制度と経営に強くなる!
人材不足対策の砦
多様な人材の活用

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

喫緊の課題「人材不足」解決の糸口は

介護人材の不足が深刻化しています。ある新聞では「介護が必要な人は2050年度に941万人に膨らみ、介護する人は4割も足りない」と報道され、介護需要が最大となる2040年の介護職の必要数280万人に対して2019年時点(211万人)で「69万人不足(年間3万2,857人の増加必要)」としています(図表1)。ところが、今の就業構造を前提にすると「6割程度しか確保できず不足する」と言われており、特に訪問事業では著しいのが現状です。

図表1 介護職員の必要数について

資料:厚生労働省報道発表資料(2021年7月9日)「別紙1第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」より

この人材不足を補うためには介護の担い手を増やすことが急務であり、その対策として「人手を増やす」こと、「介護現場の効率化」があります。後者は人工知能(AI)やロボット等のIT化推進による「介護ロボット」「ICTシステム」の利用によって介護現場を変えることで、主に在宅等で効果を挙げています。しかし、コストや運用面で課題もあり、長期的視点が望まれます。
一方、前者は「待ったなしの急務」であり、少子化時代を背景に「多様な人材の活用」が求められています。その代表例が「外国人介護人材(以下、外国人人材)」の活用です。

増加する外国人人材
種類や特徴を振り返る

外国人人材は、従来の「EPA(経済連携協定)」に加え、平成29年に「在留資格(留学生)」「技能実習生」に「介護」が追加されて、多くの技能実習生が現場に入っていきました。これらの制度の趣旨は「日本の技能を本国に技能移転」のため、「人材育成による国際協力が目的で、労働力と認めない」のが特徴でした。
そのため入り口のハードルは低い(入国後に研修)ですが、「介護報酬算定は研修後」「滞在期間3年」「実習先変更不可」等条件が厳しく、また「監理団体は非営利法人」等で問題もありました。
そこで平成31年に創設された「特定技能」では、「人材確保が困難な産業分野で、一定の専門性を有する外国人を労働力として受け入れる」と制度変更され、「介護施設(変更可)での就労通算5年間」「就労と同時に介護報酬算定可」と条件が緩和されました。その結果、対象職種12業種、受入国13カ国に拡大され、4年間で14万6,000人に急増しました。

特定技能1号は即戦力としてまず、本国で「日本語(N4レベル)」「介護」の研修を半年~10ヵ月間受けた後、日本に入国して研修を続けながら就労します。その「教育」「入国」「就労後支援」は、受け入れ施設の要請を受けて監理団体が一貫して行います。施設側も研修・入国費用の負担、就労後の生活指導・技能支援義務付け等ハードルは高いものの、育成環境が整備された大規模介護事業者を中心に増加し、戦力となっています。
コロナ禍の入国制限で技能実習生から特定技能に転身する者が増え、特定技能の入国は一時半減しましたが、また復活しつつあります。出身国(図表2)は、多数を占めた中国・ベトナムが自国の発展に伴って減少し、最近は「国策」として人材を送り出すフィリピン、インドネシア等が台頭し、注目されつつあります。

図表2 国籍・地域別特定技能在留外国人数

資料:出入国在留管理庁特定技能在留外国人数(2022年12月末現在)

外国人人材は日本語教育の成果もあってコミュニケーション力が高く、また母国で看護師等高等教育を受けた者が多いことから、「優秀で真面目」と評価が高いです。就労場所は今のところ介護施設等に限られ、訪問事業は認められていませんが、圧倒的に不足する在宅介護の担い手となれるかどうかが、今後の課題と言えます。

多様な人材活用は外国人人材のほかに、「介護助手」も定着しつつあります。しかし、いずれも病院の看護助手のような「報酬上の位置付け」はされていません。今後、「教育の充実」や「役割分担・業務確立」などのマネジメントが進めば、その可能性は出てき、それがさらなる活用につながっていきます。そしてこのような循環が、教育体制が未熟だった介護現場の「変化の一助」となることに期待したいものです。(『地域介護経営 介護ビジョン』2023年8月号)

富田一栄
富田一栄税理士事務所 代表
株式会社TARM 代表取締役
とみた・かずえ●2008年、東京都文京区で「富田一栄税理士事務所」として独立開業。同年「総務省地方公営企業経営アドバイザー(自治体病院経営アドバイザー)」に就任し、以来全国の自治体病院、介護施設の経営アドバイス実施および経営委員就任。中小病院や介護施設にて経営戦略策定、地域医療福祉連携強化等の経営管理支援、医師の働き方改革、病院の組織強化等の組織・人事マネジメントを進めている。主な著書「再生に挑む(ルネッサンス・アイ)」
富田一栄税理士事務所
●東京都文京区小石川3-27-16-502 TEL:03-6240-0019
URL:www.ka-TOMITA.com/zeimu.html
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