制度と経営に強くなる！
介護経営の事業規模拡大策と
スケールメリット

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

国が提言する介護事業の大規模化・協働化

厚生労働省は、深刻化していく少子高齢化社会への対応策として、社会保障費負担に悩む政府の意向を受け、介護福祉事業の大規模化による効率化を進めることで、介護報酬・障害福祉サービス報酬の負担を抑制することができると考えています。
図表1のとおり、2022年4月13日に発表された財務省からのデータでも「事業所の定員が大きくなるほど利益率が大きくなるビジネスモデルになっている」ことがわかります。そのことから、今後は小規模事業所の介護報酬引き下げも考えられるため、事業規模の拡大に向けて数を増やしていくことを検討していかなくてはならないでしょう。

図表1 業務の効率化と経営の大規模化・協働化について

資料：財務省財政制度等審議会財政制度分科会「資料1 社会保障」より

介護事業者の大規模化
そのメリットとは

大規模化するメリットとしては、小規模事業所と比較して人材の確保や事業者間での連携が行いやすくなることや、研修やキャリアパスの形成が行いやすいこと、規模の大きさを活かした効率的な運営が行えることが挙げられます。たとえば、複数事業所をもつ事業者は本部機能を設置し、今回のコロナ禍の運営に伴った情報収集、補助金の申請などができます。規模が大きければスタッフを配置することはもちろんのこと、一人で多くの業務を行わず、分割して業務を行うことで負担軽減にもつながることが期待できます。

しかし、事業所数を増やすことはすぐにできるものではありません。その一歩として、同業他法人との協働、協力関係の構築が考えられます。事業を行う際には、周囲の協力が必要不可欠です。地域の同業他法人や得意分野が異なる他法人と協力していくことで、大規模化と同じような効果を生み出せると思います。
図表1の「社会福祉法人1法人当たりの事業所数と平均収支差率の関係」のように、経営判断のスピードアップかつ実績をリアルタイムで見える化していくことが必要です。このデータを基に戦略を臨機応変に変動させ、集客(稼働率向上)と利益の最大化を実現しています。収集した情報を基に、稼動率の推移や入所・利用、キャンセル状況を即時にデータ化することで、経営判断に必要なデータをリアルタイムで確認できるなどのメリットが生まれます。まずは、自分たちの施設の現在地がどこなのか、可視化できる体制を整え、その後経営判断ができる場を定期的に設けて、将来に向けて次の戦略を検討していきましょう。

スケールメリット追求には人材育成の機会創出を

事業所増設や規模拡大となると、新しい役職者の採用や役職者を育成する必要があります。また事業の永続的な経営には、今後の次世代を見据えた役職者の育成も必要不可欠です。そして現在も全国の介護福祉事業者の経営者とお話する機会がありますが、そのなかの課題の一つが「次の経営者・役職者の育成」についてです。今一度法人として、経営者として、そして今後託したい内容を整理し、研修などを通じて伝える場をつくっていく必要があるでしょう。また人材不足だからこそ、外国人材の受け入れの検討、無資格未経験でも即戦力化できる教育プログラム、ナレッジ共有、事務体制の見直しが必要です(図表2)。

2023年にやるべきことはたくさんあります。今一度既存事業を振り返り、未来を見据えていきましょう。身近な信頼できる人や専門家に相談するのも一つの方法です。永続的に発展していくために、まずは行動に移しましょう。（『地域介護経営 介護ビジョン』2023年4月号）

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