社会保障短信(11月20日号)

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トピックス…働き方改革について評価のあり方を議論
ひとこと… 急性期患者の受け入れ先について
今週の数字…1万6844円

トピックス:働き方改革について評価のあり方を議論

▼医師事務作業補助や看護補助の効果を検証
11月11日に開かれた中央社会保険医療協議会総会では、「働き方改革の推進について(その2)」が議論された。
論点は
▽地域医療体制確保加算
▽特定行為研修修了者
▽医療機関における薬剤師の業務
▽医師事務作業補助体制加算
▽手術・処置の時間外等加算
▽看護職員の負担軽減及び看護職員と看護補助者の協働
▽ICTの活用 等――。

2024年度から医師の働き方改革関連制度の本格的な施行が始まる。現在も診療報酬や地域医療介護総合確保基金などによる後押しが見られるが、それらの進捗状況なども踏まえる形で議論が進んだ。

▼救急搬送の件数要件が課題
このうち、地域医療体制確保加算は、「適切な労務管理等を実施することを前提」として2020年度改定で設けられ、2022年度改定で対象となる医療機関を増やしたほか、医師労働時間短縮計画の作成を要件に追加するなどの見直しを進めている。2022年9月時点の算定状況は1045施設で、400床以上の病院のうち63.7%が算定済みだという。

一方で、同加算を算定している病院での勤務医の勤務状況にも触れている。時間外労働が月155時間(年1860時間に相当)以上の医師は2022年で0.22%にとどまるものの、月80時間(年960時間に相当)以上の勤務医の割合は5.76%で、2020年から2022年にかけて増えていることが分かっている。
また、宿日直の月平均回数は2回未満が増加、4回以上が減少。連日当直を実施した人数は2021年から2022年にかけて微増となっていた。

同加算を届け出ていない医療機関の届出が困難な理由としては、救急車か救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年2000件以上もしくは救急車か救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年1000件以上かつハイリスク分娩管理加算を届け出ているなど、救急医療に係る実績が挙がっている。
背景として人口減による医療需要の減少を挙げる声もあり、このあたりの対応は今後の論点になりそうだ。

▼医師事務作業補助者は「質」重視か
医師事務作業補助体制加算は2008年度改定で新設され、改定のたびに対象病棟を拡大、さらに点数の上乗せを続けてきた。届出医療機関数は2021年で3108施設を数える。
2022年度改定では同加算1の施設基準として、医師事務作業補助者の経験年数に着目した評価を加えるなど、作業の質にも焦点を当てるようになっている。

この日の資料でも、「2023年は2018年と比較して、診断書の起算、診療予約・変更や調整、紹介状の返書等の、技術を要する業務を実施している割合が高くなっている」と指摘している。
また、院内教育体制を有する施設はそうでない施設と比べ、医師の事務作業負担軽減効果が高いというデータも示した。

今回の改定でもこうした業務の質に着目した評価が加わりそうだ。

▼直接ケアの補助に関する評価は不透明
看護職員の負担軽減および介護職員と看護補助者の協働に関しては、まず看護職員の負担状況に焦点を当てている。
資料によると、看護職員が特に負担が大きいと感じる業務としては、日中・約款の患者のADLや行動の見守り、付き添いや排泄に関する援助が上位にあがっている。
また2022年11月時点で、病棟看護職員の勤務状況は約4割の病棟で悪化傾向にある。

一方、看護補助者については、どの入院料でも一定数を配置していることを報告した。40床あたり換算で、急性期一般入院料1算定病棟が3.45人、地域包括ケア病棟入院料算定病棟が6.03人、療養病棟入院料算定病棟が9.49人といった具合だ。

看護補助者対象のアンケート調査も取り上げ、看護補助者が困難さを感じる業務としては「食事介助」「口腔ケア」など直接ケアが多かったことも伝えている。

さらに中医協と社会保障審議会介護給付費分科会による「同時改定に向けた意見交換会」では、「急性期病棟に介護福祉士を配置するようなことは、現実的でないし、医療と介護の役割分担の観点からも、望ましい姿とは言えない」「急性期病院では介護やリハビリの人材確保は困難」といった意見が出たことを強調している。

一部では急性期病院でも高齢患者が大半を占めるようになっていることを踏まえ、介護職配置を評価すべきとの意見も出ているが、実現には障害が多そうだ。

ひとこと:急性期患者の受け入れ先について

「地域包括ケア病棟をやめてしまうという病院が今回の診療報酬改定後にかなり増えてしまった。特に急性期病院で地域包括ケアをやっている病院が減ってしまったということで、急性期病院から地域に戻すということにちょっと苦慮しておるという現状がございます。」
泉 並木
日本病院会 副会長
~2023年9月29日 第102回社会保障審議会医療部会

今週の数字:1万6844円

2023年5月時点での、介護医療院の利用者1人当たりの収入(1日)。補助金収入は除く。前年同月は1万6901円だった。介護老人保健施設は1万3632円、介護老人福祉施設は1万3094円だった。
(出典:第38回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会「令和5年度介護事業経営実態調査結果(案)」2023年11月10日
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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