社会保障短信(12月25日号)

医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。

トピックス…2024年度改定は+0.88%で決着
ひとこと…救急搬送の軽症・中等症について
今週の数字…32.4%

トピックス:2024年度改定は+0.88%で決着

▼プラス改定も用途は限定的
12月20日の中央社会保険医療協議会総会で、2024年度診療報酬改定の改定率が報告された。診療報酬は+0.88%。国費では+800億円程度となる。

このうち
▽看護職員、病院薬剤師ほかの医療関連職種の賃上げベースアップ対応として+0.61%
▽入院時の食費基準額の引き上げが+0.66%
▽生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・最適化で-0.25%
――となっている。これらを除いた改定分は+0.46%で、このうち40歳未満の勤務医、勤務歯科医、薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等の従事者の賃上げ措置分(+0.28%程度)も含んでいる。

薬価等は-1%で、内訳は①薬価-0.97%、②材料価格-0.02%。国費では-1200億円程度となる。

さらに、診療報酬・薬価等に関する制度改革事項として
▽医療DXの推進による医療情報の有効活用等
▽調剤基本料等の適正化
――について「改革を着実に進める」と付記している。
加えて、医療現場の従事者にとって、2024年度に2.5%、2025年に2.0%のベアに「確実につながるよう、配分方法の工夫を行う」ことも求めている。
プラス改定にはなっているものの、医療関連職種のベア対応をはじめ、かなり用途は限定されている。入院診療の評価などは「+0.46%」のなかで賄うことになり、1月の中医協論議は加熱しそうだ。

病院団体が強く求めていた入院時の食費基準額の引き上げは1食あたり30円で、うち患者負担は原則1食30円、低所得者は所得区分に応じて10~20円になる。

▼高齢者施設の協力医療機関を評価する案を提示
この日はあわせて、「医療機関と高齢者施設等との連携について」をテーマに議論が交わされた。このなかで厚生労働省は次の論点を示している。

▽在宅療養支援病院、在宅療養後方支援病院、在宅療養支援診療所および地域包括ケア病棟等に求められる役割や、介護保険における介護保険施設と協力医療機関との連携体制の構築に関する対応方針も踏まえ、在支病等においては、介護保険施設の求めに応じて協力医療機関を担うことが望ましいこととしてはどうか
▽協力医療機関について、介護保険施設が定期的に開催する入所者の源病歴等の情報共有を行う会議に参加している場合であって、当該入所者の病状の急変時に、協力医療機関の医師が往診を求められた際の、①②の対応について診療報酬上の評価を行ってはどうか
①協力医療機関の医師が入所者または施設の職員等の求めがあった場合の往診
②当該往診等において、入院の必要性が求められた場合の、入院の受け入れ

▼介護報酬改定と両面で連携促す
介護報酬改定を議論する社会保障審議会介護給付費分科会では、介護保険施設に対して、次の要件を満たす協力医療機関を定めることを義務づける案を示していた。

①入所者の病状の急変が生じた場合等において、医師または看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること
②診療の求めがあった場合において、診療を行う体制を常時確保していること
③入所者の病状の急変が生じた場合等において、入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること

猶予期間として3年間を設けることも付け加えられている。①②にある「常時」は夜間休日の対応も想定していることから、在支病などが名指しされる形で挙がっていると考えられる。11月の分科会でこの案が示された際は介護施設の間で反発が広がり、当初は1年とされた猶予期間も、12月の審議報告案では3年に延びている。

今回の中医協での論点提示は、診療報酬でもこの連携に向けた呼び水を設けたと捉えることができそうだ。

ひとこと:救急搬送の軽症・中等症について

「消防庁の報告書で区分する軽症、中等症ですが、軽症は外来診療で帰した患者さんです。前も申しましたように、喘息発作で重積発作があって死にかけている状況でも、助ければ帰っていただく。そういう方たちも軽症になってしまうわけです。消防庁が使う中等症ですが、消防庁が使う重症というものがそもそも3週間以上の長期入院を指しているので、中等症の中にはいわゆる高齢者の重症患者、実質的な重症患者が入っているわけなのです。これを区別なしで書かれてしまいますと、軽症、中等症ばかりで、高齢者の救急が軽い人ばかり診るのかという表現になっているかと思います。」
加納繁照
日本医療法人協会会長
~2023年11月29日 第104回社会保障審議会医療部会

今週の数字:32.4%

2022年度における、一般病院の経常赤字病院の割合。2021年度より2.3ポイント増だった。医療材料費率が20.6%(前年比0.5ポイント増)、経費率20.4%(同0.6ポイント増)となっている。(出典:福祉医療機構「2022年度 病院の経営状況(速報値)について」2023年10月30日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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