社会保障短信(1月15日号)

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トピックス…必要度の見直し案、基準未達の病院続出の見通しが進む
ひとこと…賃上げの方法について
今週の数字…0.64

トピックス:必要度の見直し案、基準未達の病院続出の見通し

▼該当患者、基準超え病院ともに減少
1月10日の中央社会保険医療協議会総会では、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度等について」が議題に上がり、必要度の見直し案をもとにしたシミュレーションが厚生労働省から報告された。

患者の状態などを評価するB項目を除くほか、モニタリングや処置などを評価するA項目で救急搬送後の入院のうち、評価対象を現行の5日間から1~2日に短縮する見直し案が提示されている。一般病棟入院基本料1~5のいずれにおいても、該当患者の割合が減少するほか、基準を満たす病院、病床の割合も減ることが示された。

▼救急搬送後の入院評価日数がカギ
急性期一般入院料1の該当患者割合のシミュレーションでは、①A得点3点以上かC得点1点以上、②A得点2点以上かC得点1点以上――の2通りについて検証している。②は現行の「A得点2点以上かつB3点以上」の基準を用いない案が示されていることを踏まえた激変緩和策といえる。

その結果、該当患者割合は次のような傾向が見られた。

▽現行:36.6%
▽見直し案1(救急搬送後の入院についての評価日数が1日):①25.8%、②33.1%
▽見直し案2(救急搬送後の入院についての評価日数が2日):①26.5%、②34.8%
▽見直し案3(救急搬送後の入院についての評価日数が1日、抗悪性腫瘍剤〈注射剤のみ〉で使用率が60%未満は対象から除外し、そのうえで満たした場合は3得点):①26.0%、②33.1%
▽見直し案4(救急搬送後の入院についての評価日数が2日、抗悪性腫瘍剤〈注射剤のみ〉で使用率が60%未満は対象から除外し、そのうえで満たした場合は3得点):①26.7%、②34.8%

さらに、判定基準案の組み合わせ案についても検討し、基準を満たす病院の増減を調べており、見直し案1の場合、次のような結果が出た。

▽A(該当基準患者割合①の基準15%+同②の基準24%):基準を満たす病院割合の増減-4.6%、病床割合の増減-1.8%
▽B(該当基準患者割合①の基準15%+同②の基準28%):基準を満たす病院割合の増減-19.4%、病床割合の増減-12.1%
▽C(該当基準患者割合①の基準18%+同②の基準24%):基準を満たす病院割合の増減-6.5%、病床割合の増減-3.1%
▽D(該当基準患者割合①の基準15%+同②の基準24%):基準を満たす病院割合の増減-19.7%、病床割合の増減-12.3%

同入院料4でも同様の傾向が見られる。必要度Ⅱの場合、現行の該当患者割合は30.4%だが、見直し案1~4で23.5~24.8%、変更後の基準を15%としてシミュレーションしたところ、基準を満たす病院の割合は16.3%減、病床数では10.2%減となっている。

これらのことから、救急搬送後の入院についての評価日数が1日か2日かによって基準を満たす病院、病床の割合が大きく変わることがうかがえる。この日の議論で、診療側の委員は「さらにゆるい基準」の策定を求めているが、この調整が必要度見直しのポイントになりそうだ。

▼賃上げは多様な勤務形態が課題か
この日は、「医療機関等における職員の賃上げ」についての議論も交わされた。2024年度診療報酬改定についての大臣折衝事項で、本体分のうち、40歳未満の勤務医、勤務歯科医、薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所で従事する者の賃上げに資する措置分として+0.28%程度、それとは別に看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種のベースアップ対応分0.61%を含むことを記載している。

このなかで厚労省は、40歳未満の勤務医は非常勤で勤務する医療機関があったり、事務職員は派遣や委託などさまざまな勤務形態があったりすることなどを指摘した。また40歳未満の医師の割合は、特定機能病院入院基本料、急性期一般入院料を算定する医療機関が他の医療機関より高いことも報告した。

折衝事項は賃上げについて具体的な職種や年齢まで絞り込んで言及している一方、病院団体などは入院基本料へ上乗せを通じた対応を求めている。どこに着地点を見出すか、注目される。

ひとこと:賃上げの方法について

「基本的には賃上げの対象、医師事務作業がどうかとか、医療DXに必要なシステムエンジニアをどういうふうにするのかとか、あるいは給食・清掃に関しましても、地域の雇用の実情というのも存在していると思いますので、その辺、ある程度医療サイド、病院サイドで柔軟に裁量できるような形となりますと、基本的には入院料全体を引き上げる仕組みにしたほうがいいのかなと思いました」
津留英智
全日本病院協会常任理事
~2023年12月21日 令和5年度第11回入院・外来医療等の調査・評価分科会

今週の数字:0.64

年間の救急車受入件数200件以上の病院(救命救急入院料届出病院、地域医療体制確保加算算定病院、小児入院医療管理料届出病院を除く)における、許可病床1床当たりの看護師・助産師配置人数の中央値(50パーセンタイル)。看護補助者の中央値は0.14だった。(出典:令和5年度 第12回 入院・外来医療等の調査・評価分科会資料「医療機関等における職員の賃上げについて(その2)」2024年1月4日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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