社会保障短信(12月4日号)

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トピックス…急性期でのリハビリ・栄養・口腔が議題に
ひとこと… 救急医療管理加算について
今週の数字…-6.7%

トピックス:急性期でのリハビリ・栄養・口腔が議題に

▼高齢患者の生活機能維持は重要
中央社会保険医療協議会総会は12月1日、リハビリテーション・栄養・口腔をテーマに議論した。リハビリ・栄養・口腔の一体的提供は改定論議に先立って行われた中医協と社会保障審議会介護給付費分科会による「同時報酬改定に向けた意見交換会」でも主要な論点となっているだけに、どのような論点が提示されるか、注目が集まっていた。

この日の資料のなかで、意見交換会では「高齢者の心身の特性に応じた対応」について、次の意見が出ていると紹介している。

▽急性期病院における高齢者の生活機能の低下を予防することは重要。病状を踏まえ、各医療専門職種が共通認識を持ったうえでチーム医療による離床の取り組みを推進すべき
▽労働人口が減るなかで専門職の配置については、全体のバランスはよく見ていくべき。急性期病棟に介護福祉士を配置するようなことは、現実的でないし、医療と介護の役割分担の観点からも、望ましい姿とは言えない
▽診療報酬の早期離床・リハ加算としてICUでの取り組みが進められていることもあり、急性期病棟にリハ職を配置することでより良いアウトカムが出るのではないか

▼リハ職の配置にバラツキ
「急性期におけるリハビリ・栄養・口腔」が1項目として設定され、現状についての課題が報告された。

まず、2016年度と2022年度の調査を比べると、7対1病棟、専門病院、特定機能病院において、要介護・要支援の患者比率が増加していることが取り上げられた。たとえば7対1病棟では2016年度が26.2%だったのに対し、2022年度は28.9%となっている。

一方で急性期一般入院料2~6を届け出ている病院では、65歳以上のリハビリ実施率の分布でバラツキが大きいこと、一般病棟入院基本料と地域包括ケア病棟入院料を届け出ている病院でリハビリ専門職の配置のバラツキが大きいことなどが紹介された。

急性期一般入院料1、2~6を届け出ている病院での65歳以上患者への対応についても言及している。リハビリ専門職が40床以上につき2人以上配置されているほうが、有意にリハビリ実施率が高く、ADLスコアの改善が大きいという。

土日祝日にリハビリを実施していない施設は、日曜日で67.9%、祝日で56.8%だったことにも触れた。さらに、急性期における休日リハビリの有効性にも言及し、一例として急性期の脳卒中患者に対して休日リハビリを提供した場合、退院時に機能的に自立する割合が高く、リハビリ開始までの日数が短くなるという調査を示した。

▼早期の栄養管理で「成果」
栄養管理については、急性期病院において入院時の栄養スクリーニングと個別的な栄養管理により全死亡率等が低下したという報告を取り上げた。具体的には、入院後48時間以内に全ての患者に栄養スクリーニングを実施し、低栄養リスクがある患者に対し、管理栄養士が定期的に栄養摂取量の把握や栄養状態の評価を行い、個別の栄養管理を実施した場合、入院後30日以内の負の臨床アウトカムや全死亡率が低下したという内容になっている。

一方で入院患者に対する栄養管理の実施時期として、最も多いタイミングとして、入院後48時間以内と回答した割合は、栄養スクリーニングが81.7%、栄養アセスメントが64.1%、栄養ケアプランニングが56.3%、栄養介入が44%だった。

さらに管理栄養士が病棟に配置されているほうが、入院後、管理栄養士が患者を訪問するまでの日数が短く、入院期間の体重減少量と体重減少率が抑えられるという。

ただし、管理栄養士が病棟に配置されている割合は、急性期一般入院料1の病棟で26.2%、同入院料2~3で15.3%、地域包括ケア病棟入院料・管理料1で32%となっている。

▼栄養管理、リハ、口腔管理の計画に多職種関与は少ない
そのほか、病棟での多職種連携の取り組み状況にも触れている。急性期一般入院料1の病棟では、栄養管理計画の作成が91.7%、離床やリハビリテーションに係る計画の作成が90.5%、口腔管理に関する計画の作成が48.2%だった一方で、それぞれの取り組みについて各職種の関わりが少ないことも報告した。

▼一体的運用に向けた方策が論点に
こうした現状を伝えたうえで、論点については次のように示した。

「急性期入院医療における高齢者のADL悪化を防ぐ取り組みの推進がもとめられているが、ADL維持向上等体制加算の届出施設数は少ないことを踏まえ、
▽理学療法士等の配置とリハビリの提供の推進
▽土日祝日のリハビリの提供
▽患者の状態に応じた速やかな食事の提供・変更等を含めた栄養管理の強化
▽リハビリ、栄養管理および口腔管理の一体的な運用を図るため、どのような方策が考えられるか」

 診療報酬での評価によって後押しする試みは見られそうだが、専従・専任の人材を配置できるほどの報酬になるかは不透明なだけに、議論の推移はもちろん、現場側の反応も注目される。

ひとこと:救急医療管理加算について

「働き方改革で一番危険な状態にさらされているのは、二次救急の現場だと思います。実際、大学が人を出さなくなれば、どれだけの病院が二次救急を維持できるかどうか分からない。そのような状況で、来年春を迎えるわけですから、今の段階で救急医療管理加算に手をつけるのは、非常に危険だと私は思います。」
山本修一
独立行政法人地域医療機能推進機構理事長
~2023年9月29日 令和5年度第8回入院・外来医療等の調査・評価分科会

今週の数字:-6.7%

「令和5年度医療経営実態調査」における、一般病院全体の2022年度損益差額。前年度の-5.5%よりも1.2ポイント分、赤字幅が拡大したことになる。一般診療所は8.3%の黒字。(出典:「第24回医療経済実態調査〈医療機関等調査〉報告」11月24日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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