特例だらけの介護現場 コロナ対策に踊らされるな

臨時措置に潜む記録要件などを見落とすな

 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大に伴い、人員配置規準の緩和など、各種特例措置がさまざま出ている。いまだ厳しい経営状況のなかで、活用しない手はないだろう。
 その一方で、臨時的な扱いがあまりにも多く、それぞれの取扱いをきちんと把握・対処できているのか、不安視する声もある。
「行政も対応に追いついていない点があります。各自治体ごとにさまざまな支援事業が打ち出されていますが、開始時期などが未定のままで発表されているものなどもあり、正確な情報入手が難しい状況にあります」と、株式会社ケアビジネスパートナーズの原田匡代表取締役は注意を促す。

 まず最初に注意したいのは、各種通知・特例(※1)の発出によって、事務作業が膨大になっている点。特例措置などは随時連絡が来るため、整理をきちんとしておかないと、提出タイミングが遅れたり、必要な通知の見落としが起きる可能性もある。今回の新型コロナに関する通知の中には、一度通知した内容が、後に訂正されたケースもあるという。情報の見落としがないように注意しておきたい。
 また、特例措置があったとしても、ケア記録などの記録はきちんととっておかなければならない。たとえば、ケアプランで予定されていたサービス利用がコロナの影響でなくなった場合でも、居宅介護支援費の請求は可能であると厚生労働省は回答しているが、必要な条件として

●モニタリングなどのケアマネジメント業務を行っていること
●給付管理表の作成など業務にあたって必要な書類の整備を行っていること

を挙げている。さらに、コロナの影響があった場合にかぎることを強調しており、そのことを適切に説明できるように「個々のケアプランなどに記録で残しつつ、それらの書類を管理しておくこと」としている。つまり、サービス提供がなくても算定は可能であるが、記録を残しておくことが求められるわけだ。「特例だから何でもあり」というわけではなく、特例に対応するためには、何が求められるのかを把握することが必要だ。
 むろん、法令遵守などは非常事態であろうとも求められること。特例措置を拡大解釈してしまい、人員配置基準が満たされなかったなどはあってはならない。守るべきものは何かを、事業所内でしっかりと共有しておきたい。
 さらに時間に制限があるなかで、多量の書類業務に追われるため、職員の注意力も散漫になりやすい。いつも書いている書類であっても、記入漏れなどのケアレスミスが発生しやすい状況になっているので、職場全体で注意を払おう。

大きな動きに隠れた利用者の変化を見抜く必要

 また、感染予防対策に追われるなかで、利用者の変化を見落としていないだろうか。休業をしている事業者はもちろんのこと、自主的に利用を控えていた利用者がいた場合は、特にその変化に注意が必要だ。
 デイサービスの場合、1カ月通わないだけで、利用者のADLが低下していたり、生活状態が変化している可能性は高くなる。ケアプランの見直しは必要ないかなど、精査しておきたい。
 身体的な変化はなくとも、精神的なストレスなどにより、日常生活に何かしらの困難を生じさせている可能性も考えられる。「非常事態だから」「感染症対策が第一優先」などと業務に追われ、利用者の小さな変化を見落とすことがないようにしたい。

 さらに、今はオンライン面会など新しい試みが介護現場でも始まっている。いわゆる新しい生活様式が求められるなかで、直接対面できない際の代替手段として活用するのは良いが、オンライン面会だけが選択肢ではないということも注意したい。直接対面しない方法は、オンライン以外にも電話や手紙などさまざまある。新しい生活様式だからとすべてを変えるのではなく、自事業所や利用者に合わせた柔軟な対応が望まれる。
 さらに、「感染症対策は介護現場でも大きな課題として取り上げられていますが、その場だけの対応にならないようにすることが重要。自分たちはしっかりやっていると思っていても、感染症対策の専門家などから見ると、不十分である点などもあります」と、原田さんは注意を促す。

 令和2年度厚生労働省第二次補正予算案(※2)のうち新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)のなかには、感染症対策の徹底支援として、感染症対策に要する物品購入、外部専門家等による研修実施などにかかる費用の補助なども行われる予定だ。こうした補助もうまく活用し、感染予防につなげていきたい。(介護ビジョン 2020年7月号)

※1:「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取り扱いについて」のまとめ
※2:令和2年度厚生労働省第二次補正予算案について(介護分は23ページ目)