社会保障短信(4月9日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス社会保障について「更なる改革」提言
◆ひとこと…マイナカード保険証について
◆今週の数字…80.6%
トピックス:社会保障について「更なる改革」提言
▼進捗に「課題」の事項は骨太に対応方針
内閣府の経済財政諮問会議下にある専門調査会「経済・財政一体改革推進委員会」は3月30日「経済・財政一体改革の点検・検証」の取りまとめを発表した。中期的な経済財線の枠組みの策定に向け、「新経済・財政再生計画」に基づく経済・財政一体改革の進捗を点検・検証するもの。
このなかで社会保障にも触れており、医療については「医療費の地域差半減や地域医療構想の実現など、改革の進捗について課題がみられる事項も存在する」と指摘し、「進捗がみられない原因等を分析し、その結果を踏まえ課題解決に向けた対応策を経済財政諮問会議で議論した上で、本年夏の骨太方針に対応の方向性を示すべき」と提言している。
▼過去5年の取り組みで8000億円の削減
社会保障に関する全体評価では、過去10年間の取り組みを振り返っている。2014年度に70~74歳の医療における窓口負担割合を1割から2割に引き上げたから始まり、2019年度以降は毎年、法改正や診療報酬・介護報酬改定を含む制度改革を実行してきたことや「全世代型社会保障の構築」に向けた一連の制度改革を改革工程表2023に位置づけるなど、合計74項目について「改革の着実な推進が図られてきた」と述べている。
また改革工程表2022からは「医療DXに関するアンブレラ」を創設したほか、同2023ではICT・ロボット等の新技術の活用に関する項目を拡充させてきたことを挙げている。
こうした取り組みを通じて、2019年度から2023年度までに、社会保障分野において国費ベースで約8000億円の削減を実現したほか、全世代社会保障の改革工程に、これまでの改革における議論等を踏まえた改革項目を盛り込むなど、2028年までの歳出改革の道筋を具体化するといった「成果」が出ている点も指摘した。
▼かかりつけ医機能関連の制度も「具体的な対応」
今後の課題としては、「2025年までの地域医療構想のさらなる推進および一人あたり医療費の地域差半減についてのさらなる取り組みに関する検討」「2026年度以降の地域医療構想について病院のみならずかかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含めた中長期課題の検討、第4期医療費適正化計画に基づく取り組みの推進」などのほか、「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた検討についても、具体的な対応の検討が必要」と述べている。
2028年までに公費節減効果について1兆1000億円の確保を図るとしており、具体的な取り組みとして次の項目を挙げている。
▽勤労者皆保険の実現に向けた取り組み
▽医療DXによる効率化・質の向上▽生成AI等を用いた医療データの利活用の促進
▽医療提供体制の改革の推進
▽効率的で質の高いサービス提供体制の構築
▽介護保険制度改革(ケアマネジメントに関する給付のあり方、軽度者への生活援助サービス等に関する給付のあり方)
▽医療・介護保険における金融所得の勘案
▽医療・介護の3割負担の適切な判断基準設定
▽介護保険制度改革(利用者負担の範囲、多床室の室料負担)
▽高齢者の活躍促進や健康寿命の延伸)
項目そのものは既に取り組みや議論が始まっているものがほとんどだ。提言は厚生労働省の意向を度外視して政府が先走っているわけでも、制度改革が厚労省単独で勧められているわけでもなく、政府と省庁が十分に連携を取っていると考えるべきだろう。
ひとこと:マイナカード保険証について
「次はマイナンバーカードの保険証を持ってきてね」というような趣旨をまず伝えていただくことと、医療機関の窓口で、「マイナ保険証を持ってきてくださいね、おばあちゃん」とお声をかけていただくことはとても大切だと思います。命や健康を守るためにも、マイナ保険証が有効であることをご理解いただけるように進めば、高齢者の皆さんも保険証とマイナンバー健康保険証を持っていたら、マイナカード保険証を使われるようになっていくだろうと思うのです」
横尾俊彦
全国後期高齢者医療広域連合協議会会長/多久市長
~2024年2月29日第175回社会保障審議会医療保険部会
今週の数字:80.6%
2022年度、大学病院本院群における、他院からの紹介有り患者の割合。DPC特定病院群は69.5%、DPC標準病院群は56.0%、出来高算定病院は32.3%だった。(出典:中央社会保険医療協議会 総会資料「令和4年度DPC導入の影響評価に係る調査『退院患者調査』の結果報告について」2024年3月22日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)