社会保障短信(9月11日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…急性期におけるリハ・栄養の評価に議論及ぶ
◆ひとこと…「かかりつけ」の選び方について
◆今週の数字…5.1億円
トピックス:急性期におけるリハ・栄養の評価に議論及
▼入院医療の議論を継続
中央社会保険医療協議会入院・外来医療等の調査分科会は9月6日の第6回会合で、「急性期入院医療について(その3)」「回復期リハビリテーション病棟について(その1)」「慢性期入院医療について(その2)」を、厚生労働省の提示した論点に沿って議論した。
▼急性期のリハビリと栄養が議題に
急性期入院医療では、急性期におけるリハビリや栄養等の取り組みが取り上げられた。
「早期離床・リハビリテーション加算」「早期栄養介入管理加算」は、2022年度診療報酬改定で算定対象となる治療室が拡大したこともあり、届出数や算定件数が増えている。いずれの加算も、2021年と2022年の比較で、特定集中治療室で届出割合が増加したことが報告された。
一方、前者について届出をしていない理由としては、救命救急入院料算定病床では「経験を有する専任・常勤のPT・OTの確保」、その他の治療室では「経験を有し研修を修了した専任・常勤看護師の確保」が最多だった。
後者について届出をしていない理由としては、「当該治療室の入院患者10人に対し1人の管理栄養士の配置が困難」が最多となっている。
▼リハ職の充実と高齢患者の改善に相関
急性期一般入院料を届け出ている医療機関におけるリハビリ職の配置状況も報告している。同入院料1の医療機関では40床あたり2~3人が最多で、同入院料2~6を届け出ている医療機関では0人の施設が22.8%あった。また地域包括ケア病棟を届け出ている医療機関のほうが急性期一般入院料の医療機関よりリハビリ職の人数が多かったことも付け加えている。
また急性期入院料におけるリハビリ職の人数と65歳以上の入院患者に対するリハビリ実施率、ADL値を見比べたところ、リハビリ職が多いほうがリハビリ実施率は高く、ADL値のスコアの改善が大きかったことも伝えている。
急性期における休日リハビリの有効性も報告している。急性期の脳卒中患者、大腿骨頸部骨折患者、ICUの人工呼吸器患者に対して休日リハビリを実施した群と、そうでない群を比べたところ、退院時の機能的自立の割合、運動FIM効率、端座位達成率などで有意差が見られたとの調査結果を紹介している。
▼病棟の管理栄養士による栄養管理の効果
栄養介入については、
▽入院時に高齢患者の42%は低栄養リスクが指摘され、26%は低栄養
▽高齢入院患者の栄養状態不良と生命予後不良は関連が見られる
――とのデータを伝えた。
一方、管理栄養士の病棟配置による効果についての調査も紹介している。
それによると、管理栄養士が病棟には位置されているほうが、入院後、管理栄養士が患者を訪問するまでの日数が短く、入院期間の体重減少量および体重減少率が抑制されていた。
病棟配置されている管理栄養士による栄養管理としては、栄養状態の評価や計画作成、モニタリング、食事の個別対応はほぼ実施されており、一方、栄養情報提供書の作成やミールラウンドは他の項目に比べて実施割合が低かったことが伝えられている。
2022年度改定で、特定機能病院に限定して新設された入院栄養管理体制加算は、届出割合が38.9%。届出をしていない理由としては「専従の常勤管理栄養士を1名以上配置することが困難」が最も多かった。
リハビリ職、管理栄養士とも、「配置が困難」とのコメントが目立つが、人材不足というよりも経営的な費用対効果という観点からの難しさもありそうだ。病棟に常駐すれば、患者状態の改善に寄与することは明らかだが、常駐を可能にするだけの報酬を用意できるかとなると、話は別になる。
入院栄養管理体制加算の届出割合が示す意味をどう捉えて議論を進めるかも、今後の注目点と言える。
▼回リハでのFIM評価取り組み
回復期リハビリ病棟についての議論では、論点として
▽FIMの評価状況を踏まえがアウトカムの適切な評価、
▽リハビリ・口腔・栄養の取り組みや、退院前訪問指導等を踏まえた回復期リハビリ病棟入院料の評価、
▽身体的拘束の実施、
▽地域貢献活動
――などが挙がった。
第三者機能評価の認定を受けている医療機関は、認定を受けていない医療機関と比べて、FIMの適切な評価に関する取り組みを実施している割合が高いことなどが報告された。
▼同じ区分でも医療資源投下量にバラツキ
慢性期入院医療については、
▽医療区分の評価の精緻化、
▽医療区分1かつADL区分1の患者に多くリハビリが提供されていることを踏まえた、療養病棟におけるリハビリの評価
――が論点として挙がった。
厚労省が示した資料では、
▽医療区分に応じて医療資源投入量が増える、
▽同一の医療区分においても医療資源投入量にはバラツキがある、
▽医療区分によって医療資源投入量の内訳が変わる、
▽疾患・状態としての医療区分と、処置等としての医療区分は医療資源投入量の分布と内訳が異なる
――といった傾向が見られた。
ひとこと:「かかりつけ」の選び方について
「今のかかりつけ薬剤師指導料は、患者が選ぶかかりつけ薬剤師になっていないという問題がございます。薬剤師さんから「私をかかりつけに」や「同意してください」と言われて、結構精神的にプレッシャーを感じるという声も届いております。薬局も、これからは患者が選んでいく時代だと、対物業務から対人業務へと変わってきている中で、ぜひ患者側がそういった意識を持てるような方向性を考えていただきたいと思います。」
山口育子
ささえあい医療人権センターCOML理事長
~2023年8月25日 第101回社会保障審議会医療部会
今週の数字:5.1億円
診療報酬改定DX(施設基準の届出の電子化推進)に関する、2024年度概算要求額。新規の枠組みとなる。保険医療機関等による施設基準等の届出をオンラインで行うことができるよう、保険医療機関等管理システムの改修を行う。(出典:厚生労働省「第167回社会保障審議会医療保険部会令和6年度予算概算要求(保険局関係)参考資料」2023年9月7日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)