制度と経営に強くなる!
「介護の日常化(社会インフラ化)」を先導する
新たなサービスモデル「ショッピングリハビリⓇ」

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

たんに“買い物をする”だけではない

私が「ショッピングリハビリ®」というサービスモデルを初めて知ったのは今から約5年前のこと。「これからの介護は施設・事業所内での、いわば“閉じた空間でのサービス提供”に終始するのでなく、顧客の生活圏域に根付いて展開されるべき」という想いを常々もっていた私としてはその言葉の響きに興味をもち、さっそくご紹介いただいた動画に目を通しました。
するとそこには、今まで見たこともない形状のショッピングカート(=ショッピングリハビリカンパニー株式会社が開発した楽々カート®)を用い、フレイル状態にある高齢者がスーパーマーケット内を自由に歩いて楽しそうに買い物をしている姿が。

「これは一体どんな仕組みなんだ?」

実際にこの目で見てみたい、そう感じた私はさっそく、同サービスの発案者である杉村卓哉氏(現・同社取締役)にアポイントを取り、島根へと向かいました。
実際に現場を拝見し、あらためて気付き・学びを得たポイントは大きく分けて以下の3点です。

ユニークポイント1:“買い物”はリハビリ要素の宝庫
1点目は、「買い物には心身機能を維持・向上できるリハビリ要素が数多く盛り込まれており、リハビリ視点で見れば、商業施設やスーパーはIADL(日常生活動作)訓練に最適な場と捉えることができる」という、作業療法的観点から見た特長です。お目当ての商品を探しながらスーパーマーケット内を歩くことで、“歩く”という行為を意識することなく、高齢者の方々は自然に約1~1.5km前後(歩数にして1,500~2,000歩ほど)の距離を歩いています。
また、歩くだけでなく商品を取るために自然と腕を上げる(=適度な運動)、商品を探すためにスーパーの店員に声をかける(=自然なコミュニケーション)、自分が買った商品のあらかたの合計金額を計算する、財布からお金を出す、お釣りを数える(=認知症予防)等々、“自然”かつ“無意識”のうちに心身機能の維持・向上につながる動きが、買い物には豊富に散りばめられていることに、あらためてハッとさせられた次第です。

ユニークポイント2:地域課題解決への貢献
2点目としては、“地域課題解決への貢献”。この点はさらに分けると大きく2つの視点・切り口があげられます。
まず1点目は、「買い物弱者問題への貢献」。少々古いデータですが、「近くに小売店がないことなどにより食料品の確保が難しい65歳以上の高齢者(=食料品アクセス困難人口=買い物弱者)」の人数が、2015年の時点でなんと全国で824万6,000人にまでも上っているそうです(農林水産省調べ)。
この数値、同年の高齢者全体の人数と比較するとおよそ「4人に1人(24.6%)」、75歳以上の人口に限ってみるとその割合はさらに高くなり、およそ「3人に1人(33.2%)」にまで上ります。その状況からしても「高齢者を車で送迎し、スーパーマーケットまでお連れする」という行為は、上記課題の解決に少なからず貢献している、と見ることができるでしょう。

そしてもう一つの視点・切り口は、「地域経済活性化に対する貢献」。“買い物弱者”として独力では足を運ぶことが難しくなってしまった方々をスーパーマーケットまでお連れするわけですから、地元のスーパー経営者からすれば、いわば“棚からぼた餅”的に売り上げが上がることになります。
加えて、これも興味深い傾向だと思うのですが、実際、この「ショッピングリハビリ®」に参加している高齢者は、一般の買い物客と比較しても1回あたりの買い物単価が総じて高い金額で推移している(=買い物ができることを楽しんでいる?)とのデータも挙がっています。

ユニークポイント3:事業の持続性の担保
最後、3点目として大変興味深いのは、同サービスは現在“デイサービス”としてサービス提供を行っている、ということです。総合事業の枠組みを活用することで、事業としての持続性を担保しながら本サービスを推進している。この点は特に経営者の皆様にとっては関心を覚えるところではないでしょうか。

以上、簡略ながら、「ショッピングリハビリ®」という事業について、その特長や可能性について触れさせていただきました。同社は全国の同じ志をもつ介護事業者と連携し、コロナ禍ながらも現在、全国で14カ所での事業展開を実現しています(2022年8月20日現在)。
この情報、未来を見据えて日々、活動されている皆様にも何らかの気付き・ヒントにつながればうれしいな、という想いのもと、本号の連載を終えさせていただきます。(『地域介護経営 介護ビジョン』2022年10月号)

原田匡
はらだ・ただし1970年生まれ。京都大学法学部卒業。日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科ビジネスマネジメントコース卒業。「他業界の経営支援で培った知見」「自らのデイサービスでの実体験」「福祉業界の経営支援で培った知見」を融合させながら、「ケアビジネス研究会」を基軸とした実戦的な経営支援活動を行っている。2011年から本格開始した福祉経営者向けセミナー・研修実施回数は累計1,359回に及ぶ(2021年12月末日現在)。著書としては「介護元気化プロジェクト(エル書「房)」「介護事業所の経営の極意と労務管理・労基署対策・助成金活用(日本法令)」。業界誌への寄稿も多数。福祉経営者経営幹部を中心に5,600名超の読者数を誇る無料メールマガジン「ケアビジネスSHINKA論」の編集責任者でもある
株式会社ケアビジネスパートナーズ
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