介護業界深読み・裏読み
保険料なお高騰…2040年に向け、
地域包括ケアを総点検せよ

介護業界に精通するジャーナリストが、日々のニュースの裏側を斬る!

第8期(2021年~2023年度)における介護保険の第1号保険料は、前回(第7期、5869円)から+2.5%となる6014円に及ぶことが明らかになった。この数字は、保険者ごとの保険料基準額(月額)を全国加重平均したもので、厚生労働省担当者は「介護給付費の伸びが想定より抑えられている。
高齢者の要介護認定率が低く留まっていることが大きい」としているというが、介護保険制度創設時(第1期)の2911円から2倍以上に膨らんだことになる。高齢化の進展とともに利用者負担は深刻化し、かねてから「6000円超えが一つの象徴」と言われてきたように、社会保障費の増加がなお最大の国家課題の一つであることは変わりない。
むしろ同資料で「2025年度の被保険者数およびサービス見込み量等をもとに機械的に算出した2025年度の保険料額(見込み)は6856円」とあるように、急激な上り坂が懸念されているのはこれからだ。

ここで注目されているのは、保険料基準額の地域間格差だ。今回の資料でも、最低額の北海道音威子府村、群馬県草津町の3300円と比べて、最高額となった東京都青ヶ島村では9800円と、6500円の開きが生じている。

この問題については、厚労省でも以前から重点的に取り組んでいる。2016年の社会保障審議会介護保険部会で「あるべきでない地域差の是正に向けて、市町村へのインセンティブを付与すべきではないか」との提言を受けて、翌年6月に改正介護保険法が成立、2018年度から全市町村において保険者機能を発揮し、自立支援・重度化防止に取り組む仕組みが制度化された。
市町村には、この仕組みによって介護保険制度の持続可能性を維持していくことが求められ、その取り組みを支援するためのいわゆる「インセンティブ交付金」が設けられている。
今後は自治体の出来不出来でランキングするなどの考えも進んでいくと聞く。冒頭の厚労省担当者のコメントは、こうした取り組みを自賛したものと言えるだろう。しかし、今後はより具体的なアクションが求められるのではないか。

保険料高騰の最大要因が高齢化の進展によるものであることは衆目の一致するところだろうが、介護保険制度創設から20年、交付金で餌付けする効果も認めるものの、そろそろ各地域でどのように「地域包括ケア」がめざされているかを手入れしていくべきではないか。
2010年代初頭、当時の老健局長が「1500保険者があるならば、1500通りの地域包括ケアがあって良い」と述べたことが話題になったが、一方で現在も複数の審議会等で座長など要職を務める有識者は、「地方で地域包括ケアが成り立つか」という筆者の問いに「地方においては市内中心部に移住を進めるなど大胆な取り組みがなければ地域包括ケアは機能しない」と答えた。
それが理想的なあり方かどうかは別として、「そこまでやらないと無理だ」という危機感が込められていたのは間違いない。

各保険者で、これからの介護保険制度の運用をどう実現可能にしていくか、どう考え、具体的な施策をどう出しているのだろう。国が求める自立支援や重度化防止は極めて重要だが、社会資源の適正整備や住宅施策も併行すべきところ、そのイメージの共有はどうしているのか。
お上のお達しをスケールダウンして模倣する従前の行政では、2040年の介護保険制度はもたないのではないかと思えてならない。一部の成功事例で満足せず、厚労省が能動的に指導する仕組みがさらに求められる。

財務省では、財政制度等審議会財政制度分科会で示したように、この介護保険料の膨張に対して、「当初見込みを上回るペースで上昇」「制度創設時の推計から乖離した要因として、居宅サービス費用の大きな増加や当初見込みを上回る要介護認定者数の増加が考えられる」と指摘、利用者負担の原則2割化や生産性向上などの改革をもって構造を変えていかなければならないとしている。
厚労省との危機感の違いは大きい。しかし、財務省の宿命として、財源論の枠組みを出ることはなく、その先には十把一絡げの抑制しかあり得ない。本当に保険者ごとの地域包括ケアづくりをめざしつつ、制度の持続可能性を保とうとするならば、自治体や事業者を巻き込んだ厚労省主導の総点検が必要だ。
第9期に向けた介護保険部会では、厚労省のリーダーシップのもと、高い視点での議論が展開されることを期待してやまない。(『地域介護経営 介護ビジョン』2021年7月号)

あきのたかお(ジャーナリスト)
あきの・たかお●介護業界に長年従事。フリーランスのジャーナリストとして独立後は、ニュースの表面から見えてこない業界動向を、事情通ならではの視点でわかりやすく解説。