制度と経営に強くなる!
医療機関との連携が
これから生き残るキーワード

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

“W改定”の影響で医療連携を重視

令和6年度の介護報酬改定から半年が経過しました。今年度は診療報酬改定と重なったこともあり、医療連携が強い改定と感じた方も多くいらしたのではないかと思います。施設系サービスでもある特別養護老人ホーム(以下、特養)、介護老人保健施設(以下、老健)、有料老人ホーム(以下、有老)は、変更項目が他サービスと比べると多くありました。
そのなかでも今回の大きな特徴としては、要支援・要介護者の支援強化を目的として、協力医療機関連携加算や高齢者施設等感染対策向上加算が新設されたことです。加算を取得するためには、介護施設と医療機関との連携を強化し、関係を構築することが不可欠になります。感染症が流行ったこともあり、常日頃から看護師や提携医療機関と連携して利用者の定期的な健康チェックを実施したり、急な健康状態の悪化や事故が起きた場合に迅速な救急対応を行うためには、医療機関との緊急連絡体制を構築することが重要です。利用者の健康状態に応じて柔軟に医療機関と連携し、必要なケアを提供することが求められます。

今後は施設系も医療サービスとの連携準備を

今回の加算により、医療機関との連携でできることは、入所者の現病歴などを協力医療機関と情報共有することです。これにより利用者の病状の変化に迅速に対応し、適切な医療サービスを提供することができます。
ある特養では、医療機関と早急に提携書を締結し、迅速な対応ができるための委員会や仕組みを構築しています。高齢者や重度の利用者などは病状が急変しやすいことから、医療機関との連携は他施設との差別化につながり、それらの内容を地域社会に発信していくことも求められます。また医療機関との連携を強化することで、入院や退院の際の連携がスムーズになり、利用者や家族の負担軽減にもなるのです。退院後も医療機関と連携して支援を行うことで、その後の対応もスムーズになることが期待されます。

医療機関との関係構築のためには、さまざまな連携手段が必要です。ある老健では、定期的な連絡会や会議で医療機関と介護施設の関係者が定期的に集まり、情報交換や課題解決を行っているそうです。またその後、義務化されている研修を合同で実施し、報酬改定の論点から各自できる役割などをディスカッションしています。合同研修に医療機関と介護施設の職員が一緒に参加することで、相互理解を深めコミュニケーション強化を図る効果があります。他にもある有老では、医療機関の職員に施設を見学してもらっています。この取り組みは、施設の状況を理解してもらうことには最適で、情報交換ができる前の関係構築を日頃から実施していると言えます。
他にも、医療機関はじめ薬局と連携して体験型の健康セミナーや健康チェックフェアを開催している施設もあります。さまざまなテーマを設けて、簡単な予防体操を交えた体験型のセミナーや勉強会を行っています。健康チェックフェアでは、貧血チェック、お肌の水分測定、骨密度測定、歩行チェック、脳年齢チェックなどを行っています。

老健は大改定という結果に
しかし蓋を開けると……

「給付と負担の在り方」を巡って攻防が続いていた、老健と介護医療院における多床室料の自己負担化が現実となりました。また介護報酬単価を見たときに、老健の基本報酬は施設類型によって明暗が大きく分かれました。在宅強化型が4.2%のプラスに対して、その他型が0.86%、基本型が0.85%と大きく差が開いたかたちです。こうした改定となった原因は、その他型や基本型は実質の長期滞在型の老健となっており、「病院と居宅の中間施設」という老健本来の役割を果たしていないという評価だったからです。
今回の報酬改定で、長期滞在型老健の経営モデルは破綻したと考えるべきです。そうした施設は短期から中期ビジョンのなかで、まずは加算型への転換を早急に検討すべきです。今まで長期滞在型の老健が経営維持をできていた理由は、多床室型の老健には特養との実質的な支払金額の差が少なかったため。サービス付き高齢者住宅や有老が進出してきた影響もあり、特養の待機者が減少して空床も生じている今、利用者の移動が起こることが想定されます。今一度、それぞれのサービス機能を既存顧客はじめ地域社会に伝え、納得してもらう機会をつくらないといけないと考えられます。

次の改定にも備えレベルアップが求められる

今後、介護施設と医療機関が連携し、地域全体で高齢者や要介護者を支える体制を築いていくことが求められます。職員にとっては医療機関との連携を通じて、最新の医療知識や技術を学ぶことが必要になっていきます。これは職員のスキルアップ、もっと言えば現状で満足することなくレベルアップすることが求められるのです。
また人材不足の昨今、限られた介護人材を有効に活用し生産性を向上させるためには、より介護現場におけるタスクシフトを推進していくことに加え、ICT機器を活用し「人員配置の効率化」を進めていくことも必須です。今や「介護は介護」といった偏った考えではなく、柔軟に時代についていける経営や運営が重要であり、これによって地域から必要とされる施設になるのではないかと考えます。(『地域介護経営 介護ビジョン』2024年12月号)

山村 樹
一般社団法人
Future Grip研究所 CEO
Educarealize Group 経営戦略室長
小濱介護経営事務所
チーフコンサルタント
全国介護事業者連盟栃木県支部
事務局長

やまむら・いつき●大学卒業後、全国700件介護福祉施設を行脚し、一貫して介護福祉に特化した経営コンサルティングを展開。支援実績180件。現在は、栃木県宇都宮市にて事業展開している、Educarealize Groupの後継者としても活動しながら、業界初の次世代コミュニティ支援サービス「エフジーラボ」を開発。その他かかわった介護福祉施設に対して「地域一番の施設に」「うまくいっている時こそ積極的に次の仕掛けを!」を合言葉に顧客のことばかりを考える日々を送っている

◆介護事業に特化した経営・税務の専門家集団

C-MAS介護事業経営研究会
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