マネジメント カウンセリング・ルーム
Vol.24
新人育成は未来への投資
時間や資源を有効活用
<今月のご相談>新年度の始まりは、新入職員のオリエンテーションや研修、さらには配属されてからのOJTもあり、中堅職員への負担が大きくなります。今年も教育担当をお願いしたところ、「これ以上忙しくなるのなら辞めます」と言われ、困っています。
教育のなかで業務を見直す
業務整理・改善の必要も
医療機関では慢性的な人手不足が続いています。看護師も事務職員も、採用は決して簡単ではありません。ようやく入職してくれた人が辞めてしまうことを思うと、「何とか働き続けてほしい」「無理をさせたくない」という気持ちになります。そのため、「もう無理です」「そこまで求められるなら辞めます」と言われると、つい配慮を優先してしまう。そうした経験は、多くの管理職が体験しているのではないでしょうか。
しかし、その結果として「頑張る人」に仕事が集中してしまうことがあります。文句を言わずに仕事を引き受ける人、忙しいときには少し踏ん張ってくれる人、職場の雰囲気を考えて行動する人――。そうした人たちの善意によって現場が成り立っているのも現実でしょう。
ところが、「辞める」と言えば主張が通る、配慮されるという状況が続くと、「頑張る人が損をする」というネガティブな雰囲気が根づいてしまいます。
もちろん、頑張った人には評価ややり甲斐、達成感もあります。必ずしも「頑張りが損」と感じるわけではありません。それでも、職場としての公平感が揺らぐことは、組織にとって望ましい状態とは言えません。
新人職員の教育には多くの時間がかかります。特にOJTでは、先輩が自分の仕事をこなしながら新人に説明・確認し、フォローもします。忙しい現場では決して簡単なことではありません。もし、「自分の仕事で精一杯」という状態であれば、そもそも、業務整理や業務改善が必要なのかもしれません。
新入職員に業務を教える過程で、「この作業は本当に必要なのだろうか」「もっと効率的な方法はないだろうか」と疑問を持つことがあります。教育の時間は、業務を見直すきっかけにもなります。
新人を育てるのは今は負担でも
未来の仲間・職場を育てる時間
教育を「負担」とだけとらえてしまうと、人が育たないだけでなく、業務の見直しが進まない職場になってしまいます。
経済学には「ワイズスペンディング(賢い支出)」という考え方があります。目先のコストや負担だけで判断するのではなく、将来の成果を見据えて時間や資源を使うという発想です。新入職員に業務を教える時間、職場のルールや考え方を共有する時間は、短期的にみれば確かに負担かもしれません。
しかし、その時間は同時に業務を見直す機会であり、数年後に現場を支えてくれる仲間を育てる時間でもあります。未来の自分たちの時間を確保するために、今の時間を「投資」するという考え方です。
忙しい現場では、「今」を乗り切ることで精一杯になりがち。それでも、誰かが時間をかけて教え、役割を引き受け、少しずつ経験を積んでいく。その積み重ねのなかで次の世代が育っていきます。教育を担う中堅職員には、「なぜ今この時間を使うのか」という意味を丁寧に伝えることも大切でしょう。また、OJT期間中は教育担当者の業務の一部を他の職員が担うなど、職場全体で負担を調整する工夫も必要です。その過程で、他の人に任せられる仕事を切り出すことができれば、業務整理にもつながります。
「辞めます」という言葉をそのまま受け取るだけでなく、なぜそこまで追いつめられてしまったのか、その背景に目を向けることも必要です。そのうえで、課題の解決策と将来の展望を示し、理解を得ていくことが求められます。
新人を育てる時間は、確かに今の現場にとっては負担かもしれませんが、その時間は、未来の職場をつくる時間でもあるのです。(『最新医療経営PHASE3』2026年5月号)

