制度と経営に強くなる!
事故や不祥事発生時の
危機管理対応を考える
介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授
マスコミ報道とネット社会
企業などで事故や不祥事が起きた際、責任者の記者会見やマスコミ対応を見て、「これはひどいな……」「一体、何を考えているんだ……?」と感じたことはありませんか?
以前、ある報道番組で、サービス付き高齢者向け住宅の施設職員が利用者に暴言を吐いたり、身体をたたいたりする様子の動画が取り上げられていました。そして報道のトーンは施設の管理責任を追及するもので、番組のリポーターが通勤途中の施設のオーナーの車両に乗り込み、質問攻めにしていました。結果、矢継ぎ早の質問に施設のオーナーが感情的に怒ってしまい、声を荒らげる場面や職員の虐待を正当化していると受け止められる発言が、全国メディアで施設の実名入りで報道されていました。
事故や職員の不祥事などの危機が起きた場合、対応をミスすると、関係者をより怒らせ、時には訴訟などの法的措置につながってしまうこともあります。また、ネットによる情報拡散が速い現代社会では、「起こったこと(事実)は隠せない」「瞬時に情報は拡散する」という特徴があります。経営者・責任者としては、上記のような危機管理対応の失敗は、他山の石とすべきではないでしょうか。
介護事業所の危機管理
危機管理の多くの事例では、リスク発生後のメディア対応の失敗で「二次被害」としてダメージが劇的に拡大することがあります。特に、事故、虐待、職員の不祥事などが注目を浴びやすい介護事業所では、時に、危機発生後のメディア対応は重要となります。
先に挙げたケースでは、職員による利用者への虐待という不祥事に加えて、経営者の対応のまずさが挙げられます。
不祥事報道の特徴
危機が大きなときにはメディアが記者を送り込み、謝罪のための記者会見を開く必要に迫られることもあります。
このような報道の際には、下記を特に意識する必要があります。
①取材に答えた内容の一部しか掲載されないこと
②発言した内容がストレートに相手に受け入れられないことがあること
③記者が取材のストーリーをあらかじめ決め、自らのほしい印象、コメント、映像だけを目的に取材する場合があること(上記ケースでは、感情的で理不尽な責任者の対応、職員の管理ができていないひどい施設であるとの印象)
危機管理広報のポイント
事故や不祥事発生時の危機管理広報はそれだけで一つの専門領域ですが、重要な要素は、情報公開(主にメディア対応)のスピードと対策の適切性です。取材を受ける際のポイントとしては、以下となります。
①落ち着いて答える
②声のトーン、口調、大きさなどに気を付ける
③伝えるメッセージは、シンプルにメディアの向こう側にいる読者や視聴者の視点に立った表現であるかを意識する
④最初に重要なメッセージを伝えて強調する(「繰り返しになりますが、今後施設として~」)
⑤それぞれの質問を慎重に聞き取り、必要なときには質問を聞き返す
⑥不利なことや正確に知らない質問でも、平静さを失わず対応する
有事の際は専門家と連携を
介護事業所が事件や事故、または不祥事を起こしてしまった場合、地域での評判やダメージを最小限にとどめるため、危機管理広報対策(ダメージ・コントロール)が重要と言えます。事前に対応マニュアルを定めておくのはもちろんのこと、いざ発生した際に取材担当者への法的責任の説明、利用者やそのご家族への説明、謝罪対応、お見舞金や賠償金の支払いなど適切な対処を行うために、弁護士などの専門家と連携して、迅速に事態の収拾を図れるよう備えをしておくことが大切です。(『地域介護経営 介護ビジョン』2021年9月号)
たに・やすゆき●東京弁護士会所属。石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数
弁護士法人リーガルプラス 東京法律事務所 |
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