化等の要因により一貫して増加すると予想している。

▼3つの経済シナリオを想定
まず将来の人口動態については、65歳以上人口は2040年頃にピークを迎え、ただし高齢化率は若年人口の減少ペースが速く、その後も上昇するという。医療費や介護費への影響が大きい75歳以上や85歳以上の人口は、長期にわたって段階的に増加するとの見込みを示した。

経済の前提については、生産性の向上、労働参加の拡大、出生率の上昇の程度の違いに応じて、①現状投影シナリオ(実質成長率0.2%程度)、②長期安定シナリオ(同1.2%程度)、③成長実現シナリオ(同1.7%程度)の3通りを用意している。

さらに経済財政政策については、長期的には社会保障費の増加によりプライマリーバランスの黒字幅は縮小、赤字となる可能性を指摘する。金利が成長率を上回るなかでは、プライマリーバランスの黒字幅が一定水準を切ると、公債等残高対GDP比は上昇する点を強調した。

▼医療・介護給付費のGDP比は倍増の試算も
社会保障の給付と負担については、医療の高度化など「その他の要因」による給付の増加を相殺する改革効果を実現できれば、制度の長期的安定性の確保が見通せるとの見方を示した。それに基づいて、3通りのシナリオ下での医療・介護の給付費の対GDP比を示している。2019年度では8.2%。

 「現状投影シナリオ」では次の通り。

▽改革効果を含まず、その他の要因による増加が年率1%の場合、11.1%
▽改革効果を含まず、その他の要因による増加が年率2%の場合、16.1%
▽改革効果を含む場合、11.1%

「長期安定シナリオ」では次の通り。

▽改革効果を含まず、その他の要因による増加が年率1%の場合、10.5%
▽改革効果を含まず、その他の要因による増加が年率2%の場合、12.7%
▽改革効果を含む場合、8.8%

「成長実現シナリオ」では次の通り。

▽改革効果を含まず、その他の要因による増加が年率1%の場合、9.7%
▽改革効果を含まず、その他の要因による増加が年率2%の場合、11.7%
▽改革効果を含む場合、8.2%

改革効果が実現できれば、長期安定シナリオのもとでもプライマリーバランスの黒字が維持され、公務等残高対GDP比の安定的な低下につながるとの見方も示している。

改革を進めずに医療費増加も放っておく一方、経済も現状のままというシナリオの場合、医療・介護費は対GDP比で現状の2倍に膨れることになる。一方で費用増の大きな要因として「医療の高度化」を挙げており、「どこまで保険医療でカバーするか」という給付のあり方に関する議論も、さらに活発になるかもしれない。

ひとこと:2病棟の違いについて

「地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟との違いというか、どちらをどういう形でもっと整理するかというのは現場では非常に大きな関心を持たれていると思いますので、しっかり議論をしていただきたいと思います」
島崎謙治
国際医療福祉大学大学院教授
~3月21日 第107回社会保障審議会医療部会

今週の数字:1786病院

令和6年6月時点で見込まれるDPC対象病院の数。前年度比25病院増。病床総数は約48万床で、前年度より400床増える。うち、急性期一般入院料1~6の届出病床数は約39万床、特定機能病院入院基本料の届出病床数は約5.7万床。(出典:中央社会保険医療協議会総会資料「令和6年度改定を踏まえたDPC/PDPSの現況について」2024年4月10日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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