制度と経営に強くなる!
停電時の対応と
クラスター時のゾーニングが重要
介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授
常に最悪の想定をしてBCP策定に取り組む
自然災害におけるBCP策定では、まずはハザードマップから被害想定を検討していきます。地域により被害想定は異なります。最悪の状況を確認することで、今何をすべきなのか、何ができるのかを検討していきます。
洪水、地震、津波などに見舞われると、電気、ガス、水道が停止することが想定されます。ライフラインの停止時の対策を検討します。震度4程度から停電することが想定され、通常では数時間から3日程度で復旧します。しかし、2018年の北海道胆振東部地震では、胆振地区においてはブラックアウトが発生してから完全に復旧するまでに2週間かかったなどの事例があります。
介護施設などでは、医療行為を伴うことも多くあります。喀痰(かくたん)吸引器や人工呼吸器などは電力を必要とします。停電で医療行為が停止することは避けなければなりません。施設では自家発電機を備えています。しかし、半日程度しか通電を保てないという施設も多くあります。その現状を職員間で共有しておくことが大切です。
訓練時には発電機の操作方法や燃料の備蓄に関する情報の共有もしておきましょう。自家発電機の稼働継続時間が短ければ、代替手段の検討も必要です。小型の発電機や、蓄電機、車のバッテリーからインバーターを使っての充電など、さまざまなことを想定し、備えておきます。夏の暑さ、冬の寒さ対策として、エアコンが止まったときの検討も必要です。また、ガスが止まれば調理はできません。水道が止まればお風呂、トイレが使えません。さらに洗い物もできません。非常食や紙コップ、トイレの代替などの検討も必要となります。
感染症BCPではゾーニングが重要に
ゾーニングとはウイルスに汚染されている区域を区分けすることです。安全なケアの提供を保ち、二次感染、三次感染を防ぐために必要不可欠な業務です(図表)。
ウイルスに汚染されていない区域をグリーンゾーン、防護服などを外す場所をイエローゾーン、感染者が滞在する汚染区域をレッドゾーン――の3つに分類します。ゾーニングを検討する際は見取り図を用意して、図面上でのシミュレーションから始めます。実際に感染者が発生したことを想定し、動線を考えていきます。このゾーニングは施設、事業所により全て異なるので、ていねいに行いましょう。
感染者が出てクラスターが発生した場合には、速やかにゾーニングを行い、感染者は汚染区域であるレッドゾーンで生活をします。職員はできるだけグリーンゾーンで活動し、感染を防ぎ、レッドゾーンに入るときは、必ず防護具を着用します。
感染した利用者がトイレに行く際、汚染区域の外に出ないようにするため、トイレが汚染区域外の廊下にある場合には室内にポータブルトイレを設けましょう。職員が汚染区域から清潔な区域へ移動する際は、必ずイエローゾーンでウイルスをもち込まないように防護具などを外します。訓練やシミュレーションでは防護具の着脱法も再確認してください。
汚染区域はできるだけ狭い範囲で設定します。ただし、感染拡大やクラスターが発生した際は汚染区域が大きくなっていく点に注意を払ってください。
さらにクラスター発生時には、終息の目処が立たないことから職員の肉体的、精神的な疲労かさらに圧迫されます。休息や仮眠のときは、安全な区域での休息が必要不可欠です。メンタルケアの観点からも、清潔な区域の確保は重要になることを覚えておいてください。
図表 感染(疑い)例発生時の対応【ゾーニング】
全国の介護福祉BCPマスターの活用を
2022年度中には、BCPの策定を終える介護事業者が大部分といわれています。WAMの調査によりますと、8割の介護施設・事業者が2022年度中にBCPの策定を終了予定であると回答しています。
BCPについては、その作成期間が6カ月から1年を要するのが一般的です。まだ手掛けていない介護事業者の皆様においては、C-MASか養成する全国の介護福祉BCPマスターにお問い合せください。BCPの策定支援にご協力いたします。(『地域介護経営 介護ビジョン』2022年6月号)
顧問
こばやし・かおり●株式会社ベストワン代表取締役、一般社団法人コグニティブ・サポート代表理事。全国の介護保険施設、障害福祉施設にてBCP作成コンサルティングを手がけ、最大拠点120カ所を有する医療介護法人のBCP作成実績は稀有。セミナー講師としても活躍しており、BCP講座、感染症対策等をテーマに、介護施設の個別研修、個別指導を手がける。著書は「これならわかる<スッキリ図解>介護BCP(業務継続計画)」「コロナ時代の介護事業戦略」(以上、翔泳社)
株式会社ベストワン | ||
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●東京都台東区台東 1-14-10-801 | TEL:03-6284-4085 |
◆介護事業に特化した経営・税務の専門家集団
C-MAS介護事業経営研究会
Care-Management Advisory Service
介護事業者の経営改善をサポートする会計事務所(税理士・公認会計士)で組織する、全国的なネットワーク。介護現場を熟知したプロフェッショナルたちが、経営改善はもちろん、戦略立案や実務においても一歩踏み込んだコンサルティングを行っています。本部事務局にお問い合わせいただければ、ご相談内容のソリューションを得意とする、地域に根づいた専門家をご紹介します。また各支部では、経営に役立つセミナー等を開催しています。
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介護事業経営研究会 本部事務局
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