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介護サービスの生産性向上を考える

介護事業所のリーダーが、今、知っておくべき知識を、業界に精通したC-MASのプロフェッショナルが伝授

老人福祉・介護事業の倒産状況

東京商工リサーチが昨年10月8日に発表した「2020年1-9月『老人福祉・介護事業』の倒産状況」によると、前年同期比10.5%増の94件の介護事業者が倒産しました。この結果は2000年に介護保険法が施行されてから最多のペースです。業種別では訪問介護事業が46件、通所・短期入所介護事業が30件となっており、負債総額1億円未満が76件と小規模零細事業者が中心となっています。また、2020年1-8月の休廃業・解散件数も313件と、前年同期比で19.0%増となっています。これらの原因は、「売上不振」、「事業上の失敗」「運転資金の欠乏」となっており、放漫経営を起因とする倒産等が急増しました。

出典:『2020年1-9月「老人福祉・介護事業」の倒産状況』(東京商工リサーチ)
公開日付2020.10.8

介護報酬改定の議論

現在、新型コロナ禍への各種支援策による補助金・助成金・金融支援により何とか介護事業を継続している事業所が多いですが、この支援は継続するものではありません。支援が途切れた途端に倒産・休廃業が加速する恐れも考えられます。2021年度介護報酬改定は+0.70%(COVID-19対応特例含む)と前回の+0.54%を上回りました。しかし、11月2日の財政健全化に関する財務省の審議会では、「プラス改定する事情を見い出せない」として介護報酬引き上げを否定する見方も出ており、劇的に経営を改善する程の介護報酬アップは今後も見込めないと考えられます。

生産性改善という視点

前述のことからも、事業継続のためには自身の経営改善が必要不可欠であることがわかっていただけたと思います。経営の基本は資金・不動産・労働力などの財産を効率的にフル活用して財とサービスを生み出し利益を得ることです。無計画で成り行き任せの経営では、決して利益を生み出すことはできません。収益の最大化、費用の最小化のために検討すべき課題は多くありますが、ここでは生産性、特に労働生産性の視点を検討します。生産性とは生産を行うために必要な生産要素(労働力・材料・機械など)を投入することによって得られる産出物(製品・サービスなど)との割合のことです。この割合を高めることを生産性の向上といいます。

介護事業は対人サービス業です。この事業には以下の3つの特徴があります。

1.「同時性」サービスの提供と消費が同時に行われる
2.「無形性」サービスは在庫をもつことができない
3.「異質性」同じサービスを提供しても人によって喜ばれたり、不満に思われたり、結果の不確実性がある

このような特徴がある介護事業では、投下した労働力の効率が著しく低いと言われています。たとえば、デイサービスで職員を配置していたが短期的な利用者の減少に対して労働投入量(職員)を調整することが難しいなど、労働生産性を低下させる場面が多いと考えられます。また、現在の介護サービスが品質を重視した過剰サービスとなっており、その価値に見合った価格設定がされていないことも生産性の低さにつながっているとの見方もあります。

ロボット・ICT活用による生産性向上の取り組み

車いす、移動用リフト、床ずれ防止用具など今までも福祉用具は使われていますが、これらは生産性を意識したものではないものでした。厚生労働省2020年2月19日提出資料「介護サービスの生産性向上に向けた取り組み」には業務省力化を目的にICTや介護ロボットの活用の方向性が示されています。さらに、今後大規模実証等から得られたエビデンスデータを蓄積し、介護報酬・人員基準を見直していくと明示されています。待ったなしで対応し、生産性向上のための行動を取っていくことが生き残るために必須であると考えます。(『地域介護経営 介護ビジョン』2021年2月号)

桂田達夫
かつらだ・たつお●2000年の介護保険制度施行時より社会福祉法人・公益法人・NPO法人医療法人・宗教法人などの非営利法人を専門にサポートする部署を設置し、介護経営支援、医業経営支援に注力している。開業支援、税務相談、各種税務申告、社会保険関係支援、経営計画策定支援、助成金申請支援など、弁護士・司法書士・不動産鑑定士と連携し、幅広い支援業務を提供している
税理士法人淡海総合会計
淡海みのり社会保険労務士事務所
株式会社淡海ビジネストータルマネジメント
一般社団法人淡海福祉経営サポート
●[本社]滋賀県高島市今津町今津1596-3
 TEL:0740-22-1767
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