社会保障短信(1月22日号)

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トピックス…診療報酬改定に向けた「議論の整理」提示
ひとこと…高齢救急患者への対応について
今週の数字…10兆1598億円

トピックス:診療報酬改定に向けた「議論の整理」提示

▼「基本方針」に沿って整理
1月19日の中央社会保険医療協議会総会では、「令和6年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」が厚生労働省から提示された。

項目は12月11日の社会保障審議会医療保険部会・医療部会で取りまとめられた「令和6年度診療報酬改定の基本方針」に即して立てられている。
具体的には、

Ⅰ現下の雇用情勢を踏まえた人材確保・働き方改革等の推進
Ⅱポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅲ安心・安全で質の高い医療の推進
Ⅳ効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

――の4つ。改定論議も大詰めを迎えているが、入院医療についての言及では、高齢者対応の充実に向けた見直しが目立つ内容となっている。

▼高齢救急患者の入院は「新たな評価」
Ⅱのうち、「Ⅱ-4患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価」では、急性期医療、高齢者救急、療養病棟における医療の評価体系などを見直すことが記載されている。

高齢の救急患者に対する入院医療については、「高齢者の救急患者等に対して、一定の体制を整えた上でリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供することについて、新たな評価を行う」と述べている。新たな入院料を設ける布石として注目が集まっている。

この記述は、12月15日の中医協総会で示された「高齢者の救急患者等に対応する入院医療(イメージ)」をもとにしたもの。
そこでは、

▽救急患者を受け入れる体制を整備
▽一定の医療資源を投入し、急性期を速やかに離脱
▽早期の退院に向け、リハビリ、栄養管理等を提供
▽退院に向けた支援、適切な意思決定支援
▽早期の在宅復帰、在宅医療、介護との連携

――を包括的に提供することを図示している。

▼体制は「地ケア以上、7対1未満」か
これに関する中医協での議論では、「誤嚥性肺炎や尿路感染症の入院治療については、対応可能な地域包括ケア病棟における一層の対応が必要ではないか。ただし、地域包括ケア病棟は、看護配置が13対1であること等から、対応できる救急医療には限界があることも認識すべき」「どのような病棟による急性期の高齢者等の受け入れを推進すべきかを検討した上で、地域一般病棟や地域包括ケア病棟など急性期一般入院料1以外の病棟のうち高齢者救急への対応や高齢者のケアに必要な体制を備えた病棟を類型化して評価することが必要ではないか」などの指摘が上がっている。

こうした議論から、病棟の「類型」としては「地域包括ケア病棟以上、急性期一般入院料1未満」が軸になることが見込まれるが、具体的な要件については更に議論が続きそうだ。

▼看護補助者による直接ケアを評価
このほか「看護職員及び看護補助者の業務分担・協働を更に推進し、高齢者の救急患者をはじめとした急性疾患等の患者に対する適切な入院医療を推進する観点から、直接患者に対するケアを担う看護補助者の配置」について、新たな評価を行うことも挙げている。

ただし、中医協の議論では、介護福祉士の病棟配置についての評価は、介護現場での人材不足などを理由に否定的な見解が目立つ一方、看護補助者に対するアンケート調査からは患者への直接のケアについては不安視する意見も多い。このあたりを踏まえ、どのような算定要件を設けるかも注視が必要になりそうだ。

ひとこと:高齢救急患者への対応について

「高齢者の救急に関しましては、生死に関わる急変となる可能性が高く、トリアージを含めた判断が重要とされ、同時に、基本的には重症としての対応が必要であるということをぜひとも認識していただいて、今後、ぜひとも対応いただけるようよろしくお願いしたいと思います」
加納繁照
日本医療法人協会会長
~2023年12月8日 第105回社会保障審議会医療部会

今週の数字:10兆1598億円

2024年度予算案における、各医療保険制度などに関する医療費国庫負担。前年は10兆648億円だった。2024年度診療報酬の改定率+0.88%、薬価等-1.00%を背景としている。(出典:第174回社会保障審議会医療保険部会資料「令和6年度予算案(保険局関係)の主な事項等について」2024年1月19日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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