社会保障短信(9月4日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…24年度改定論議、第1ラウンドの「まとめ」提示
◆ひとこと…地域包括ケア病棟での救急対応について
◆今週の数字…46兆円
トピックス:24年度改定論議、第1ラウンドの「まとめ」提示
▼第1ラウンドでの「主な意見」紹介
8月30日の中央社会保険医療協議会総会では、4月から進められてきた2024年度診療報酬改定にむけた、いわゆる「第1ラウンド」議論についての「まとめ」が示された。議論はこれまで、厚生労働省が「現状と課題」「論点」を提示し、それに基づいて委員が意見を述べるかたちで行われており、今回、「主な意見」として紹介されている。
第2ラウンドは9月から始まり、12月のとりまとめにむけて議論を進める予定だ。
▼医療情報プラットフォーム活用の支援が焦点に
このうち医療DXについての議論では、医療情報プラットフォームについて
▽多くの医師・医療機関が関わらなければ、メリットが最大化されないので、医療機関の連携のハブになりうるかかりつけ医は、情報の入力・登録をぜひお願いしたい
▽通常の診療業務におけるサポートなど、医療現場の負担軽減に資するような支援機能が重要
といった意見が紹介された。かかりつけ医は診療所の医師が担うことも想定されるが、その場合、医師事務作業補助者のようなスタッフはいないことも考えられる。
現場の医療従事者の負担増ばかりが目立つようではプラットフォームの浸透にも影響が出かねないだけに、どのような呼び水を用意するかも注目されそうだ。
▼高齢者救急への役割分担が俎上に
医療計画のうち、救急医療についての議論では「二・三次医療機関の役割分担」「高齢者救急への対応」についての意見が紹介されている。
▽三次救急医療機関が増加したこともあり、本来、二次救急医療機関で対応すべき患者も三次医療機関で対応されていることが課題ではないか
▽救急搬送される高齢患者については、誤嚥性肺炎や尿路感染症が迅速に治療され結果的に早期に回復する場合でも、発症の段階では重篤な疾患との判別が困難であるため、不必要に救急搬送されている場合が多いわけではないことに留意すべきではないか
▽高齢者救急においては、重篤度の判断が困難な場合もあり、高齢者ということだけで地域包括ケア病棟で救急搬送を受け入れるものとすべきではないのではないか
▼地ケア病棟での受入には医療側が反発
これらの意見は、入院に関する議論にも引き継がれており、次のような意見が出ている。
▽高齢者の救急搬送件数の増加への対応としては、二次救急に対する評価とともに、三次救急からの下り搬送を評価すべき
▽誤嚥性肺炎や尿路感染症の入院治療については、対応可能な地域包括ケア病棟における一層の対応が必要ではないか。ただし、地域包括ケア病棟は、看護配置が13対1であること等から、対応できる救急医療には限界があることも認識すべき
▽高齢者等の救急搬送を効果的に受け止めるためには、医療機関同士、医療機関と高齢者施設等の連携とともに、救急隊のトリアージによる適切な搬送先の選択が重要
高齢者救急は原則、二次救急医療機関で対応すべきとの方針は厚労省の第8次医療計画についての通知「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」で示されているが、地域の救急医療体制というテーマとも絡むだけに、診療報酬の議論だけでは済まないだろう。
ただ、意見にもあった下り搬送の評価のように、分担を後押しする仕組みについては第2ラウンドでも話題にのぼりそうだ。
一方、地域包括ケア病棟での高齢者救急受入については、恣意的な誘導策は、議論の場でも医療側からかなり反発が出ていたが、今回の意見紹介でもその一部が並んでいる。
この観点からも、下り搬送や「対応可能な地域包括ケア病棟」づくりの後押し論が出てくるかもしれない。
ひとこと:地域包括ケア病棟での救急対応について
「高齢者救急等は地ケア等で受けるべきということがありましたが、私は高齢者の救急とひとくくりにするのは非常に危険だと思います。高齢者救急でも、緊急に手術をしてちゃんと治して帰せる疾患もいっぱいあるわけですので、そこに対して全てを地域包括ケアで受けることは不可能であるし、やはり二次救急が中心になる病態も幾つもあります。ここをあまり限定的にやっていくと、大きなミスマッチを起こす可能性が非常に高いのではないかと思います。」
池端幸彦
日本慢性期医療協会副会長
~2023年7月5日 中央社会保険医療協議会総会
今週の数字:46兆円
2022年度の医療費。前年度に比べて約1.8兆円の増加となった。内訳を診療種類別にみると、入院18.1兆円(構成割合39.4%、伸び率2.9%)、入院外16.2兆円(35.3%、6.3%)、歯科3.2兆円(7.0%、2.6%)、調剤 7.9 兆円(17.1%、1.7%)となっている。(出典:厚生労働省「令和4年度 医療費の動向」2023年9月1日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)