社会保障短信(3月20日号)
医療・介護福祉など社会保障関連の情報をお届けします。
◆トピックス…地域医療構想に向けて「通知」発出を予定
◆ひとこと…必要度の厳格化について
◆今週の数字…64病院
トピックス:地域医療構想に向けて「通知」発出を予定
▼「進捗調査」「進め方案」を提示
「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」は3月13日、地域医療構想の推進に関する議論を進めた。
このなかで厚生労働省は、「PDCAサイクルを通じた地域医療構想の推進に関する進捗状況調査の報告」「2025年に向けた地域医療構想の進め方(案)」を示している。
2023年3月31日付けの厚労省医政局地域医療計画課長通知「地域医療構想の進め方について」では、
①年度目標の設定
②地域医療構想の進捗状況の検証
③検証を踏まえて行う必要な対応
――のサイクルを通じて地域医療構想を推進することとすると述べている。今回の報告と「進め方案」もそれに基づいたもの。
▼大半が報告病床数と必要病床数に「差異」
「進捗状況調査の報告」は、2023年12月に実施した調査内容を伝えている。
それによると、2025年における病床機能報告上の病床数と地域医療構想で推計した病床数の必要量との差異の状況について、全国341の構想区域のうち、差異があると答えたのは339区域で、うち「解析している区域」は147区域、「解析していない区域」は192区域だった。
解析している区域のうち、要因別に見ると、
(a)病床機能報告が病棟単位であることに起因する差異
(b)定量的基準の導入により説明できる差異
(c)その他の要因により説明できる差異
(a)~(c)で説明できない差異
――があったという。
このうち(b)では、急性期病棟のうち、50祥あたり「手術+救急入院>1日2件」を目安にし、それを満たさない病棟を回復期に計上、急性期一般入院料4~6や地域包括ケア病棟入院料の算定病棟を回復期に計上するといったことがあったという。
▼課題は「救急医療体制の確保」
また「医療提供体制上課題がある区域」も339区域で、個別の課題を回答の多い順に見ると、
「救急医療体制の確保」(293区域)
「医師以外の医療従事者の確保」(291区域)
「医師の確保」(288区域)
などとなっている。
課題解決のために予定している取組としては、「地域医療構想調整会議における協議」「データ分析」「構想区域の関係者の勉強会等」などが挙がっていた。
▼3月中に取り組み事項の通知
「進め方案」については、3月中を目途に通知を発出し、2025年に向けて各年度に国、都道府県、医療機関が取り組む事項を明確化するとともに、国による積極的な支援を実施するという案を示した。
取り組む事項の明確化では、国が各都道府県に推進区域1~2カ所を設定、そのうちの全国10~20カ所をモデル推進区域とするという。具体的な設定方法などは通知によって示される予定。
国による積極的な支援は次の6つが示されている。
①地域別の病床機能等の見える化
②都道府県の取り組みの好事例の周知
③医療機関の機能転換・再編等の好事例の周知
④基金等の支援策の周知
⑤都道府県等の取り組みのチェックリスト作成
⑥モデル推進区域におけるアウトリーチの伴走支援
2015年から始まった「地域医療構想」と、それに基づく調整会議だが、進捗状況は地域によってかなりバラつきがある。また調整会議で決まった内容が首長の一存で覆ることもあるといった指摘も聞かれる。
国はさまざまな支援策を打ち出しているが、実効性を高めるにはさまざまな角度からの取り組みが求められそうだ。
ひとこと:必要度の厳格化について
「今回、改定の中医協議論において、私は何度も病棟における人的資源の投入量に関しての分析を求めてきましたが、結局、資料は提出されることはなく、議論に至りませんでした。現場が求めている病棟運営を維持する診療報酬上の仕組みが全く検討されないまま、入院基本料に直結する重症度、医療・看護必要度の厳格化が進められようとしています。この見直しにより、地域の医療現場では、求められる医療提供を継続できない病院も出てくることを強く危惧いたします」
太田圭洋
日本医療法人協会副会長
~2024年1月31日 中央社会保険医療協議会 総会
今週の数字:64病院
DPC支払い方式下、基礎係数と機能評価係数Ⅱの見直した場合のシミュレーションで、「月あたりデータ数90」を下回るとされた病院数。(出典:中央社会保険医療協議会総会第575回「入院料(その9)」12月22日)
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)