制度と経営に強くなる!
2024年度介護保険法改正
審議の注目ポイント
介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授
2024年度介護保険法改正
介護報酬改定の流れ
新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢の影響により、経営努力とは別の外的要因で収入、支出ともに大きな影響を受けた事業者は多いのではないかと思います。
そのようななか、8月に介護保険部会で介護保険法改正についての審議が本格的にスタートしました。介護保険法および介護報酬については、例年どおりの流れに沿いますと、2022年12月中頃に改正論点の方向性が決まり、年内にとりまとめが行われます。その後、年が明けた1月からの通常国会で改正介護保険法案が提出審議されていくことになりますが、例年どおりであれば、2023年4月か5月頃に審議がなされ、同年の5月か6月頃に介護保険法案が可決され、成立していきます。
新たな介護保険法が成立した後は、介護給付費分科会において、新しい介護保険法に基づいた介護報酬についての審議がなされ、介護報酬改定についての内容が決まっていきます。
今回は、上記の制度改正のなかで、2024年度介護保険法改正審議の注目ポイントとして、①利用者負担の見直し、②ケアマネジメント利用者負担の導入、③軽度者へのサービスの地域支援事業への移行――について確認したいと思います。
①利用者負担の見直し
現在の利用者負担割合は原則1割であり、所得金額に応じて、一部の方が2割負担、さらに、ごく一部の方が3割負担ということになっています。自己負担割合が2割以上の方は介護保険利用者全体の20%程度であり、5人に1人の割合となっています。
今回の改定では、この自己負担2割以上の方を介護保険利用者全体の25%程度、4人に1人の割合とすること、つまり、介護保険利用者全体で自己負担2割以上の方の割合を増やすことがテーマとなっています。また、今回の制度改正というよりは将来的な制度改正になりますが、国の最終目標は今般の後期高齢者の医療保険の自己負担割合の見直しも踏まえ、現在の利用者の自己負担原則1割について、原則2割とすることが検討されています。
この利用者の自己負担原則2割というのは、いきなり介護保険利用者全体を対象とするのではなく、段階的に行うこととなっています。この段階的に行うというのは、現在の利用者負担割合を決める指標となっている現役世代並みの所得等の判断基準を見直す(基準となる所得を引き下げる)ことにより、徐々に自己負担2割となる介護保険利用者の対象範囲を拡大していくことになります。
利用者から見た場合、自己負担が増えるということは実際の支払いが2倍になるということですから、介護事業者はサービス内容についても、使いたいサービス、使わなくてはいけないサービスを適切に分けていなくては、そもそも、施設を利用しなくなるという可能性も生じてきます。そのため、この利用者負担の見直しについては、今回の制度改正の大きなポイントといえるでしょう。
②ケアマネジメント利用者負担の導入
居宅介護支援については、要介護者等が積極的にサービスを利用する観点から、利用者負担を取らないという例外的な取り扱いがなされてきました。しかし、介護保険制度創設から20年が経ってサービス利用が定着し、ほかのサービスでは利用者負担があることを踏まえ、利用者負担を導入する――という議論がされています。
利用者に対してケアプランの自己負担を求めることについては、「利用者が自己負担を通じてケアプランに関心をもつ仕組みとすることで、ケアマネジャーのサービスのチェックと質向上にもつながるため、ケアマネジメントに利用者負担を導入すべき」というのも根拠の一つです。こちらも、①と同様に利用者負担の増加となるため、今回の制度改正で組み込まれる場合は、大きな影響があるといえるでしょう。
③軽度者へのサービスの地域支援事業への移行
訪問介護、通所介護の利用者のうち、要介護1・2の方については、地域支援事業への移行が検討されています。訪問介護、通所介護については、要支援者に対する部分が2018年3月末に地域支援事業への移行がなされているため、今回の軽度者の地域支援事業への移行についても、大きな支障がなく対応できるという考えがあるからです。
一方で、各地域で軽度者を受け入れられるかという問題があり、通いの場を整備することで受け皿をつくろうとしていました。ですが、新型コロナウイルスの影響もあって、通いの場を活性化させることができなかったため、依然として受け皿問題の解決には至っておらず、今回の制度改正の論点とはなっているものの、見送られる可能性もあります。
ただし、この論点は3年前にも出てきている内容ですので、将来的に移行される可能性は高く、今回の議論もしっかりと認識しておく必要はあるといえます。
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今回議論されている内容のなかでも、今後の事業の運営について重要な影響を与える部分をピックアップしました。ですが、ほかにも議論はあるため、今一度、確認をしておきましょう。(『地域介護経営 介護ビジョン』2022年12月号)
とべ・つばさ●1987年生まれ。静岡県伊東市出身。2008年に公認会計士試験に合格後、監查法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)に就職し、国内企業や一部公益法人の監査業務に携わる。2012年より出身地域に貢献するという目標のため、株式会社イワサキ経営に転職し、中小企業や個人事業主への経営のサポートを行う。現在は介護事業者や社会福祉法人へのサポートに特化し、最新情報の提供を心掛けている。
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