制度と経営に強くなる!
地域課題解決の事例を元に
介護事業経営の「未来」を考えるPart.2
介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授
全国の福祉事業者の取り組みから“気付き” “学び”を得る
私は仕事柄、年間200日以上、北海道から沖縄まで全国各地にお邪魔し、高齢・障がい問わず、さまざまな福祉経営者の方々とお仕事をさせていただいています。
主には「(新規)事業」や「組織づくり」「人財づくり」を中心に、未来志向に基づいた意見交換、およびそこから生まれる取り組みのご支援を行っているのですが、介護保険事業を基盤としつつも“地域課題”に寄り添い、そこから未来をつくり出そうとされている前向きな経営者の姿を現地で実際に見聞きさせていただくと、「これからの福祉事業者が担うべき新たな役割」、そしてそこから生まれる「未来・次世代における福祉経営の可能性」について明るい気持ちになるとともに、「このような取り組みがもっと全国で知られるようになればどんなに素晴らしいだろう(≒未来を見据える経営者にとって大きな“ヒント”や“エネルギー”になるのでは?)」と痛感することが多々あります。
そのような活動・想いのなかから、弊社が全国で主催している福祉経営者コミュニティ“ケアビジネス研究会”のなかで主に発信・流通している情報の一部を、前号に引き続き抜粋してご紹介します。
今回は、東北地区の福祉事業者(C社・O社長)が取り組む“生産性へのこだわり”についてです。
経営者の使命として“生産性向上”に注力
「原田さん、私は経営者として常に“生産性向上”にこだわり続けなければならないと自らに発破をかけ続けています」
「その前提のもと、では、何をもって“生産性が向上した”と言えるのか? ということを明確に定義する必要があるわけですが、私にとっての“生産性向上”とは、今、盛んに言われているDX化などによる“業務効率化”や“業務工数削減”ではありません」
「もちろん、それらが不要だなんてまったく思っていないですし、それはそれでとても重要なテーマであることは十分認識していますが、それらはあくまで、現場の運営メンバーが中心になって取り組むべき“生産性向上”ではないでしょうか」
「では、経営者である私の“生産性向上”とはいったい何か? それは、シンプルに“利益(率)を上げる”こと、ただその一点だけだと思っています。それこそが“運営”ではなく“経営”の役割を担う私の役割であり、存在意義だと思います」
そのように歯切れよく断言するO社長。O社長が経営するデイサービスでは、確たるリハビリ理論を根拠にしつつ、それらの理論に基づくオペレーションや教育体制を“仕組み”に落とし込むことで、現在では未経験人材でも数カ月経てば“リハビリトレーナー”として一定の価値を創出できるようになる状態ができ上がっています。
数年かけて改善を重ね、そのようなモデルを組み上げたO社長ですが、その結果、今では「稼働率が8割程度でも、営業利益として2割5分前後は確保できる」利益体質になっているそうです。
利益を上げることにこだわる理由とは?
そんな、経営者としての使命を果たすべく努力を続けるO社長ですが、とはいえ、失礼ながら、決して“私利私欲”のために利益に真剣になっているようにも見えません。その点についてさらに突っ込んで話をうかがい、その“こだわり”の源泉を確認するなか、あらためて「本当に素晴らしい経営者だな」とリスペクトを覚える言葉をいただいた次第です。
「私が利益額や利益率にこだわる理由ですか? いくつかありますが、一番の理由は“職員の給与を上げることができる経営を行いたいから”です.
うちは、職員が約70人程度の地域密着型企業ですが、昨年に比べて人数がほぼ変わらないなか、今年は人件費総額をなんとか2,000万円以上増額することができました。会社全体としても利益を上げ、職員にもしっかりと還元する。
もちろん、ただ単に上げるのではなく、キチンと会社の状況や成果を説明することも併せて行います。『皆が頑張っていい介護サービスを提供してくれた結果、これだけのお客様に通っていただくことができ、結果として、これだけの利益アップを実現することができた』『だからこそ、これだけの給料アップができるようになった』……。それらを透明に説明することで、職員はさらに『よし、もっと頑張ろう!』とやる気を高めてくれます。
そのような状態を維持し続けるためには、経営者である私が“利益”を出すことにど真ん中から向き合い、挑戦し続けなければならないと思っているんです」
「ただ、今後、さらに利益(率)を向上させていくためには、今の延長線上の事業のあり方だけでは、“不可能”とまではいいませんが、恐らく限界がくるかもしれません」
「そのために、次なる打ち手として考えていることがありますので、ぜひ、原田さんの知識・経験から、いろいろアドバイスをお願いできればと思っています」
腰を据えて“現在”と“未来”を見据える“逸財”に出会い、ますますこれからの我々の業界の可能性に想いをはせた、そんなO社長との一時でした。(『地域介護経営 介護ビジョン』2025年3月号)
C-MAS全国顧問
株式会社ケアビジネスパートナーズ代表取締役
はらだ・ただし●1970年生まれ。福祉、介護特化型コンサルタントとしてさまざまなノウハウを開発、発信し、全国で福祉経営者向けセミナー・研修等を実施。「他業界の経営支援で培った知見」「自らのデイサービスでの実体験」「福祉業界の経営支援で培った知見」を融合させながら、「ケアビジネス研究会」を基軸とした実戦的な経営支援活動を行っている
株式会社ケアビジネスパートナーズ | ||
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