制度と経営に強くなる!
令和3年度介護報酬改定で
義務化されたハラスメント対策

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

いたるところで発生しているハラスメント

そもそもハラスメントとは何でしょうか?直訳すると「嫌がらせ・いじめ、となります。種類はさまざまですが、2021年度介護報酬改定では、「事業者にセクシュアルハラスメント、パワーハラスメントの対策を求めることとする」とされています。
セクシュアルハラスメントとは、本人が意図する・しないにかかわらず相手が不快に思い、自身の尊厳を傷つけられたと感じるような性的言動や行動を言います。
パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して職務上の地位や人間関係優位性を背景に、職務上適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場の環境を悪化させる行為を言います。

今回の改定のポイント

今回の改定では、事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発として、「職場におけるハラスメントの内容および行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に周知・啓発すること」とあります。また、相談(苦情を含む)に応じ適切に対応するために必要な体制の整備として、「相談に対する担当者をあらかじめ定めること等により、相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知・啓発すること」と定められています。
要はセクシュアルハラスメント、パワーハラスメントに関する相談の場を設け、事業所全体に周知することでハラスメント防止対策を徹底してください、ということです。

とはいえ、なかなかすべての対応を事業所で行うのは難しいと思います。必要な体制とはどういうもので、誰がつくるべきなのか、被害者の声はどう聞くのか。はたまた、行為者の発見はどうするのか、ハラスメントはなぜ行われ、発覚が遅れがちなのはなぜか、など、さまざまな疑問も出てくることでしょう。

固定観念・無意識の偏見を知る

ハラスメントが起きる理由としては、職場のコミュニケーションが不足している、ハラスメントをしている本人に自覚がない。ということが主に挙げられます。
職場のコミュニケーション不足には、気づいていない自身の固定観念またはアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が邪魔をしていることが多くあります。アンコンシャスパイアスとは、自分自身が気づかずにもつ、偏った見方や考え方のことです。自身がこの固定観念やアンコンシャスバイアスに気づかないと、ハラスメントをしている本人に自覚がないということにつながります。

ですから、ハラスメントが表面化したときには、行為者に自覚してもらうことから始まります。まずは自分の固定観念をベースに、相手に対して、してはいけないことに気づかせることが大切です。そして、ハラスメントを感じている人へは、小さなことでも言葉にできる環境を整えること、言葉で表現しにくい人であれば、寄り添うように声かけをすることも大切です。傾聴を心がけ、相手が話しやすくなるように取り組んでみましょう。難しい取り組みではありますが、どんな人でも聞いてもらいたいという欲求はもっているものです。聞いてくれる人には自然と心を開いてきます。繰り返しになりますが、ハラスメントが表面化しにくいのは、声にしにくいという状況が大きな要因です。ですから、声に出しやすくする工夫が必要なのです。

コミュニケーションを大切に

固定観念・無意識の偏見を知ることで、事業所で目標を掲げたり、その目標に皆で取り組んだりするときにコミュニケーションが取りやすくなります。成果を上げる、何かを成し遂げるときなど、チームワークを強めるためには、必ずコミュニケーションが重要になります。人は、自分のことを認めてくれている環境や、話しやすい仲間には自然と心を開きやすくなり、心の声も伝えやすくなります。それによってチームワークが高まり、強い団結力が、成果を上げることにつながりやすくするのです。

介護施設では、リーダーの雰囲気で施設の雰囲気が変わります。誰かがこの無意識の偏見の除外に取り組むことが、ハラスメントの表面化につながります。固定観念、無意識の偏見をなくす。偏見のないコミュニケーションを図る。心開き話しやすい環境づくりをする。傾聴を心がけ、相手の声を聞く。このように心がけることが、ハラスメント対策につながります。無意識の偏見を知ることで、ハラスメントのない介護職場になります。ぜひ、できるところからスタートしてみてください。(『地域介護経営 介護ビジョン』2021年6月号)

小林香織
こばやし・かおり●一般社団法人コグニティブ・サポート代表理事、コグニティブ・サポート・グループ代表、21世紀介護事業創造塾顧問、C-SR医療介護経営研究会事務局長。心理学を用いたストレス対策、メンタルヘルスに関する講演を主に介護施設、事業所を対象に行っている。自社主催セミナーも月1回のペースで開催する。コロナ渦対策で職員のメンタルケアが急務な中で、介護施設の個別研修、指導を行う。介護ビジョン誌に「未来カイゴ談義」を連載中。著書「コロナ時代の介護事業戦略」翔泳社刊
一般社団法人コグニティブ・サポート
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