社会保障短信(10月10日号)

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トピックス…訪問診療や往診の評価について踏み込んだ議論
ひとこと… FIM利得について
今週の数字…7.4万円

トピックス:訪問診療や往診の評価について踏み込んだ議論

▼6つの論点で議論
中央社会保険医療協議会総会では、10月4日の会合で「在宅(その2)」の議論が交わされた。訪問診療のあり方や往診、24時間の医療提供体制確保など、より具体的な内容に踏み込んだ。

論点として示されたのは
▽患者の特性に応じた訪問診療の提供
▽往診
▽在宅医療における24時間の医療提供体制の確保
▽在宅における緩和ケア
▽在宅における看取り
▽訪問栄養指導
――の6つ。

厚生労働省の報告も、在宅医療が広がりつつあるなか、対象となる患者像、取るべき診療体制も多様化している様子がうかがえる内容となった。

▼訪問診療患者の多様化が進む
「患者の特性に応じた訪問診療の提供」では、訪問診療を行っている患者の介護度、認知症高齢者の日常生活自立度の変化が指摘された。

資料によると在宅患者訪問診療料の算定回数が年々増加傾向にある一方で、訪問診療を行っている要介護4・5の患者割合は2012年度で59.4%だったのに対し、2022年度は42.9%と減少していた。
また、認知症高齢者の日常生活自立度がⅣ・Mの割合は、2012年度が26.7%だったのに対し、15.4%となっていた。

訪問診療を行う患者の介護度は、介護度が高いほど診療時間が長く、認知症高齢者の日常生活自立度についても、ⅣやMの患者はⅡやⅢの患者よりも長い傾向が見られた。ただ、訪問時間が最も長いのは「自立」の患者だったことも明らかになっている。

こうしたことを受けて、論点では「要介護度・認知症日常生活自立度の割合が変化していることや診療時間等の特性が異なることを踏まえて、包括的支援加算等の患者の特性に応じた訪問診療のあり方についてどのように考えるか」が示された。

▼往診加算の算定状況に踏み込んで議論
「往診」についての議論では、往診加算の算定状況について報告があり、緊急往診加算は2022年に特に増加している。
背景について厚労省は、「新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、往診等に関する診療報酬上の特例を設けていたため、算定回数が増加していることが考えられる」と分析している。

2015年と2020年の都道府県ごとの夜間往診加算・深夜往診加算・休日往診加算の算定状況についても報告している。

それによると、往診料の算定回数が1カ月で100以上という医療機関がある一方、往診料の算定回数に対し、在宅患者訪問診療料の算定回数が少ない医療機関も一定数存在するという。

また、往診料を月100回以上算定している医療機関における在宅患者訪問診療料と往診加算の算定回数を往診加算の併算定別に見ると、在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院が夜間・休日・深夜加算を併算定していることが多かったことも紹介している。

厚労省の論点提示では、こうした算定状況を踏まえた往診料の評価についての議論を求めたほか、「訪問診療を行っている患者に対する往診と、行っていない患者に対する往診の特性の違いを踏まえた往診料のあり方」もテーマに据えた。

▼栄養ケア・ステーションは進展途上
訪問栄養指導についても言及している。診療報酬で連携が評価されている栄養ケア・ステーションは2022年度で、全国の拠点数が110カ所、登録管理栄養士数は4,625人となっている。
ただ、訪問栄養食事指導に関する診療所との契約実績がある栄養ケア・ステーションの所在する都道府県は38.3%。日本栄養士会が実施した、都道府県栄養ケア・ステーションを対象にしたアンケート調査によると、課題として
「診療所からの相談そのものがほとんどない」
「医師へ依頼方法を説明するが、実際の契約に結びつかない」
が多かった。

ひとこと:FIM利得について

「FIMの測定に関しては相当の差が出ておりますので、やはり第三者機能評価というものを何らかの形で増やしていく必要があろうかと思います。ただ、全病院というわけにもいきませんので、そこはいろいろ工夫しながらということでよろしいかと思っております。」
猪口雄二
日本医師会副会長
~2023年9月6日 入院・外来医療等の調査・評価分科会

今週の数字:7.4万円

2023年時点での、全産業平均と介護分野の賃金差。前者が37.4万円であるのに対し、後者は30万円。2022年時点では6.8万円で、処遇改善施策が実施されたにもかかわらず、賃金差は拡大している。(出典:10月2日社会保障審議会介護給付費分科会資料「全国社会福祉法人経営者協議会ヒアリング」)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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