制度と経営に強くなる!
ケアプランデータ連携システムによる
業務効率化と懸念事項

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

紙ベースでのやり取りで生じる手間をなくす

厚生労働省は、2023年度からケアプランデータ連携システム(以下:データ連携システム)をスタートすることを公表し、パンフレットを公開しました。
データ連携システムは従来から存在していましたが、居宅介護支援事業所が対応していても、担当事業所が対応していない場合には利用できないという根本的な問題があり、双方に導入されていてもソフトのベンダーが異なる場合、仕様の違いから連携ができませんでした。そのため、厚労省は標準仕様を公開してこの問題の修正を試みています。

現在、居宅介護支援事業所と担当事業所との間で、提供表などの書類のやりとりは紙ベースで行われています。担当事業所は提供月が終了した後に実績を記載し、さらに個人情報の流失を防ぐため、利用者名などをマジックなどで塗りつぶしてFAXで担当ケアマネジャーに提出することも多いようです。
こうした紙ベースでのやりとりにより生じている手間についても、データ連携システムによって効率的なやりとりが期待できます。

データ連携システムの問題として、誤送信やウイルス、サーバー乗っ取りなどで利用者の個人情報が外部に流出するセキュリティリスクが存在します。この点については、国保連合会に介護給付などのデータを電子請求受付システムで提出するときに登録し、利用している電子証明書を活用することや、情報送信時にデータを暗号化することで対応しています。

データ連携システムの導入で期待される業務効率化

このデータ連携システムを導入することで、紙で行われている提供票のやり取りをデータ連携システムで電子データ化し、介護給付管理ソフトに取り込むことで手入力の二度手間がなくなることや、移動時間の削減が実現できます。

毎月月初、ケアマネジャーの手元に、実績が記入された紙ベースの提供表が100枚近く戻され、これを給付管理ソフトに入力するだけで相当程度時間を要しますが、データ連携システムの導入により圧倒的な時間短縮につながることは間違いありません。
また、こうした業務効率化が実現されれば、ケアマネジャーの業務負担が減り、離職率の低下、残業時間減による人件費コストの抑制にもつながることが期待できます。

必ずしも業務効率化に寄与しないケースも

一方で、データ連携システムの導入にあたっては、いくつか懸念事項もあります。一つ目は電子データ化して介護給付管理ソフトに取り組む処理です。LIFE(科学的介護情報システム)における介護記録ソフトの状況を見ても、ソフトのベンダーによって対応のバラツキが想定されます。その場合、必ずしも業務の効率化に寄与しないケースも出てくる可能性はあります。

2つ目はシステムの利用料です。厚労省のパンフレットではシステム料金が別途必要になり、その料金設定は1事業所あたり年額2万1,000円(税込)です。この金額は、1法人あたりではなく、事業所番号ごとになります。たとえば1法人で訪問看護と予防訪問看護の許認可があると、2事業所の扱いで4万2,000円の新たなコストが発生します。事業所が多いほどシステム利用料が高くなり、このコスト面もネックとなる可能性があります。

そして3つ目は、ケアマネジャーの高齢化の問題です。全国の居宅介護支援事業所のケアマネジャーの平均年齢は50歳台であり、高齢のケアマネジャーが新しいシステムに対応しきれないというリスクも捨てきれません。

導入のタイミングを見極めつつICT化を

居宅介護支援事業所は2024年度介護報酬改定において、LIFEの位置づけが予定されています。そして、今回のデータ連携システムのスタートで、否応なく居宅介護支援事業所にもICT化の波が到来していることがわかります。
今後のICT化の流れを見極めつつ、適切な時期に導入を進めていくことが重要です。(『地域介護経営 介護ビジョン』2023年3月号)

資料:公益社団法人国民健康保険中央会「ケアプランデータ連携システムについてVer.2」より

安原 翼
税理士法人淡海総合会計
やすはら・つばさ●2016年、税理士法人淡海総合会計に入社。以来、介護保険事業者だけでなく社会福祉法人・公益法人・NPO法人・医療法人などの非営利法人を専門にサポートする部署に所属し、介護経営支援、医業経営支援に注力している。開業支援、税務相談、各種税務申告、社会保険関係支援、経営計画策定支援、助成金申請支援など、弁護士・司法書士・不動産鑑定士と連携し、幅広い支援業務を提供している
税理士法人淡海総合会計
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