制度と経営に強くなる!
業務継続計画(BCP)策定で勘案すべきストレスケアとは[第1回]

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

介護職は被災者であり、支援者である

日本は自然災害の多い国で、いつ災害が起こるかわかりません。地震、台風、豪雨、そして新型コロナのような感染症もあります。ここ1年は感染というリスクで、今までよりさらに大きなストレスを抱えています。さらにコロナ禍が長引いたことにより、今までとは違う生活環境での喪失感と恐怖、終わりの見えない不安に心も体も翻弄されています。

日頃からストレスマネジメントは欠かせませんが、災害、感染時のケアにはスピードが重要になります。本来であれば、被災時はまず自分を守る『自助』を優先しますが、介護福祉では実際には難しい現状があります。介護職として感染後の重度化リスクの高い利用者を守る。そして自らの家族を守る。この狭間で葛藤しながら介護現場をこなしていかなければなりません。被災時には、明確な回答がないままに難しい判断をする場面も多くあります。

介護現場を守っても、介護職の家族は誰が守るの――――。介護職は支援者であり、同時に被災者である事実を認識するべきです。特にリーダーは、利用者を支援し、スタッフやその家族にも目を向け、さらには自分と家族も守る。介護現場を守るために、現場優先とした場合には、『自助』ができずに心が疲弊していくことが多々あります。

このような状況が続けば、心は惨事の二次被害を受けます。今、介護職のメンタル面では、平時よりも心が折れそうに感じている職員も少なくないはずです。特に大きな被災時には日常の生活リズムが保てないことなどから、ストレスはピークを超えます。心が疲弊していくと、災害時には特にパワハラや虐待が起こりやすくなります。BCPの作成も、メンタルケアの重要性を捉えて進めなくては意味のないものになります。

被災時のメンタルケアのポイント

自然災害に被災したときは、施設の入所者や利用者の安全・安心・安眠をできるだけ早く確保しましょう。安全とは、比較的安全な場所に被災者を誘導して保護することです。安心とは、孤独感を和らげて、援助の輪で『支援者に守られている』という安心感を与えることです。大切なのは安眠できる環境を早期に確保することです。それを念頭に置いてBCPの内容を検討していきます。

また、コロナ対策BCPでは、今回のコロナ禍で起こったことを振り返って、実際に取り組んだこと、学んだこと、さらに自分としては何が足りなかったのかを書き出してみます。これにはスタッフ一人ひとりの意見を聞き取ることが大切です。時間の経過とともに変化した状況も書き出すと、時間の経過と取り組み方に関係性があることが見えてきます。そして、コロナ対策の取り組みの現状を書き出します。いつ頃からコロナへの感染対策が、現場での取り組みとして安定してきたかを振り返ります。
今回のコロナ禍では、コロナ対策として介護現場ではたくさんの取り組みをしたと思います。そして、今重要なのは、介護職のメンタルケア対策です。多くの介護職の心は、長期間にわたる戦いで疲弊し、疲れ切っています。介護現場では、常にメンタルケアが重要であることを理解してください(図表)。
看取りを行った職員のメンタルケアなども同様です。人の心は脆くて弱いものです。一般的にはコロナの感染対策はもう当たり前のことになり、日常の中で感染リスクを避けることができつつあります。しかし、未だに施設や病院でのクラスターの発生は留まることを知りません。その中で自分は何ができるのかを、多くの介護職が悩んでいます。

自らの施設、事業所でクラスターが出たとき、介護職のメンタルケアを含めてどう対処していくのか。その対策を明確にすることに取り組んでみてください。(『地域介護経営 介護ビジョン』2021年4月号)

小林香織
こばやし・かおり●一般社団法人コグニティブ・サポート代表理事、コグニティブ・サポート・グループ代表、21世紀介護事業創造塾顧問、C-SR医療介護経営研究会事務局長。心理学を用いたストレス対策、メンタルヘルスに関する講演を主に介護施設、事業所を対象に行っている。自社主催セミナーも月1回のペースで開催する。コロナ渦対策で職員のメンタルケアが急務な中で、介護施設の個別研修、指導を行う。介護ビジョン誌に「未来カイゴ談義」を連載中。著書「コロナ時代の介護事業戦略」翔泳社刊
一般社団法人コグニティブ・サポート
●東京都台東区台東1-14-10-801 TEL:03-6284-4085
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