社会保障短信（2月27日号）

医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。

◆トピックス…医療法人経営、2022年度は事業利益率が悪化
◆ひとこと…医師の時間外労働削減について
◆今週の数字…15％以上

トピックス：医療法人経営、2022年度は事業利益率が悪化

▼赤字法人は7.2ポイント増の32.5％
福祉医療機構は1月24日、「2022年度医療法人の経営状況について」のリリースを発出している。それによると、調査対象である2500強の医療法人のうち、2022年度の赤字法人の割合は32.5％で、前年より7.2ポイント増えていたという。また平均の事業利益率は1.4ポイント減の0.5％となっていた。2020年度の-0.1％ほどではないものの、経営悪化の状況が見て取れている。

▼経費率の悪化が目立つ
事業収益対比を見ると、人件費率が前年比0.1ポイント増の56.7％、医療材料費率が同0.2ポイント増の12.8％。突出して増えたのが経費率で、同0.9ポイント増の22.7％となった。人件費や医療材料費、給食材料費は別項目で設けられていることから、具体的な費用としては委託費や光熱水費などが考えられる。

レポートでは原材料価格の上昇や急激な円安などに起因する物価高騰といったことを背景として指摘している。「2022年度は医療・介護・福祉分野に限らず、物価高騰の影響に苦しんだ年であった。もっとも、医療・介護・福祉分野では、物価高騰の価格転嫁が困難であるという点が他の分野とは大きく異なる」

▼赤字法人は現預金の少なさが際立つ
また黒字法人と赤字法人の経営状況の違いにも触れており、流動比率、純資産比率、現預金回転期間の違いを紹介している。
流動資産の流動負債に対する割合を示す流動比率は、黒字法人が234.8％であるのに対して赤字法人は172.4％。法人所有の資産のうち自己資本が占める純資産比率は、それぞれ38.7％、24.0％。医業収益に対して何日分の現預金を保有しているかを示す現預金回転期間はそれぞれ3.1月、2.2月となっていた。

いずれも赤字法人の経営状況、なかでも支払能力の厳しさを示す数値として注目する必要がありそうだ。

▼3～10年看護師の離職増が目立つ
また人材確保の状況についても聞いている。それによると常勤換算職員数のうち、年間で採用した同職員の人数を表す採用率は、2022年度で14.2％。2020年度からの3カ年度で大きな変化は見られない。また新卒の割合は2.5％、中途採用は11.8％で、こちらも大きな動きはなかった。

離職率は13.8％。2020年度13.1％、2021年度の13.6％と徐々に上昇していることがうかがえる。勤続年数別に見ると、就職後１年後未満が3.5％で2020年度比0.2ポイント減、同1年以上３年未満が3.5％で0.1ポイント増、3年以上10年未満が4.6％で0.6ポイント増となっている。福祉医療機構の解説によると、３年以上10年未満はもともとライフスタイルに変化が起こりやすい世代であることに加え、業務では中堅に位置することが多く、コロナ禍のなかで極度の疲労によりバーンアウトした職員がいる可能性もあるという。

介護職員の採用状況にも触れている。それによると、3カ年度同一法人の採用者数は平均6.7人で、2020年度比1.4人減。うち新卒は0.5人、中途は6.2人、新卒採用なしは84.0人。一方、離職者は7.0人で採用者を上回る状況が分かった。

診療報酬改定でも「看護補助者」の働きを評価する動きは見られるが、この流れに歯止めをかける効果があるかどうかは不透明と言えそうだ。

ひとこと：医師の時間外労働削減について

「今までそれだけ長時間労働したのを短くするために、本来ならば人を1.3倍、1.5倍配置というように、その分の潤沢なお金を入れて人を増やしてやるならばうまくいくけれども、お金は出せない。何とかIT化と、効率化と、そしていろんなタスクシェア、シフティング等でやりなさいということ、もちろん保険制度を持続可能なものにしなければいけない、国民皆保険を守らなければいけないことは我々も全く同感ですが、そういうかなり厳しい運営の中で働き方改革をしなければいけないということの現状を本当に御理解いただきたいと思っています」
池端幸彦
日本慢性期医療協会副会長
～2023年12月８日 第172回社会保障審議会医療保険部会

今週の数字：15％以上

2024年度診療報酬改定で新設された、「地域包括医療入院料」の施設基準として盛り込まれた、同入院料算定病棟にいる入院患者のうち、救急車で搬送された患者と「救急患者連携搬送料」算定病院からの転院患者の患者が占める割合。
（出典：中央社会保険医療協議会総会「個別改定項目について」2月14日）
（文／ヘルスケア・マネジメント.com）