社会保障短信(8月21日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…高齢者の急性期入院医療、「軽症・中等症」が議論に
◆ひとこと…電子処方箋の進展について
◆今週の数字…576件
トピックス:高齢者の急性期入院医療、「軽症・中等症」が議論に
▼急性期入院医療の議論を深掘り
中央社会保険医療協議会入院・外来医療等の調査・評価分科会の第5回会合が8月10日に開催され、「急性期入院医療について(その2)」が議題の一つに挙がった。前回の議論で委員から出た項目についての確認と、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の現状が報告されている。
▼急性期充実体制加算の届出と実態を報告
前回までの議論で委員から、急性期充実体制加算の届出状況について、
▽都道府県別の状況
▽人口あたりの医療機関数
▽実績要件に関する病床規模別の状況
――などの確認が求められていた。
都道府県別の状況については、急性期一般入院料1・急性期充実体制加算・総合入院体制加算の届出の様子が報告されている。
それによると、急性期一般入院料1+特定機能病院入院料に占める急性期充実体制加算・総合入院体制加算・特定機能病院入院基本料の届出割合が70%前後に達しているのは、岩手、山形、鳥取、沖縄などだった。これらの地域は「7対1体制の病院=地域の中核的役割を果たしている病院」という構図が進んでいるとも言えそうだ。
なお、300床未満で急性期充実体制加算を届け出ている医療機関は、2023年4月時点で6施設で、東京、神奈川、大阪、福岡、大分に所在している。
また、施設の所在する二次医療圏には、1つの二次医療圏を除いてすべて特定機能病院が存在していたという。
このあたりは地域医療構想調整会議の俎上に上りそうだ。
▼誤嚥性肺炎や尿路感染症の必要度を分析
一般病棟用の重症度、医療・看護必要度に関する議論では、75歳以上の患者で多い疾患のうち、特に誤嚥性肺炎や尿路感染症などへの対応状況が報告され、主に次の点が挙がった。
▽一般病棟に入院する75歳以上の患者で多い疾患のうち、急性期一般入院料1の場合と地域一般入院料の場合とで、医療資源投入量の差が小さかった
▽重症度、医療・看護必要度の該当患者割合は、急性期一般入院料の施設基準以上の高さだった
▽基準2(A得点3点以上)を満たさない場合に基準1(A得点2点以上およびB得点3点以上)を満たす割合が全疾患の平均より高かった
▽重症度、医療・看護必要度の該当患者割合は、入院6日目の下がり幅が全疾患の平均よりも大きかった
▽項目としては全疾患の平均と比べて「専門的な治療・処置」の該当割合が低く、「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」の該当割合が高かった
▽急性期一般入院料1における必要度A項目の該当割合についての他の入院料との比較では、全疾患では「専門的な治療」と「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」の該当割合は高かったが、
①誤嚥性肺炎は「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」以外は同入院料2~3と大きく変わらなかった
②尿路感染症は「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」以外は他の入院料よりも低かった
▼「軽症・中等症」への対応が焦点に
こうした状況を踏まえて、次のテーマが論点として提示された。
「高齢者の軽症・中等症の救急搬送が増加するなかで、特に急性期病棟における集中的な急性期医療を必要とする患者への対応に対する適切な評価および機能分化の推進の観点から、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度についてどのように考えるか」
ただ、「軽症・中等症」か重症かといった判断は、十分な医療提供設備の整った二次救急病院以上の施設でなければ難しいとの指摘が医療関係者側からは挙がっている。
今回の報告では「『専門的な治療・処置』の該当割合が低く、『救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態』の該当割合が高かった」との内容が示されたが、このあたりをどう解釈し、評価に落とし込んでいくか。
今後の議論に注目が集まりそうだ。
ひとこと:電子処方箋の進展について
「まだ対応する施設と非対応施設というのが混在しているような状況でございますので、具体的に、患者にどこが電子処方箋に対応しているのかという説明をすることが、医療機関側で必要になってくるとか、それからオンライン資格確認、マイナ保険証の使い方、電子処方箋の使い方についての質問、こういったところが受付で発生していて、現場の負担になっているというお話もございます」
伊藤健
厚生労働省大臣官房総務課企画官(医薬・生活衛生局併任)兼電子処方箋サービス推進室長
~2023年4月26日 中央社会保険医療協議会総会
今週の数字:576件
2022年度病床機能報告における、第二次救急医療機関の救急搬送受入件数中央値。全体の36%の救急搬送受け入れ件数が1000件以上である一方で、46%は500件未満であった。(出典:中央社会保険医療協議会入院・外来医療等の調査・評価分科会 2023年8月10日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)