社会保障短信(12月11日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…救急医療での下り搬送評価で要件案提示
◆ひとこと… 救急医療管理加算について
◆今週の数字…13.1%
トピックス:救急医療での下り搬送評価で要件案提示
▼転院受入先のリスト化など要
中央社会保険医療協議会総会では、12月6日の会合で、「救急医療について」がテーマとなり、転院搬送が論点として示された。転院搬送の取り組みについての診療報酬上での評価要件の案も厚生労働省から提示され、あらかじめ搬送先医療機関の候補がリスト化されていることや、搬送元と搬送先が「特別の関係」ではないことなどが挙がった。
▼在宅復帰率対象から除外
「救急医療における患者の病棟に応じた効率的な医療の提供のための転院搬送について」という形で論点が提示され、「救急医療機関等を受診した後に、他の医療機関でも対応できる患者を転院搬送する取り組みに対する評価のあり方について」として、次の要件案が挙げられた。
▽搬送元医療機関における救急搬送の受入実績が一定程度以上あること
▽搬送元の医療機関の救急外来から直接または入院後すみやかに転院搬送を行い、搬送先の医療機関に入院した場合を評価の対象とした上で、救急外来から直接転院した場合をより高く評価すること
▽搬送元医療機関において、受入先の候補となる各医療機関が受入可能な疾患や病態について各医療機関や地域のメディカルコントロール協議会と協議を行ったうえで、候補となる医療機関を事前にリスト化しておくこと
▽搬送先からの相談に応じる体制および搬送先で患者が急変した場合などに再度患者を受け入れる体制があること
▽転院先の医療機関等と定期的に救急患者の受入について協議を行うとともに、その差異に搬送した患者のその後の診療経過について共有を受けていること
▽搬送元医療機関と搬送先医療機関がない場合に、診療報酬上の評価の対象となること
急性期病棟から他の急性期病棟への転院については、搬送元医療機関への入院後、すみやかに行われた場合、在宅復帰率の評価対象から除外する案も示されている。
▼リスト化は先行事例も
高次の医療機関からの転院搬送は「下り搬送」と呼ばれ、地域医療構想に関する議論などでも促進の必要性が指摘されている。厚生労働省の資料では、これによって①高次医療機関は重症患者の受け入れが可能な体制を維持でき、②患者は身近な病院で必要な医療を受けられ、③周辺病院は患者数を確保できる――という利点を得られることになると説明されている。
総務省消防庁の資料によれば、2020年の搬送割合は65歳以上が62.3%を占め、特に85歳以上の割合が急増しており、なかでも軽症・中等症の増加が目立つという。
一方、2022年のDPCデータでは、高齢者に多い疾患のうち救急搬送により入院する割合が高いものについては、誤嚥性肺炎や尿路感染症を含め、急性期一般入院料1や治療室に入院する割合が高いことが示されている。さらに、75歳以上の「食物および吐物による肺臓炎」「尿路感染症、部位不明」などへの医療資源投入量は、急性期一般入院料1と同入院料2~6、地域一般入院料1~2の間で大きく変わらないという。
搬送先の候補となる医療機関を事前にリスト化しておく案については、熊本県、神奈川県の三次救急医療機関の例が先行事例として取り上げられた。「初期診断・治療後であれば他の医療機関も受け入れが容易になる」ため、「初療は集約、入院は分散」の方針で取り組んでいることが報告された。三次救急医療機関の周囲の医療機関からは、整形外科領域などで手術適応のある患者について、転院の要望があることなども紹介されている。
▼栄養管理、リハ、口腔管理の計画に多職種関与は少ない
そのほか、病棟での多職種連携の取り組み状況にも触れている。急性期一般入院料1の病棟では、栄養管理計画の作成が91.7%、離床やリハビリテーションに係る計画の作成が90.5%、口腔管理に関する計画の作成が48.2%だった一方で、それぞれの取り組みについて各職種の関わりが少ないことも報告した。
▼入院時の食費は30円引き上げ
12月8日の中医協総会では「入院時の食費について(その2)」が議題となった。「その1」では、入院時の食費について「昨今の食材費等は特に足下で大きく高騰しており、また、介護保険の食費の自己負担は一食当たり約482円であり、入院時の食費との差は22円となっている」ことを示していた。今回はこれに、「入院時の食費を例えば30円引き上げることとしてはどうか」との案が示された。
あわせて、この日の資料では入院時食事療養費制度発足以来の入院時食事療養費の変遷も示されている。2006年4月から1食あたりで算定するようになり、総額640円となっているが、2006年4月が自己負担260円・保険給付380円、2016年4月が360円・280円、2018年4月が460円・180円となっている。介護保険における食費の自己負担は約482円で、「22円」の論拠となっている。今回の「30円引き上げ」は、自己負担額の割り増しによって実現するかどうか、今後も厚労省案を見守る必要がありそうだ。
ひとこと:救急医療管理加算について
「前回も都道府県のばらつきが非常に多いということが出ました。今回も非常にばらつきが多いわけで、その原因は様々考えられるわけですけれども、大きくは審査における査定などにより加算1が請求できないような都道府県があることも聞いております。そのほかにも様々な原因があり、たとえば、JCSの値といっても様々な疾患もあるので、もう少しこの調査を進めて細かく分析した上でないと、性急な見直しはやらないほうがいいのかと思っております。」
猪口雄二
日本医師会副会長
~2023年10月12日 令和5年度第10回入院・外来医療等の調査・評価分科会
今週の数字:13.1%
「令和5年度医療経営実態調査」における、一般病院全体の医薬品の対医療・介護収益比。前年は12.7%で、0.4ポイント増加したことになる。(出典:「第24回医療経済実態調査〈医療機関等調査〉報告」11月24日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)