制度と経営に強くなる!
地域課題解決の事例を元に
介護事業経営の「未来」を考える
介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授
全国の福祉事業者の取り組みから“気づき”“学び”を得る
私は仕事柄、年間200日以上、北海道から沖縄まで全国各地にお邪魔し、高齢・障がいを問わずさまざまな福祉経営者の方々とお仕事をさせていただいています。
主には「(新規)事業」や「組織づくり」「人財づくり」を中心に、未来志向に基づいた意見交換やそこから生まれる取り組みの支援を行っているのですが、介護保険事業を基盤としつつも“地域課題”に寄り添い、そこから未来をつくり出そうとされている前向きな経営者の姿を現地で実際に見聞きさせていただくと、「これからの福祉事業者が担うべき新たな役割」、そしてそこから生まれる「未来・次世代における福祉経営の可能性」について明るい気持ちになるとともに、「このような取り組みがもっと全国で知られるようになればどんなに素晴らしいだろう(≒未来を見据える経営者にとって大きな“ヒント”や“エネルギー”になるのでは?)」と痛感することが多々あります。
そのような活動・想いのなかから、弊社が全国で主催している福祉経営者コミュニティ“ケアビジネス研究会”のなかで主に発信・流通している情報の一部を、本号では抜粋して紹介します。
今回は、四国地区の福祉事業者(A社・S社長)が取り組む“防災リハビリ@”という新たな切り口の事業についてです。
高齢者を安全に避難させる防災リハビリ@とは
A社が拠点を置くまちは四国の太平洋に面していて、いわゆる“南海トラフ地震”発生時には大きな津波被害が想定される沿岸地区を含んでいます。最大クラスの巨大な地震・津波(L2)、発生頻度の高い地震・津波(L1)の地震動による最大震度はともに「震度7」と想定され、海岸線地区での最大津波高は「31m」(L2)、津波到達時間は早いところで十数分と想定されているそうです(同町地域防災計画からの抜粋)。
そのような環境下にあって、同地区から自社の通所介護施設に通われていた利用者の姿を思い出しながら、「今のままでは、災害発生時には確実に高齢者の多くが置いてきぼりになってしまう」という危機感を覚えたのが、S社長でした。そして、その想いから生まれたのが「防災リハビリ」という事業です。
「たとえば「大地震が発生したら、津波が来る前に速やかに避難所まで移動しましょう」と一言で言っても、そもそも、ご高齢の方々が自力でその避難所までたどりつくことができるのでしょうか?あるいは、大きな津波が押し寄せることが想定される地域では、堅牢な避難タワーが整備されているところがほとんどですが、仮に、避難タワー前まで自力でたどりつくことができたとしても、津波が押し寄せる時間内にたどりつくことができるのかどうか。加えて、自力で階上までたどりつくことができるのか。
また、別の視点から、高齢者の避難を助けるために、たとえば消防団の方々(高齢者ではない、地域の若手世代)が避難支援を行うことを想定した場合、その支援者の生命の危険性について、地域としてどう向き合えばいいのか。
そうした問題が横たわるなかで、「一人でも多くの高齢者を守るために、地域で活動し地域にお世話になってきた我々として何かお役に立てることがないだろうか」と真剣に考えたS社長は、①体力測定・データ分析およびそれらの向上推進(年2回計測)、②避難能力レベル(AからDまでの4段階)の測定・分析、およびそれらの向上推進(年1回計測)、③防災行動の習慣化管理(年2回計測)、④防災啓発のサポート(週1回実施)、⑤避難訓練の参加管理(年2回確認)一などを網羅した1年プログラムを企画し、推進されています。
また、④の取り組みでは、自社の通所介護施設から地域に飛び出し、同地区にある廃校となった小学校の教室を場所として借りたり、あるいは地域の高校生にもボランティアとして参加してもらう等の工夫も凝らしています。
地域課題のポイントは行政を“顧客”に見立てる
以上、紙幅の関係上取り組みのエッセンスのみの紹介にとどめさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
さまざまな切り口から“気づき”学びを得ることができる取り組みだと思いますが、仮に「(新規)事業づくり」という観点からの示唆を読み取るとすると、①“地域課題”と“福祉事業で培ったノウハウ(今回で言えばリハビリノウハウ)”を掛け合わせるという着眼点、②“地域資源の有効活用世代を越えた交流促進”等地域活性化視点の包含、そして何より、③ご利用者ではなく行政を“顧客”に見立てるという発想(=行政課題の解決、という価値を創出することで、推進予算を行政からいただく)――などが挙げられるかと思います。
皆様の地域でも、それぞれ地域課題があろうかと思います。ぜひ、今回の内容が皆様にとって何らかの“ヒント”や”エネルギー”になれば幸いです。(『地域介護経営 介護ビジョン』2025年2月号)
C-MAS全国顧問
株式会社ケアビジネスパートナーズ代表取締役
はらだ・ただし●1970年生まれ。福祉、介護特化型コンサルタントとしてさまざまなノウハウを開発、発信し、全国で福祉経営者向けセミナー・研修等を実施。「他業界の経営支援で培った知見」「自らのデイサービスでの実体験」「福祉業界の経営支援で培った知見」を融合させながら、「ケアビジネス研究会」を基軸とした実戦的な経営支援活動を行っている
株式会社ケアビジネスパートナーズ | ||
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