制度と経営に強くなる!
実地指導対策専門家から見た
「科学的介護(LIFE)」への警鐘

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

科学的介護とは?

世の中、「科学」が流行っている。「○○を科学する」「○○の科学化」など。
たとえば、心を科学する、価値の科学化など、「数字」に置き換えられないものをさまざまな条件をつけて、その因果性を導き出したり、繰り返し行えるような再現性をつくり出したりすることで、さらに万人が納得できる「コト」に仕上げようとする動きだ。ここでは「介護の科学化」という、ある意味「人間の生活感・老化・回復力」を数値化しようという、前代未聞の壮大な時代の幕開けの「入り口」に立っていると言える。

割に合わない加算への警鐘

介護事業者は、しばらく待っておくほうがいのか、それとも出遅れないようにすべきか――。LIFE入力で、各方面から「増えるばかりの業務と割に合わない加算」「入力できない項目が多すぎる」という声が聞こえている。まさに「加算取得して経営の安定化」に対する「残業増・過剰労働」という矛盾も起きている。LIFE入力で得られる加算は労力に比べると割に合わないほど低い。「加算は売上を上げるため」という概念を、これに限って言えば、捨ててもいいとさえ思う。

既知の事実ではあるが、LIFEの前にはVISITがあった。VISITは2018年からリハビリ系事業に付加された新しい加算であった。令和2年「通所・訪問リハビリテーションのデータ収集システムの活用に関する調査研究事業報告書(三菱総合研究所)」の資料「(6)インポート機能の活用状況別の利用者の情報をVISITに入力する負担」からも明らかなように、「VISIT入力の負担が大きい」や、「利用者1名入力に1~3時間」が全体の半分もあるという事実。VISITに替わったLIFEはまた同じ轍を踏もうとしているのか。国はVISITの反省をLIFEにどう活かすのか。またはまったく別の進化をめざそうとしているのか。この霧を晴らさないと、また事業所は離れていくだろう。

置き去りにされた?居宅介護支援事業所、訪問系、障害者総合支援事業

気になるのは、LIFEに置き去りにされている居宅介護支援事業所、訪問系、障害者総合支援事だ。特に、介護報酬改定の3つ目の柱では、「LIFEは全サービスで取り組むこと(居宅介護支援事業を除く)」と「除く」とはっきり書かれている。結局、ケアマネはLIFEにかかわらないという意味なのであろうか。ほっと胸をなで下ろすケアマネも多いだろう。しかし、実は、居宅介護支援事業版のLIFEは別の動きである「ICTを活用した次世代型保健医療システム」とともにブロジェクトとして進化しているのだ。じきに「ケアプランのAI化」や「ケアプラン作成の利用者負担」のゴールとともに居宅介護支援事業版のLIFEは完成するであろう。それが2024~2027年ですべて移行し、LIFEと連携されるというのがロードマップだ。無視はできない。

科学的介護の裏(楽屋)で行われていること

居宅介護支援事業の分析手法については、「ホワイトボックス型」と呼ばれる回帰分析が主に進められている。選択複数、または数値化された条件下に数値化された結果を導き出す手法だ。そのほか、補完する分析手法は、x二乗分析、t検定分散分析、ロジスティック回帰分析が採用されていると思われる。

ただ、現場にとっては分析手法がなんであろうが無用の情報であって、結局は「結果がどういう経緯で出てきたものなのか」が重要となる。また、追随するであろうLIFEの分析手法もあわせて、それをどうフィードバックするべきか。ただし、これは、敵(因果関係)を知ることで、血の通ったサービスにつなげていきたいものだ。

まずは、この言葉を大切にしておいていただきたい。
「統計解析においても、機械学習においても、データの数は多ければ多いほど、蓄積するほどにその精密度、正確性を高めていく」ということ。つまり、「失敗リスクが減り、成功へ近づける」ということだ。(『地域介護経営 介護ビジョン』2021年10月号)

西村栄一
にしむらえいいち●株式会社へルプス&カンパニー代表取締役、ISO9001審査員、大阪市立大学大学院都市経営研究科在籍。人材派遣や米国のウェディング衣装会社で勤務後2004年株式会社コムスンに入社。在宅現場から社内諸問題解決のための面談や外部クレーム処理、債権回収、行政対応強化を経てエリア責任者業務に従事。2010年に介護諸問題解決のため同社を設立。実地指導・監査対策専門のコンサルタントとして、900事業以上の実務的なリスク管理を行ってきた
株式会社ヘルプズ・アンド・カンパニー
●大阪府大阪市港区築港3-3-1-511 TEL:06-7173-2055
◆介護事業に特化した経営・税務の専門家集団

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