社会保障短信(9月19日号)

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トピックス…入院・外来分科会の「中間とりまとめ」案を提示
ひとこと…医師の働き方改革について
今週の数字…70.3%

トピックス:入院・外来分科会の「中間とりまとめ」案を提示

▼実態調査の概要と分科会での指摘を報告
9月14日の中央社会保険医療協議会 入院・外来医療等の調査・評価分科会で、これまでの検討状況についての結果の「中間とりまとめ」案が示された。
同分科会では「令和4年度入院・外来医療等における実態調査」の結果の分析、技術的課題に関する検討を行ってきた。今回の「中間とりまとめ」ではその内容の概要を記載しているほか、それを踏まえて構成員から出た指摘も紹介されている。

一般病棟入院基本料をはじめとする入院医療と外来医療、情報通信機器を用いた医療、身体拘束などの横断的個別事項などに分けてまとめられた。

▼創傷処置・呼吸ケアは詳しい分析が必要
まず重症度、医療・看護必要度のA・C項目に関する言及が見られた。

必要度Ⅰの施設のうち、急性期一般入院料1の400床未満、同入院料2の200床未満、同入院料5の200床未満の施設、必要度Ⅱのうち同入院料2の200床未満の施設で「創傷処置」「呼吸ケア」の項目の該当割合が上昇している。
これを受けて、A項目のうち、多くの入院料において2021~2022年にかけて上昇しているもののほか、「創傷処置」「呼吸ケア」について、該当する状況を詳しく分析すべきとの指摘が出たことが紹介されている。

またC項目の各手術等について、直近の時点における入院で実施される割合等を分析してはどうかとの指摘があったという。

▼急性期病棟でのB項目の扱いは議論分かれる
B項目にも触れている。B得点3点以上の割合は、同入院料1のうち平均在院日数の長い群や同入院料2・4で高い傾向にあることに触れ、同入院料1ではB項目以外の項目による評価を重視すべきとの指摘があったことに言及している。

この指摘は、機能分化の推進や同入院料1における高度/専門的な医療を評価するという観点に基づいたものだ。
一方で、急性期病棟におけるADLの低下した患者に対するケアの観点からは、B項目による評価が重要との指摘があったことにも触れている。

ハイケアユニット入院医療管理料における必要度に関する言及もあった。一般病棟ではなく治療室に入室が必要な重症度の高い患者に対する医療・介護を評価する観点から、特定集中治療室と同様に、B項目は不要との指摘を紹介した。
一方で、B項目の測定結果はADL等の改善状況を統一的な指標で把握するために有用で、B項目を必要度の基準から外す場合でも、特定集中治療室と同様に、測定自体は継続すべきとの指摘も併記している。

入院患者の多くを高齢患者が占めるようになっているなか、「患者に対するケア」の比重も高まっており、これをどう評価するかは、今後の議論の注目点の一つと言えるだろう。

▼高齢者救急で転院搬送の評価を求める指摘
高齢者救急に関する言及もあった。地域包括ケア病棟のような13対1看護体制の病棟では、高齢者救急の患者を十分に受け入れることが難しいとして、「どのような病棟による急性期の高齢者等の受け入れを推進すべきかの検討が必要」という指摘があったという。

さらに「まずは診断をつけることが重要である場合がある」ことから、第3次救急医療機関等での初期対応後の転院搬送や、転院搬送患者の受け入れを評価すべきとの指摘が出たことを紹介している。

地域包括ケア病棟に関する議論では、高齢者の急性期疾患は症状が不安定で医療資源投入量が多く、地域包括ケア病棟で受け入れることを推進する方策が必要との指摘があったという。
さらに、その推進にあたっては夜間も含めて手厚い看護は一が必要との指摘も聞かれたことに言及している。

▼かかりつけ医機能での医学管理の質評価
外来医療では、かかりつけ医機能に関する議論のなかで、特定疾患療養管理料に関する指摘を紹介した。

▽算定回数は多いが対象疾患が分かりにくく、見直しが必要
▽医療法改正に基づく書面交付を意識した対応を考える必要がある
▽高血圧、糖尿病、脂質異常症のいずれも、再診患者のかなり多くに外来管理加算や特定疾患療養管理料が算定されている一方、地域包括診療料、地域包括診療加算、生活習慣病管理料の算定は極めて少なく、医学管理の質の観点で、どのような診療報酬が相応しいのか考えることが必要

このあたりもかかりつけ医機能の具体的な評価につながるだけに、議論のなりゆきを見守る必要がありそうだ。

ひとこと:医師の働き方改革について

「ようやく時間外労働に一定の規制がかかるようになりましたが、一定の条件下では、過労死レベルの2倍を超えるところまで許容されるわけです。単に時短計画の策定にはとどまらず、労務管理や健康確保措置などの実効ある取組がきちんとなされているか、実態に合わない宿日直許可や自己研さんなどで見かけの労働時間が減らされていないか、ぜひ行政には目を光らせてのモニタリングをしていただきたいと思います。」
木戸道子
日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長
~2023年8月25日 第101回社会保障審議会医療部会

今週の数字:70.3%

2023年4~6月期において、医業利益が赤字だった病院の割合。前年同期よりも4.5ポイント増。医業収益と医業費用の比較では、費用の伸びが収益を上回っていた。(出典:日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会「医療機関経営状況調査」 2023年9月15日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)

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