社会保障短信(10月23日号)

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トピックス…「かかりつけ医機能」に関する検討会が開始
ひとこと… 診療報酬改定実施時期後ろ倒しについて
今週の数字…1万3866カ所

トピックス:「かかりつけ医機能」に関する検討会が開始

▼かかりつけ医機能情報の提供のあり方
厚生労働省では10月13日、「第1回国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討会」を開いた。

今年5月に成立した改正医療法で、医療機能情報提供制度の刷新や、かかりつけ医機能報告制度の創設、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進めることが決められている。

検討会はこれを受けて設けられたもので、厚労省は、「医療機能情報提供制度とかかりつけ医機能報告制度の整合性の確保を図りつつ、国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等のあり方について検討することを目的に開催する」と説明している。

▼制度施行に関する分科会
検討は、今回の検討会の下に2つの分科会を設けて進める。いずれの分科会も2024年夏頃まで議論を続け、2025年4月以降に制度を施行する見通しだ。

分科会の一つは新たに設ける「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」で、かかりつけ医機能報告に位置づける機能の基本的な考え方や省令等の具体的内容を議論する。その内容をもとに改正法に基づく省令・告示改正、かかりつけ医機能報告システム構築に向けた準備等を進め、2025年度からのかかりつけ医機能関係施行につなげる。
また、地域の協議の場に関する自治体向けガイドラインの検討も開始し、2025年度の自治体向けガイドライン策定・公表につなげる。

▼情報提供・広告に関する分科会
もう一つは「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」で、こちらは既設の検討会を改編、検討会の分科会として位置づける。

医療機能情報提供制度に関する、
▽情報提供項目をわかりやすく伝える方法
▽対象者別の情報提供のあり方
――といった、これまでの議論の継続性も踏まえながら、同制度の全国統一システム化、かかりつけ医機能の情報提供項目等について検討する。

これらの内容を踏まえて、2025年度からの情報提供項目の改修につなげる。

▼かかりつけ医機能8項目
かかりつけ医機能については、「医療法施行規則別表第一の規定に基づく病院、診療所又は助産所の管理者が都道府県知事に報告しなければならない事項として医療法施行規則別表第一に掲げる事項の内、厚生労働大臣の定めるもの(告示)」のなかで、次の8項目を挙げている。

①日常的な医学管理及び重症化予防
②地域の医療機関等との連携
③在宅医療支援、介護等との連携
④適切かつ分かりやすい情報の提供⑤地域包括診療加算の届出
⑥地域包括診療料の届出
⑦小児かかりつけ診療料の届出
⑧機能強化加算の届出

ただ、これらは診療報酬の加算が含まれるなどわかりにくいとの声が上がっている。これを受けて2022年11月28日の社会保障審議会医療部会で示された「医療機能情報提供制度の充実・強化について(案)」では、「慢性疾患を有する高齢者の場合のイメージ」として、

①外来医療の提供(幅広いプライマリケア等)
②休日・夜間の対応
③入退院時の支援
④在宅医療の提供
⑤介護サービス等と連携

――が挙がっている。

▼香取照幸氏が「問題提起」
この日の会合では、元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長で、医療・介護政策でも大きな役割を果たしてきた、香取照幸・一般社団法人未来研究所臥龍代表理事が「開催にあたっての問題提起」を行った。
そのなかで、「今後取り組むべき課題」についての私見として以下の点を挙げている。

▽かかりつけ医は患者が選ぶものという視点の明確化(「報告制度」についての規定にとどまっていて、患者の選択の保障・支援に関する制度整備が不十分)
▽かかりつけ医機能の定義(医療提供以外のさまざまな機能の明確化・規定整備
▽かかりつけ医機能(報告)の対象が「慢性疾患を有する者(=高齢者)」に限定されている(かかりつけ医機能は健康な現役世代にとっても重要)
▽患者国民のニーズ(=かかりつけ医が果たすべき機能役割)」を踏まえて考える
▽かかりつけ医機能は医療機関の連携・ネットワークで実装するという視点の明確化
▽情報連携・PHR等医療情報基盤の整備促進

▼グループ診療前提、病院の参画も」
また香取氏は、イギリスの医療提供体制NHSにおける診療所(GP)についても紹介し、
「今やイギリスのGPの主力はグループ診療。全体の6~7割は福祉医の医師がいる」
「病院勤務医や開業専門医との兼業も多い」
「そもそもGPの登録は診療所単位で、個人医師単位ではない」
「GP診療所の医師は担当する患者の医療情報は全て閲覧できる」
といった特徴を挙げた。同氏は介護保険制度の立ち上げで主導的な役割を果たすなど、厚労省OBのなかでもその発言に対する注目度は高いだけに、今回の「問題提起」も含め、発言内容には注目する必要があるだろう。

9月29日の社会保障審議会医療部会では、「地域によって開業医が少なく、医療資源が乏しいため、病院の医師がかかりつけ医機能も果たし、紹介先がない地域もある。病院の医師がかかりつけ医機能を発揮することが必要な場面もあることを念頭に置くべき」といった意見も聞かれた。「かかりつけ医機能」の具体的な担い手についての議論も出てきそうだ。

ひとこと:診療報酬改定実施時期後ろ倒しについて

「診療報酬改定DXの目的である医療機関の負担の極小化を実現するためには、単に実施時期を後ろ倒しにすることだけでは十分でなく、同時に、医療機関の負担軽減や効率化のためのほかの取組も必要となります。例えば医療機関の費用負担軽減のためには、後ろ倒しで最も大きな恩恵を受ける電子カルテやレセコンのベンダーが保守費用やリース料などを大幅に引き下げるなど、目に見える形で確実に医療機関に還元する必要があります。この実現を担保する具体的な仕組みをつくるべきであります。」
長島公之
日本医師会常任理事
~2023年8月2日 中央社会保険医療協議会総会

今週の数字:1万3866カ所

2022年度時点での訪問看護事業所・医療機関数。直近5年で1.4倍の伸びを示している。介護保険を算定する病院・診療所は減少傾向である法人種別では、医療法人と営利法人が多く、営利法人の事業所の増加が著しい。(出典:10月20日中央社会保険医療協議会総会資料「在宅(その3)」)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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