戸田中央総合病院が市民公開講座を開催
戸田中央メディカルケアグループ(TMG)の中核病院である戸田中央総合病院(埼玉県戸田市)は12月23日午後、戸田中央看護専門学校 講堂(戸田市)で、第49回市民公開講座を開催しました。消化器外科の榎本正統部長が「大腸がん ロボット手術と抗がん剤治療の最前線」をテーマに講演し約100名が参加しました。
榎本部長は1973年生まれ。1999年に東京医科大学を卒業し、同年外科学第三講座に入局。2021年11月東京医科大学消化器・小児外科学分野准教授に就任。2022年10月に戸田中央総合病院消化器外科部長に就任(東京医科大学から出向)しています。
講座によりますと、大腸がんの治療は、大きく分けて「手術」「放射線」「抗がん剤」が三本柱。この三本柱を組み合わせながら、「安全」「確実(に治療する)」を最優先事項に、「低侵襲」「機能保存」も優先事項としながら治療方針を決めて治療を進めていくといいます。
例えば、手術には「開腹手術」「腹腔鏡手術」「ロボット支援手術」があります。
傷口の大きさや体への負担、費用など、それぞれにメリット・デメリットがあるものの、どの手術も余裕をもってがんを取り除くことは同じで、患者の症状によっては必ずしもロボット支援手術が最適ではないとも述べていました。
なお戸田中央総合病院は、2012年11月に埼玉県内でいち早く手術支援ロボット「ダビンチ(da Vinci)サージカルシステム(以下ダビンチ)」を導入。
2022年10月にダビンチによるロボット支援下直腸がん手術を開始し、2023年3月には結腸がんに対するロボット支援手術を行い、すべての大腸がんに対してのロボット支援手術を可能としています。
一方、化学療法は、切除不能大腸がんなどに対し行われ(或いは術後、まだ切除しきれていない懸念があるとき)、完全治癒は困難で余命を延ばすことを目的にしています。
ただ、「余命が伸びた」「副作用がない」と感じる患者は皆無です。このため、副作用の状況を見ながら投与の間隔をのばしたり、患者の価値観を尊重して投与を中止したりすることもあるそうです。
「治療のために生きているというのは本末転倒。治療は(この先に楽しみにしていることがあるなど)その人らしく生きるためにあります」と榎本部長は話していました。
講座では化学療法の治療例としていくつかの事例が紹介されていました。
(事例1)術後に9か月後に転移が見つかったものの、本人が抗がん剤の治療を望まかった。しかしその後2年間、ほぼ無症状で過ごした。
(事例2)抗がん剤の一つに効果が認められたが、副作用が激しかった。そこで投与量を減らして約4年間抗がん剤治療を行った。
また、質疑応答の時間もあり、「検便で見つかる大腸がんはどのくらいあるのか」といった質問が出ていました。
次回開催は来年3月8日の予定
市民公開講座は、「地域の方の健康増進や予防・治療への理解を深めていただくこと、病院や治療の最新動向に関する情報の提供」(戸田中央総合病院)などを目的に2007年から年3〜4回のペースで開催しています。
病院ホームページや、病院や近隣施設へポスターやチラシを設置して参加者を募り、毎回平均で150人ほどが参加しています。
第46~48回の講座の模様は YouTubeで視聴することができます。
次回は2024年3月8日、緩和医療科の小林千佳部長を講師に迎えて開催予定です。
(文/ヘルスケア・マネジメント.com)