制度と経営に強くなる!
新たに始まる処遇改善加算
要件や特徴を総ざらい

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

事業所の状況に対応できる新たな区分も設ける

いよいよ6月から介護職員等処遇改善加算が、これまでの3加算と今年2月から始まった介護職員等処遇改善支援補助金を統合し、加算率も引き上げたうえで一本化されます。
改正後は原則I~IVの区分から選び算定することとなりますが、2024年度については要件の違いに対応できるよう、これまでの取得状況に基づく加算率を維持しつつ、改正による加算率も享受できる加算Vも設けられます。2024年度中に新加算の要件を満たせるよう各事業所で対応できる猶予ができました。

新加算の要件としては、①介護職員の職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する「キャリアパス要件」、②介護職員の資質向上の目標や、研修機会の提供等または資格取得のための支援に関する具体的な計画を策定、その機会を確保する「キャリアパス要件II」、③経験または資格等に応じて昇給する仕組み、もしくは一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを整備する「キャリアパス要件III」、④経験・技能のある介護職員のうち1人以上は年収440万円以上とする「キャリアパス要件IV」、⑤介護福祉士等を一定割合以上配置する要件である加算を取得している「キャリアパス要件V」、⑥賃金以外の改善に取り組む「職場環境等要件」、⑦新加算IV相当の加算額の2分の1以上を月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる「月額賃金改善要件」、⑧現行のベースアップ等加算相当の3分の2以上の新たな月給の引き上げを行う「月額賃金改善要件II」――の組み合わせを選択することとなります。

これまでもいずれかの処遇改善加算を算定してきた事業所にとっては、これまでと同等の要件を満たせる加算区分とするのは容易かと思われますが、上位の加算区分を算定しようとする場合や、これから新たに処遇改善加算を算定する場合は、各要件を満たすための社内規程の整備や従業員への周知、教育に相当の労力がかかることが推察されます。
なお、⑦の月額賃金改善要件Iついては、2025年度から要件を満たせばよいこととなっています。

2年分の賃上げをどう処遇に反映するか

もう一つ事業所で考えなければならないことが、今回の改正では2024年度、2025年度の2年分の賃上げが措置されているということです。2024年度で+2.5%、2025年度で+2.0%のベースアップが実現できるように加算率が設定されています。そのため、2024年度に全額を賃上げに充当するか、2025年度分の賃上げ原資を繰り越すのかも各事業所で選択することとなっています。
今回の加算を活用し、どのように職員の処遇を上げていくのか、各事業所の裁量に任せられているところも大きなポイントです。

介護現場の生産性向上がより求められる

さらに職場環境等要件には6つの区分があり、新加算の区分I、IIを算定する場合は6つの区分ごとにそれぞれ2つ以上(「生産性向上のための取組」は3つ以上)、区分III、IVを算定する場合は、6つの区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組むことが要件とされています(表は6つの区分の一部)。
2024年度中はそれぞれ経過措置により要件緩和があるものの、2025年度からは必須となり、特に生産性向上は他の項目よりも多く取り組みを求められています。

表 生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組

内 容

厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、外部の研修会の活用等)を行っている

現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している

5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている

業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている

介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入

介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)又はインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入

業務内容の明確化と役割分担を行い、介護職員がケアに集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)がある場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担うなど、直しやシフトの組み換え等を行う。

各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施

資料:厚生労働省老健局老人保健課「介護保険最新情報Vol.1215(令和6年3月15日)」より一部抜粋

介護業界に限らず人材不足は日本全国どの業種でも課題であり、人材は取り合いの時代です。介護現場では最低限の人員で稼働率を維持しようとすると、1人当たりの業務負担が増えます。少人数でも介護の質を落とさずに収益率を維持、向上させるためには、経営の観点からも生産性の向上が必須です。(『地域介護経営 介護ビジョン』2024年6月号)

山田孝弘
C-MAS札幌中央支部
星田会計事務所
メディケア事業部部長
やまだ・たかひろ●1982年、北海道札幌市生まれ。2009年、星田会計事務所入社。札幌市で医業経営支援、介護経営支援に注力しており、実地指導の支援も延べ50事業所を超える
星田会計事務所
●北海道札幌市中央区北1条西3-2-14井門札幌ビル10F TEL:011-233-5755
URL:www.hoshida-tac.com/
◆介護事業に特化した経営・税務の専門家集団

C-MAS介護事業経営研究会
Care-Management Advisory Service

▼お問い合わせ・ご相談はこちらから
介護事業経営研究会 本部事務局
●東京都豊島区東池袋1-32-7 大樹生命池袋ビル7F
株式会社 実務経営サービス 内
TEL:03-5928-1945    URL:c-mas.net

TAGS

検索上位タグ

RANKING

人気記事ランキング